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日本代表・藤井雄一郎強化委員長、「プレッシャー」をどう見る?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
選手はワールドカップのキャップを被り記念撮影(著者撮影)。

 ラグビーワールドカップ日本大会の開幕まで、あと7日に迫った。9月13日には都内で日本代表のウェルカムセレモニーがあり、直後に藤井雄一郎強化委員長が共同取材で展望を語った。

 元宗像サニックス部長兼監督で、かねてより元サニックスのジョセフと親交の深かった藤井氏は、2018年から日本代表および兄弟チームのサンウルブズへコミット。同代表の強化副委員長となり、今年8月22日付で強化委員長に昇格した。

 チームは9月6日に埼玉・熊谷ラグビー場で、過去優勝2回の南アフリカ代表に7-41で敗れた。7日に解散し、12日に再集合。9月20日にはロシア代表と初戦をおこなう。

 まず藤井強化委員長が聞かれたのは、けが人の状況。南アフリカ代表戦ではフッカーの堀江翔太、フランカーの姫野和樹が不出場で、ナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィ、ウイングの福岡堅樹がそれぞれ肩と足を痛めて途中交代している。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――まず、けが人の状態は。

「マフィは今日もコンタクト練習をしたし、本人は初戦に出たそうだった。あとはコーチ陣がどう判断するか。福岡もジョギングは始めていた。ワールドカップなので、グレード1の怪我は怪我じゃないというくらい。特に問題はないと思います。姫野は完全に戻っています。翔太も問題ないです」

――大会直前にオフを作った。

「日本人からしたら異例な感じだと思いますが、海外では(普通)。移動もしてきているし、(8月の)網走合宿の疲れも残っていた。この先会えない家族に会うなど、外からエネルギーをもらってきて、ワールドカップモードに切り替える。いい休みだったと思います」

――スタッフとしてこれから気を付けることは。

「怪我、風邪だったりと、色々なことに対応できるようにはしています」

――プレッシャーへは。

「このプレッシャーの処理のために色んな訓練をしてきたので、タフに戦ってくれると思います。メンタルコーチ(デイビッド・ガルブレイス氏)も呼んだり、ジェイミーも(就任後)この3年間、そこを意識してやってきたので。どんな状況でも力を出せる選手を選びましたし、選手もそれに応えられるようになってきた。問題ないと思います」

――自国のプレッシャー。実際には発生しているのですか。

「前回は(外野は)1勝しましょうという話でしたが、3勝。今回は『ベスト8へ』と、一度も感じたことのないプレッシャーを感じながらやらなきゃいけない。どうプレッシャーに打ち勝つかを、重点的にやってきたので。そこは、選手は自信を持ってやっていくと思います」

――海外と違い、選手はなかなか外に出られないというストレスがありそう。

「それは、海外(の国代表の)選手の方が感じることだと思います」

――休息を取っている時にサインをねだられることもありそう。

「それがいやな選手もいるだろうけど、自分らでコントロールできること。自国開催の方が有利であることは間違いないです」

――ガルブレイズ氏の取り組みは。

「準備が最も大事。準備をすることで自分たちがその場、その場でいいプレーができるかとしつこく言われてきた。南アフリカ代表戦で敵陣ゴール前まで行って(トライを)とれなかったことがありましたが、それは『とる気がないから』とも言われた。ゴール前ですべてを賭けて戦えと、集合した時点でジェイミーからもガルブレイズからも言われたので、今度ゴール前に行ったら必ずとってくれると思います」

――精神論にも聞こえますが。

「自分たちで(相手を)強いと思って戦っているから。ただ、『そこ』が勝負なので」

――再集合時、ジョセフヘッドコーチはどんな訓示を。

「南アフリカ代表戦のことです。いつもできていることができていなかったので。そこを修正すれば、特に問題ない」

――南アフリカ代表戦では、本番に向けて隠したプレーもあったのでは。

「3点(ペナルティーゴール)は狙っていないですし、モールを使ったりといろんなものをチャレンジした部分もある。一概に点数だけは関係ないです」

――最後の仕上げに必要な項目は。

「ハイボールの処理、チェイスの仕方と、南アフリカ代表戦でできていなかったことを治しているところ。いままでやって来たことの精度を上げます。(ボールを)競りに行く奴(の動き)と、相手に(ボールを)捕られた時(の対策)に時間をかけました」

――改めて、現代表選手の多くは2016年からサンウルブズの一員として国際リーグのスーパーラグビーに出ています。

「キャップ数のこと(いまのメンバーのテストマッチ=代表戦出場数が少ないこと)をよく言われることがありますけど、ティア1との試合(強豪とのテストマッチ)を多くやりました。前回のチームの総キャップ数は多いですが、アジアで何試合もやっている。一概にひとりひとりのキャップ数は(本当の意味の経験値に)関係がない。アジアのチームとやるより、スーパーラグビーで1試合やった方がプレッシャーもかかるし、経験も積める」

 藤井氏は、今年1月の時点ではメンタルコーチの招へいには消極的としていたが、現在はデビッド・ガルブレイズメンタルコーチが帯同。チーム作りにも携わっている。藤井氏はこうも言った。

――ジョセフさん自身がプレッシャーを感じているようには映りませんか。

「いや。長い間プレッシャーをかけてきたので、これからは楽しみに。プレッシャーがないと言えばおかしいですが、皆、覚悟を決めてやっているので」

 開幕まで、あと7日。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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