北九州の中学生殺傷事件 殺人容疑で再逮捕へ 動機の解明は? #専門家のまとめ
福岡県北九州市のファストフード店で、中学3年生の男女2人が刃物で刺され死傷した事件。面識のない生徒を襲った犯人の動機に注目が集まっている。しかし、本当に動機は解明できるのだろうか。動機に注目すれば、犯罪を防げるのだろうか。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
人格(精神病理)や境遇(社会病理)、つまり犯罪者の異常な人格や、劣悪な境遇(家庭・学校・職場など)に犯罪の原因を求める立場を「犯罪原因論」と言う。
しかし、「犯罪原因論」は海外では人気がない。なぜなら、犯罪の原因を解明することは困難であり、仮に解明できたとしても、それを除去するプログラムを開発することは一層困難だからだ。
海外で採用されているのは「犯罪機会論」だ。犯罪性が高い者でも、犯罪の機会がなければ犯罪を実行しないとする立場である。これに基づき、海外では、施設を犯罪が起こりにくいように設計するなど、犯行に都合の悪い状況を作り出す取り組みが推進されている。
日本でも「犯罪原因論」の呪縛を解くことが望まれる。
日本人の多くは、動機があれば犯罪は起こると考えているが、それは誤りだ。動機があっても、それだけでは犯罪は起こらない。動機を抱えた人が犯罪の機会に出合った時、初めて犯罪が起こる。それはまるで、体にたまった静電気(動機)が金属(機会)に近づくと、火花放電(犯罪)が起こるようなものだ。
だからこそ、海外では、犯罪対策のコストパフォーマンスが高い「犯罪機会論」が支持されているのである。