ラニーニャ終息へ 夏以降、エルニーニョ発生も
ラニーニャ現象はピークを過ぎ、この春にも終息する。この夏は平常状態となる見通しだが、さらに水温が上昇すればエルニーニョ現象が発生する可能性も出てきた。豪雨と台風被害が深刻だった2018年夏が再来するのだろうか。
ラニーニャ終息へ
世界的な異常気象、そして長期的な天気予報に欠かせない、エルニーニョ/ラニーニャ現象の状況は気象庁から毎月10日頃に発表される「エルニーニョ監視速報」で知ることができます。
最新のエルニーニョ監視速報(2021年2月10日発表)によると、1月のエルニーニョ監視海域の海面水温は基準値より0.5度低く、ラニーニャ現象は今も続いています。しかし、これまでとは違い、太平洋赤道域東部(南米ペルー沖)の海面水温は2020年10月、11月を底に、上昇に転じました。2020年夏に発生したラニーニャ現象はこの春で終息し、夏には平常の状態になる可能性が80%と高くなっています。
また、米海洋大気庁(NOAA)も観測結果から、ラニーニャ現象はすでにピークを過ぎ、徐々に弱まってきているとの見方を示しています。
ピークは過ぎても影響は続く
これまで気象災害といえば、国内で発生したものが主でしたが、最近は世界の気象災害を見聞きする機会が増えました。
2月7日、インド北部で発生したヒマラヤ山脈の氷河が崩壊したことによる大規模な洪水被害には驚きました。数日前に気温が上昇し、雨が降った可能性があることまでは調べることができましたが、それが直接または間接的な原因となったかどうかは分からず。険しい山岳地域の気象観測は脆弱で、空白地帯となっていることが原因究明の大きな壁になっています。
ラニーニャ現象はピークを過ぎても、なお影響は続くでしょう。世界気象機関(WMO)は4月にかけて、アジアや北アメリカなどで気温が高く、東南アジアやオーストラリアなどは雨も多いと予想し、いつもとは違う天候が現れやすいとして注意を呼びかけています。
ラニーニャの後はどうなるのでしょう?
気象庁のエルニーニョ予測によると、ペルー沖の海面水温はさらに上昇し、この夏は基準値に近い値か、基準値より高い値となる見通しです。
海面水温が基準値より0.5度以上高い場合をエルニーニョ現象と言います。この夏以降、エルニーニョ現象が発生する可能性があるのです。
エルニーニョ、ラニーニャ交互に発生も
こちらは2000年以降のエルニーニョ/ラニーニャ現象の発生期間を表にしたものです。
この20年で、エルニーニョ現象は4回、ラニーニャ現象は(今回を含めて)6回発生しています。平均すると、数年に一度はどちらかの現象が発生していることになり、短い間隔で発生することも珍しくはありません。
2018年はラニーニャ現象が春に終わり、秋からエルニーニョ現象が発生しました。この年の夏は7月に西日本豪雨があり、9月には台風21号による暴風と高潮で関西国際空港が長時間に渡り閉鎖される大きな被害があったことを思い出します。
ただ、この時期の予想は不確実性が大きく、このまま予想通りに海面水温が上昇し、夏以降、エルニーニョ現象が発生する可能性が高いとまでは言えません。今後の動きに注目しています。
【参考資料】
気象庁:エルニーニョ監視速報(No.341)、2021年2月10日
米海洋大気庁(NOAA):EL NINO/SOUTHERN OSCILLATION (ENSO) DIAGNOSTIC DISCUSSION、11 February 2021
世界気象機関(WMO):Himalayan flood highlights high mountain hazards、9 February 2021
世界気象機関(WMO):La Nina has peaked, but impacts continue、9 February 2021