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俳優の吉沢亮さん、隣室に無断で侵入 「トイレに行きたくて」 #専門家のまとめ

小宮信夫立正大学教授(犯罪学)/社会学博士
(写真:REX/アフロ)

先月30日、俳優の吉沢亮さんが酒に酔った状態で、自宅マンションの隣室に無断で侵入する事件が発生した。隣室の住人が吉沢さんの侵入に気付き、警察に通報したため、警察が住居侵入罪の適用も視野に入れ、捜査を進めている。

ココがポイント

泥酔トラブル起こした吉沢亮 なぜ隣室入れた?事務所が説明「鍵が開いていた」
出典:スポニチ Annex 2025/1/6(月)

トイレをしたくて、勝手に入ってしまったと思います
出典:FNNプライムオンライン 2025/1/6(月)

帰宅した際に、酒に酔って自分の部屋ではなく隣室に入ってしまいました
出典:モデルプレス - ライフスタイル・ファッションエンタメニュース 2025/1/6(月)

「犯罪機会論」が日本で普及しないのも、日本人のシミュレーション能力が低いから
出典:小宮信夫 2023/12/1(金)

エキスパートの補足・見解

犯罪学の理論に「中和の技術」という考え方がある。

これは、違法行為を行う際に、本来であれば抑止力となる価値観(道徳心や順法精神)を一時的に無効化する心理メカニズムのことだ。分かりやすく言えば、「自己正当化」のテクニックである。

具体的には

①責任の否定(ある状況に巻き込まれただけで、自分のせいじゃない)

②加害の否定(誰にも被害を与えていない)

③被害の否定(相手にこそ責任があり、お前が悪い)

④非難者の非難(お前だって昔はそうだったから、非難する資格はない)

⑤忠誠心の発露(守るべき秩序が侵されたから、仲間を守るために行動した)だ。

今回の住居侵入も

「酔っていたから(責任の否定)」

「トイレに行っただけ(加害の否定)」

「玄関の鍵が開いていた(被害の否定)」

といった発言があったのなら、まさにこの理論が当てはまる。

そういえば、最近目立つ闇バイトによる強盗事件も、高齢者が狙われているので、「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」という発言(被害の否定、非難者の非難、忠誠心の発露)に、若者が煽られているのかもしれない。

自分の周りに、中和の技術を多用する人がいる場合は、注意が必要だ。

立正大学教授(犯罪学)/社会学博士

日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ――遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材(これまでの記事は1700件以上)、全国各地での講演も多数。公式ホームページとYouTube チャンネルは「小宮信夫の犯罪学の部屋」。

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