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だいすけおにいさんも登場・子どもが主役の映画祭

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
映画祭初日に登場した中山さん、だいすけおにいさん、戸田さん なかのかおり撮影

子どもが主役の「キネコ国際映画祭2017」が2日、東京都世田谷区の二子玉川駅周辺で始まった。1~10歳向けの41作品が上映され、乳幼児が飽きずに見られる工夫がある。声優が生で吹き替えするライブ・シネマや、子どもの審査員など企画も多数。今年は25周年。子どもが映画を通して世界中の文化に触れ、夢を育てる場を提供してきた。6日まで。

「だいすけおにいさん!」と子どもたちから声援も飛んだ なかのかおり撮影
「だいすけおにいさん!」と子どもたちから声援も飛んだ なかのかおり撮影

だいすけおにいさんも生吹き替え

2日はオープニングセレモニーがあり、10年前からジェネラル・ディレクターを務める女優の戸田恵子さん、映画祭を支える中山秀征さん、横山だいすけさん、内田恭子さんが登場した。

「だいすけおにいさーん!」と子どもたちから声援が飛び、横山さんは笑顔で応えていた。

映画祭では、字幕の読めない子どもも楽しめるように、上映しながらその場で音声の吹き替えをする「ライブ・シネマ」も18作品ある。NHKの子ども番組で「うたのおにいさん」を長年務めた横山さんも、初日の会場でライブ吹き替えを披露した。

ライブでの吹き替えに挑戦した なかのかおり撮影
ライブでの吹き替えに挑戦した なかのかおり撮影

始まって25年

25年前にこの映画祭を始め、ディレクターを務める田平美津夫さんに成り立ちを聞いた。

田平さんは学生時代、8ミリ映画を作り、映画監督を目指していた。25歳のとき会社を興し、内装工事や薪ストーブ販売を扱う仕事をしている。映画業界や映画祭のベテランと一緒に1992年、キンダー(ドイツ語で子どもという意味)フィルムのフェスティバルを始めた。

それからまもなく、ドイツ・ベルリンを訪れて子どもの映画祭を見たとき、「こういう映画祭をやりたい」と理想像が固まった。自分の事業で費用や人手を工面しながら、映画祭を開いてきた。

さらに4~5年前から、世界中の子ども映画祭を訪ねるようになった。キンダーはドイツ語なので、日本独自のネーミングにしようと「キネコ」という名前にした。招き猫とキネマを組み合わせた造語だ。絵本作家によるキャラクター「キネコ」も生まれた。

映画祭であいさつする田平さん なかのかおり撮影
映画祭であいさつする田平さん なかのかおり撮影

1歳でも飽きない工夫

映画祭は1~10歳が対象。乳幼児でも楽しめる工夫が埋め込まれている。子どもが小さいうちは、出かけられる場も少ない。そうした親子が気兼ねなく映画デビューできて、映画を見る前や見た後にも楽しめる催しがある。

例えば1歳からのプログラムは、短編を数本、集めてある。上映の合間に、司会者が「よく見られたね」とほめて、観客とキャッチボールをしながら進めるという。

映画祭は初め、東京・青山のこどもの城(現在は閉館)で開かれた。小さい子が泣いたり、「内容が難しすぎる」とアンケートに書かれたり。そこから試行錯誤して、集中して見てもらえるようなノウハウができたそうだ。

新しい作品だけでなく、「きかんしゃトーマス」「ちびまる子ちゃん」といった人気のアニメもある。

映画に励まされた少年時代

田平さんには、たくさん映画を見て救われた経験がある。「小学3年生のとき、田舎から都会に引っ越して、勉強についていけなくて。学校で居場所がなかった。楽しみは、テレビで放送しているロードショーでした。大人の映画を見て、今はつらいけど将来はこうしたいって、夢を膨らませていました。だから映画を若いうちに見てほしいんです」

「今年は、社会的なテーマの作品がおすすめです。5歳以上が対象で、一見難しいかなと思っても、最後まで見てもらえる自信のある作品ばかりです」と田平さん。

若い作り手を応援する企画もある。「どうやって世界にアプローチするの?」「字幕を付けるにはどうすればいい?」という駆け出しのアーティストのために、日本作品のグランプリを設けた。

ドイツやイランなどの子ども映画祭ディレクターを審査員として招き、グランプリになったらその国で上映してもらえるそうだ。

国際理解につながる

みんなで会場を盛り上げた なかのかおり撮影
みんなで会場を盛り上げた なかのかおり撮影

子どもたちが審査員になるプログラムもある。小4~6年の子が公募で集まり、海外の長編・短編15作品を見て審査し、グランプリを決定。10月の東京国際映画祭・オープニングで、子ども審査員はレッドカーペットを歩いた。キネコ映画祭オープニングパーティ―には、1人あたり100枚ほどの名刺を持って参加。「名刺交換」を体験した。

このように映画を通して、子どもたちが世界中の文化を知り、人と出会う場になっているのも特徴だ。

田平さんは中国や韓国のディレクターとも交流がある。「近所なんだし、大人のしがらみなく付き合いたい」「こうやって子ども映画祭が続いたら、争いがなくなるね」という話にもなった。

野外上映・監督のワークも

都内の何か所かで、場所を移して開催してきた映画祭。今年は昨年に続き、二子玉川駅の周辺で開かれている。会場は映画館やホール、公園、広場に設けた大きなテントなどで、街をあげてのイベントだ。東急グループや多数の企業、自治体の協力が大きいという。

「足を運んで」と呼びかける横山さん なかのかおり撮影
「足を運んで」と呼びかける横山さん なかのかおり撮影

映画祭初日の記者会見では、アンパンマンの声優でおなじみの戸田さんと「だいすけおにいさん」のことを、中山さんや内田さんの子どもたちも大好きだというエピソードが。「子どもが大泣きしても気にしなくて大丈夫」(中山さん)、「来てみてわかることもたくさんある。ぜひ足を運んで」(横山さん)と呼びかけた。

今年は25周年を記念して野外上映をする。影響を受けたドイツの映画にフォーカスしたり、10代が制作した映画のコンペティションをしたり。シリアの監督による世界を知るワークショップも予定。当日券は大人1200円、子ども700円。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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