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阪神OBのコーチ対決!カナフレックス藤井vsパナソニック阪口《都市対抗近畿2次予選》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
社会人チームの藤井コーチ(右)と阪口コーチ(左)。今回は阪神時代の写真をどうぞ。

 9月1日から始まった社会人野球の『第91回都市対抗野球大会』近畿地区第2次予選は後半戦に入りました。会場のわかさスタジアム京都も、暑さと蚊に悩まされた先週から一気に季節が進んだような感じで、強い日差しの中に秋の匂いを感じます。そして14日にはNTT西日本と大阪ガスの大阪市同士による第1代表決定戦が行われ、NTT西日本が6年連続31回目の本大会出場を決めました。これが全国での代表一番乗りです。でもまさか12対1という大差になるとは…。

 同じ14日、この第1代表決定戦の前にあったのが、カナフレックスとパナソニックによる元阪神のコーチ対決です。藤井宏政コーチ(30)のカナフレックスは10日の第1代表決定トーナメント準決勝で大阪ガスに敗れ、同じく阪口哲也コーチ(28)のいるパナソニックもNTT西日本に敗れたため、「第1代表決定戦でやりたい」という2人の願いはかなわず、第2代表決定トーナメントの1回戦での顔合わせとなりました。

 結果は7対0でパナソニックの勝利です。なお1回戦と書きましたが、第2代表決定トーナメントは2試合しかないので、次はもう決定戦。パナソニックは、第1代表を逃した大阪ガスときょう16日に戦い、勝った方が近畿の第2代表として11月の東京ドームへ行きます。一方のカナフレックスは第4代表決定トーナメントへ回り、次は18日の5回戦。勝てば決定戦で、もし負けてもまだ最後の第5代表に望みがあるんですよね。

都市対抗近畿2次予選の難しさ

 ちょっと脱線してもいいですか?都市対抗野球の近畿地区第2次予選は第1代表決定トーナメントから始まって、その1回戦で負けて回ることになる敗者復活戦は、一気に第4代表決定トーナメントまで飛ぶのです。ここでまた1回戦(2回戦からのチームもあり)から戦います。ただし第1代表の時と違って、ここでは5回戦まで進んだチーム以降しか敗者復活戦がありません。よって4回戦までに負ければ予選敗退決定…。この第4代表決定トーナメントが、とても厳しい“やまがた”と言えるでしょう。

 逆に、第1代表決定トーナメントの2回戦で負けたチームは第3代表決定トーナメントの1回戦へ回り、そこで3つ勝てば代表になれます。パナソニックやカナフレックスのように準決勝で負けたチームは、すぐ隣の第2代表決定戦に行って2つ勝てば代表決定。さらに第1代表決定戦で敗れた今回の大阪ガスのような場合、次は第2代表の決定戦へ。そこでも負けたら第3代表の決定戦へ。万が一そこでも勝てなかったら第4代表決定戦、そして最終の第5代表決定戦と、あと1つ勝てば代表という戦いだけが繰り返されるわけです。

 第1代表決定トーナメントで勝てば勝つほど、負けた時の戦いが有利になると、今回カナフレックスが勝ち進んだおかげで再認識しました。今回、次で負けてもまだ試合ができるってことはありがたい!ただ過去には第1代表決定戦で敗れたあと、すべての決定戦に負け続けて代表を逃したチームもありますので、油断はできません。自分たちで広げたチャンスを何とかものにしてほしいものです。

 さて、きのう15日は、カナフレックスの今後にも影響してくる第4代表決定トーナメントの3回戦2試合が行われました。1試合目は三菱重工神戸・高砂対日本生命で、9回裏に日生の籾山選手が逆転サヨナラ2ランを放ち、4対3で勝利。2試合目のミキハウス対日本製鉄広畑は9対3で日本製鉄広畑が勝ちました。日本生命と日本製鉄広畑は17日に試合をして、勝った方が5回戦でカナフレックスの相手となります。どちらも今回は最初にカナフレックスが勝ったチームですが、気合いを入れて来るでしょうね。きっと。

公式戦の対戦成績はパナ3勝、カナ0勝

14日のわかさスタジアム京都。1週間ほどで一気に空の様子が変わりました。
14日のわかさスタジアム京都。1週間ほどで一気に空の様子が変わりました。

 では、14日に行われた元虎コーチ対決を振り返ります。藤井選手、阪口選手の時代も含めて、オープン戦は何度も行っている両チーム。公式戦での直接対決は今回が3度目で、過去2度はどちらも社会人野球日本選手権の近畿地区最終予選でした。最初が2016年、1対0でパナソニックが勝ちました。もう1つは昨年の第1代表決定戦で5対4、またパナソニックの勝ち。「次は1点差で勝ちたい」と藤井コーチが言っていた、当時の記事もご覧ください。→<元阪神の藤井ヘッドコーチ「来年は逆に1点差で勝てるカナフレックスに!」>

 9月14日 第2代表決定トーナメント1回戦

カナフレックス(東近江市)-パナソニック(門真市)

 パナ 200 012 020 = 7

 カナ 000 000 000 = 0

◆バッテリー

 【パナ】榎本(9回) / 三上

 【カナ】上村(1回0/3)-宮城(5回)-青山(2回)-秋川(1回) / 福田-植松(8回~)

《試合経過》※敬称略

 まずパナソニックの攻撃。カナフレックスの先発・上村から1回は連続四球と犠打で1死一、二塁として4番・片山が2点タイムリー!ルーキーの立ち上がりをとらえて先制します。上村は2回の先頭にも四球を与え降板。代わった宮城が四球を与えながらも後続を断ち、3回と4回はヒットや四球があったものの0点に抑えました。しかし5回、パナソニックは味方のエラーと片山の左前打などで1死一、三塁として5番・法兼の二ゴロで1点追加。6回は2死後に4連打で2点(1番・田中と3番・小峰の中前タイムリー)を加えます。

 カナフレックス3人目の青山に対し、7回は三者凡退で終えたのですが8回に先頭からヒットと連続四球で無死満塁として、1死後に小峰と片山の連続タイムリーで2点。9回はルーキー・秋川の前に三者凡退だったものの、片山の4安打3打点など計11安打で7点をたたき出しました。

 一方のカナフレックスは1回が三者凡退。2回は2死から6番・吉田の左前打が出ただけ。3回はまた三者凡退で、4回と5回はともに2死から四球の走者(4番・北川と8番・福田)しか出ていません。6回は三者凡退です。

 ようやく7回、この試合初めて先頭打者が出ます。しかも北川と江頭が連打で無死一、二塁!と喜んだものの、後続は2三振などでピシャリと断たれ無得点。8回も1死から1番の山崎と続く武田に連打しますが、ラッキーボーイの新宅は三ゴロ併殺打…。9回は先頭の北川が右前打するも左飛と併殺打で試合終了。パナソニック・榎本に6安打完封負けを喫してしまいました。

なかなか乗っていけなかった…と藤井コーチ

これもちょっと懐かしい写真。2017年、藤井コーチが選手として鳴尾浜にやってきた時のものです。
これもちょっと懐かしい写真。2017年、藤井コーチが選手として鳴尾浜にやってきた時のものです。

 どちらかが勝つということは、どちらかが負ける状況なので複雑ですが、それぞれの立場でコメントをご紹介します。

 まずカナフレックスの山田勉監督(61)。松下電器出身の監督にとっては古巣が相手でしたね?「いやいや、特に気を使うことはなかったですよ(笑)。練習試合もやっていたので」。この日の試合を振り返って「最初の点の取られ方がね。フォアボール、フォアボールからだったので。あれで終わっちゃったかな」という感想。

 先発がルーキーの上村投手でした。「まあピッチングコーチらと相談して、私が上村でいこう!と決めたので。それは私の責任です。いってダメだったら代えてもいいと。勝つ、負けるは気にしていなかったんですよ。次がまたあるので。彼にとって、これがいい経験になればいいですね」

 それから山田監督は「大変なんですよ、都市対抗ってのは。私も4年連続で出ましたけど、出るのがまず大変」と言います。冒頭で説明させていただいた、あの第1代表を決めるトーナメントのどこで負けるかが大きく影響するという点でした。「そうなんですよ。でもそれが面白いところでもある」と監督。ここまで来たら、ぜひ勝って東京ドームへ行ってください!

 続いて藤井コーチです。なかなかチャンスを作れなかったですねと言うと「すぐ追いついて、前半を2対2くらいでいきたかったですけど」と悔しがります。「よかったですねぇ、榎本…。ノーアウトかワンアウトでランナーを出せていたら。全部ツーアウトからなんで。なかなか乗っていけなかった。うちが真っすぐを打ちにくるとわかっていて…そこの攻め方もうまいですよね」。完敗というコメントでした。

 ところで「次は日本生命か、日本製鉄広畑か」と予想した藤井コーチ。見事、的中ですね。次も粘りと執念で撃破しましょう。

表情硬めのルーキーピッチャー

負けた試合後だったこともあり、ちょっと表情が暗いかも。秋川投手(右)と上村投手(左)。
負けた試合後だったこともあり、ちょっと表情が暗いかも。秋川投手(右)と上村投手(左)。

 選手のコメントもいただきました。先発したルーキーの上村(かみむら)剛輝投手は、チーム最年少の21歳です。この近畿2次予選が入部して初めての公式戦で「1球の重みとか、オープン戦ではない緊張感があって、ピリピリした感じです。1球の大切さをすごく感じました」と話しています。ここまでリリーフ登板はあったものの、初先発でした。「3日前に言われました。先発させてもらえる嬉しさはありました。そこでしっかり試合を作らないといけないと思って」

 なかなか語りづらい状況だったでしょうに、一生懸命しゃべってくれた感じです。写真の顔もこわばっているように見えますが、同期の新宅選手はこう証言してくれました。「(上村投手は)もともと笑わないですね。僕は写真で笑顔ができないけど、普段は笑いますよ」と。

 9回に登板した秋川(あきがわ)優史投手もルーキーで、年は22歳。これが近畿2次予選初、つまり社会人選手として公式戦初登板ですね?しかも三者凡退。「はい。でも点差がついていたので、あまり緊張はしなかったです」。どのあたりでいくぞと言われた?「7回裏から準備を始めて、8回に2点追加された時です」

 そのあと「実は1ヶ月前にフォームを変えて…」とつけ加えた秋川投手。え、そうなんですか。どこを?「腕を上から横に」。それはかなりのチェンジですよね。どなたかのアドバイスで?「いえ、自分でいろいろ考えて。まだ今はちょっとずつ、さまになってきている感じです」。本大会で披露できたらいいでしょうねえ。また試合を振り返って「点差は離れていたけど、オープン戦の1イニングとは違うと思いますし、いい経験になりました」と締めくくっています。

宮城投手は大車輪の働きぶり

いつでも、どこでも、きっと投げてくれる。そんな安心感がある宮城投手。
いつでも、どこでも、きっと投げてくれる。そんな安心感がある宮城投手。

 宮城慎之介投手(27)は大西健太投手や福田優人捕手と同学年の同期。投手陣最年長です。2回無死一塁で早くも出番が。もう準備はしていたんですか?「はい。1回の先頭にフォアボールを出したところから準備を始めました」。本当に最初からですね。それにしても、いつでもどこでも、何かあれば宮城投手って感じがします。「特に今回は、最初の(日本生命戦)が延長11回からで、次(日本製鉄広畑戦)が先発で、きょうがロングリリーフと。難しさはあるんですけど、すべてがいい経験になっています」

 どんな場面でも来い、と?「便利なピッチャーです(笑)」。いえいえ、本当に助かる貴重な存在でしょう。それでも試合については「5回、6回に失点してしまったのが悔しいです。2失点のまま粘れていたら相手も焦ってくるのに…そんな展開に持ち込めなかったのが敗因でした」と猛省する宮城投手。

 大変な役割ですが、監督もコーチも選手もきっと頼りにしていると思いますよ。スタミナや肩、ひじなど問題ありませんか?「体はどこも悪くないので。いつでも行ける準備をしています!」。次もまたお願いします。

完封負けからの完封勝ち!

 変わってパナソニックの阪口コーチ。今季またユニホームがモデルチェンジしたようで、より黒色が前面に出ている印象でした。本大会に出たらテレビで映えそうな、いい感じです。

試合後の阪口コーチ(右)と藤井健選手(左)。左奥から視線を送っているのは、この日4安打3打点と大活躍した4番・片山勢三選手です。
試合後の阪口コーチ(右)と藤井健選手(左)。左奥から視線を送っているのは、この日4安打3打点と大活躍した4番・片山勢三選手です。

 さて第1代表決定トーナメントの準決勝は、NTT西日本に2対0で完封負けを喫したパナソニック。その試合から中3日で再び榎本亮投手(28)が先発しました。今度は打線がしっかり打ったのでは?と尋ねたら「きのう監督が『あしたは野手が(ピッチャーを)助けよう!頑張って勝とう!』って言ったんですよ」と阪口コーチ。なるほど、そういうことがあったんですね。「みんなよく打ってくれました。もちろんピッチャーも頑張ってくれた」と阪口コーチは続けます。

 カナフレックスの藤井コーチも「パナはみんな最初からどんどん振ってきていた」と振り返っています。榎本投手も助けられたでしょうね。というわけで、同い年で同期入団、阪口コーチのアシストで榎本投手にもコメントをいただいています。感謝!

榎本投手とのQ&A

Q、この日の先発を言われて、どういう気持ちで試合にのぞみましたか?

 「その前の試合(NTT西日本戦)で負けてしまったんで、なんとか勝って次につなげたかった」

Q、もちろん最後まで投げるつもりで?

 「交代って言われるまではどの試合も最後まで行くつもりです」

Q,初回に2点取ってもらって、気持ちに余裕はできましたか?

 「この2点は絶対に守りきるという意味で、余裕というよりはむしろ気合が入りました」

Q、ほぼ先頭打者を抑えての完封勝利、自身で今日のピッチングを振り返っていかがですか?

 「先頭打者が出るのと出ないのでは失点する割合が変わると思いますので、きょうはそこをうまく抑えられたことで完封につながったと思っています」

Q、次で決めたいですね。もし出るようなことになれば、中1日でも行くぞ!という思いはありますか?

 「もちろん投げます!言われたらどんなケースでも行きます!」

榎本投手の写真、見つけました。2018年に都市対抗出場を決めた試合での同期5人衆です。上段左から北出投手、榎本投手、福原選手、下段左から藤井健選手、阪口選手。
榎本投手の写真、見つけました。2018年に都市対抗出場を決めた試合での同期5人衆です。上段左から北出投手、榎本投手、福原選手、下段左から藤井健選手、阪口選手。

 最後に改めて、このあとのパナ&カナの予定を書いておきましょう。パナソニックはきょう16日13時から、第2代表をかけて大阪ガスとの決定戦に臨みます。カナフレックスは18日10時から第4代表決定トーナメントの5回戦で日本生命か日本製鉄広畑(17日の試合結果による)のどちらかと対戦予定。開始時刻は予定です。今回は無観客試合のため観戦はできませんが、SNS等で経過を見ることは可能なので、小虎ファンの皆様もぜひ応援してください!

 ※今回もカナフレックス・山田監督、藤井コーチ、大塩マネージャー、パナソニックの阪口コーチや、ご協力くださった選手の方々にも大変お世話になりました。ありがとうございます。

   <掲載写真はチーム提供>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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