「ポルトガル史上最大級の山火事」の背景には、熱波・落雷・ユーカリ
うつぶせで死んだように倒れている消防士ー。
下の写真は、昼夜通して消火活動を行った消防士が、たった25分間だけ休憩をもらって眠っている時のものなのですが、この姿から、山火事がいかに深刻であったかを伺い知ることができます。
17日(土)から広がったポルトガル中部の山火事による死者は、これまでのところ64名と伝えられており、国家史上最大級の山火事被害といわれています。
痛ましいことに、死者の半数以上が車内で見つかっています。被害直後の映像には、焼け焦げ、フレームだけが残された複数の車が映されています。
山火事の原因
これほど大規模な山火事の原因は、一体なんだったのでしょうか。
一つは、異例の気象条件にあります。
ポルトガルでは、強烈な熱波により、週末から連日35度を超えるような異例の暑さが続いていました。また、今月は晴れの日が続き、樹木もカラカラの状態だったのです。
そのような状況の中で、18日(土)落雷が発生しました。ただ、雨を伴う雷ではなく、「ドライ・サンダーストーム」と呼ばれる、乾燥(ドライ)した雷雨(サンダーストーム)でした。湿度の高い日本では、なかなか想像しにくいのですが、非常に乾燥した場所では、雨が地面に落ちてくる前に蒸発してしまい、結果的に雷だけ発生することがあります。当局は、これが原因で山火事が発生したと考えています。
ポルトガルの山火事事情
こうした気象条件に加え、ポルトガルの植生もまた、被害拡大の原因といえます。
というのは、ポルトガルでは製紙やパルプ業等を目的に、オーストラリアなどから輸入されたユーカリの木々が多く栽培されています。ユーカリというのは油分が多く、燃えやすいのが特徴です。国もその危険性を承知しており、以前から規制を設けていたようですが、不十分であったと言われています。
実際、近年ヨーロッパの多くの国々では、山火事が減少傾向にある一方で、ポルトガルは増加傾向にあり、EUの中でも最も山火事の多い国の一つとなっています。こうした背景もあって、今回の山火事は防げたのではないか、という声があがっているのです。
2,500人を超える消防士の決死の消火活動によって、20日(火)には70%鎮火したようですが、その他の地域でもまだ多くの山火事が発生している模様です。