60歳以上単身世帯は45.0%…年齢階層別にパソコンの世帯普及率の実情をさぐる(2023年公開版)
「インターネットへの手軽な窓口」の観点では、機動力の高いスマートフォンやタブレット型端末に主役の座を奪われつつあるパソコン。内閣府の消費動向調査(※)の結果から世帯主の年齢階層別に、世帯単位での普及率の実情を確認する。
今件項目の注意事項として、タブレット型端末とパソコンの誤認の可能性が挙げられる。2013年までは明確な定義はなく、タブレット型端末は(回答者独自の判断により)いくぶんパソコン扱い(ノートパソコン系)されているものと考えられる。一方2014年以降は回答項目に「タブレット型端末」が新設されており、その誤認は無くなったと見なしてよい。
内閣府の消費動向調査で年齢階層別の調査が行われているのは2004年4月以降各年3月末時点。そこでそれらのデータを用い、「総世帯」(要は全部の世帯)における世帯主年齢階層別・パソコンの普及率を確認したのが次のグラフ。
今調査の別データから取得できる、二人以上世帯のパソコン普及率は直近2023年で78.7%。それと比べると総世帯では7.6%ポイント低い値。逆算すれば容易に分かるのだが、これは単身世帯においてパソコン普及率が低いことが原因(総世帯=単身世帯+二人以上世帯)。
また経年推移を見ると、2009~2010年にイレギュラー的な動きがあるが、総じてどの階層でも時間の経過とともに、普及率が少しずつ、しかし確実に上昇していた。ところが2014年においては中年層(30~59歳)でやや大きめな減少が発生し、これが原因で総世帯全体でも前年比でマイナスの値を示してしまった。インターネットのアクセスのためのツールとして割り切り、より機動力が高く価格が安いスマートフォンやタブレット型端末にシフトした結果、パソコン利用の必然性が下がった可能性が考えられる。
他方、若年層(29歳以下)では2014~2015年に大きな上昇を示したあと、失速。2017年まで急降下の様相を呈した。単年だけなら2010年の時のような統計的誤差の可能性もあったが、2年連続した下げ方は、単なる誤差では無く実情として普及率が落ちていると見てよいだろう。まさに「若者のパソコン離れ」が体現化された形ではある。その後はもみ合いながらも上昇を示す形。
保有数(該当種類世帯全体。保有世帯限定ではない)を見ると、中年層で2014年をピークとして上昇の動きは止まり、減少に転じていた動きが確認できる。
ややぶれはあるものの上昇を継続しているのは高齢層(60歳以上)のみ。中年層は2014年を天井とし、それ以降は減少傾向。中年層の普及率は大きな下落は示していないことから「とりあえず持っている世帯」は微減程度だが、「複数台を維持している世帯」が大きく減少している状況が考えられる。パソコンは1台あれば十分で、それを補完する形でスマートフォンやタブレット型端末を使いこなすスタイルが浸透しつつあるのだろうか。
他方若年層は中年層と同じく2014年を天井としてその後は下落していたが、2017年を底として再び上昇の動きを見せている。直近の2023年では29歳以下と60歳以上はほぼ横ばいだが、30~59歳では増加している。2021年に続き、新型コロナウイルス流行による在宅勤務の浸透で、端末の買い替えや追加購入が必要となる世帯が増えたのだろうか。
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※内閣府の消費動向調査
今後の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識や各種サービスなどへの支出予定、主要耐久消費財などの保有状況を把握することで、景気動向判断の基礎資料を得ることを目的としている調査。調査世帯は、二人以上の世帯、単身世帯毎に三段抽出(市町村・調査単位区・世帯)により選ばれた8400世帯。調査時期は毎月1回で、調査時点は毎月15日。毎月10日前後に調査対象世帯に調査票が届くよう郵送し、毎月20日頃までに届いた調査票を集計する。
毎月調査を実施しているが年1回、3月分において、他の月よりは細部にわたる内容を調査している。その中の項目の一つ「主要耐久消費財の普及・保有状況」を今件精査では用いている。これは「回答者の世帯において対象品目を回答時点(直近分の場合は2022年3月末時点)で持っているか否か」「持っている場合は保有数量はどれほどか」を尋ねた結果。具体的な利用状況は尋ねていない。
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