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【動画】確かに進化したが、細か過ぎる改良かも!? マツダCX-3に試乗。

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
写真は全て筆者撮影

最新が最良をきめ細かな改良で実現

 最近のマツダは頻繁に改良を行なう。つまりは同社の販売するモデルは、クラスの上下に関わらず最新の機能を盛り込むとともに、最良の考えを反映させることで、商品としての鮮度の高さを常に保とうとする意識があるからだ。

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 例えばユーザーがマツダの店舗に行った際に、デミオには最新装備が与えられているのに、格上のアテンザにはまだその装備が用意されてない…というような現象を防ぎたいという。またデザインテイストやクオリティに関しても、新しいモデル=最良の図式は当然のため、常に最新のモデルと同じデザインテイストやクオリティを担保して、どのモデルも最新のマツダ、とすることで鮮度の高さとブランド価値を高めることを狙う。

 そうした想いが最も強く現れているのが、今回試乗したCX-3である。このモデルは当初、ディーゼル・エンジンのみのラインナップとなるコンパクトSUVとして登場して、事あるごとに細かな改良が加えられてきた。そして今回で2015年のデビューから実に4度目となる改良がなされた。

エンジンはガソリン、ディーゼルともに進化。レスポンスが良くなり実燃費がさらに向上した他、ディーゼルは1.5Lから1.8Lへ。
エンジンはガソリン、ディーゼルともに進化。レスポンスが良くなり実燃費がさらに向上した他、ディーゼルは1.5Lから1.8Lへ。

 しかも今回は、1.5Lのディーゼル・エンジンを1.8Lへと排気量アップするという、改良のレベルを超えた変更まで行なっている。さらに項目を挙げておけば、2.0Lのガソリン・エンジンもよりレスポンスと燃費に優れたものへと改良。静粛性に関しては、改良にもかかわらず、ボディパネルの板厚やガラスの板厚、そしてヘッドライナーの板厚まで変更するなどして徹底した対策を施している。

改良にもかかわらず、タイヤを専用開発

タイヤは次世代車スカイアクティブXで使った技術を先出しして搭載し、専用開発した。
タイヤは次世代車スカイアクティブXで使った技術を先出しして搭載し、専用開発した。

 さらにサスペンションに関しても、ダンパーを大型化した上でセッティングをリファインし、タイヤも次世代車スカイアクティブXで培った技術で専用品を開発した。またシートではCX-8で好評だった高減衰ウレタンを用いるなどして快適性も高めた。その他装備でも360度カメラを備えたのを始め、MRCC(マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール)はついに、全車速域対応の“使える”ものになったといえる。実際に試乗した様子や評価は、動画を参考にしていただきたい。

 今回のCX-3だけでなく、全てのモデルで同じように最新=最良を実現しようとするマツダのこうした姿勢は非常に素晴らしい。今回のCX-3も前回に比べると、明らかに改良されたことがよくわかり、商品としての魅力を増したのは事実で、高く評価できる。しかし今回あれ? と思えたのは、そうした真摯な想いの一方、どこかで「最新=最良でなければならない」が強迫観念になりつつあるような感じが垣間見えたことだ。

 例えばガソリン・エンジン。レスポンス良くアクセルに反応する一方で、その領域のサウンドが耳につくようになると同時に駆動系にギスギスした感じがでて、滑らかな感覚は失われた。反応が良く、わずかな足の動きも加速に反映されるため、やや落ち着きに欠けるのだ。また静粛性は以前よりも確実に高まったが、その分、室内の「音のバランス」が変わった。これまでのモデルは、走行時に低い音が響いていて比べると数値的にもうるさかったが、今回はその部分をカットして数値的に優れたものになり、実際に静かになった。だが今度はその分、余計にエンジンの音が、ディーゼル/ガソリンともに聞こえるようになった。こんな具合で、実際に改良された新型は数値でも感覚でも良くなったことが分かる一方で、違う部分での気になる点を白日のもとにさらけ出した感があるわけだ。

センターコンソールは形状を大幅変更。これは電動パーキングブレーキとなり、従来のパーキングブレーキレバーがなくなったことを受けてのこと。コントローラーやドリンクホルダーがより適切な位置へ。
センターコンソールは形状を大幅変更。これは電動パーキングブレーキとなり、従来のパーキングブレーキレバーがなくなったことを受けてのこと。コントローラーやドリンクホルダーがより適切な位置へ。

 もちろんこれは、自動車の進化においては他でもある当たり前のこと。ここを良くしたらあちらが気になり、あちらを良くしたらそちらが気になって…というイタチごっこである。そしてもちろんこれはエンジニアもわかっていることでもある。加えて、事あるごとに改良を施すとはいえ、当該モデルも登場からの時間はどんどん経過していくわけで、その間に全く新しいモデルとして登場してくる他のライバルは大勢いる。だから、登場から時間が経つほどに基本設計は当然古くなるし、改良を重ねても追いつけないレベルに周りが到達してしまう恐れがあることも間違いない。

手段と目的が入れ替わってしまった?

 その典型といえるのが、今回から採用された360度カメラ。これはフロント/リア/左右のミラー下に与えられた4つのカメラの画像を合成して、クルマを俯瞰するようにモニターに映し出せる他、左前方の死角を映したり、後退時に実画像をモニターに映すことで安全を確保する便利な装備。既に多くのライバルが備えるものでもある。しかしせっかく装備したのに、特にバックモニターのレンズが広角過ぎるからか、映し出される映像は端が歪み過ぎており、実際に物が映っても正確に把握できない。また画質も全体的に低いのも気になる。確かに360度カメラが付くことは確実にユーザーメリットになる。が、こうした例を見ると後発で360度カメラを設定するならば、他にも行なうべきこともあったのではないか? と思えてしまう。もちろんもっと高画質のカメラを良い位置に装備するにはコスト的な制約があるのは分かるのだが、これはちょっと「?」だった。

360度カメラは特に、バックカメラの画像が広角過ぎて画面の端が歪んでしまっている。
360度カメラは特に、バックカメラの画像が広角過ぎて画面の端が歪んでしまっている。

 確かに「360度カメラ」が欲しいというユーザーおよび販売の現場からの声には答えているわけで、それ自体は正義であり…と、実に悩ましい感じが垣間見られる。

 だから今回CX-3に乗って、以前よりもあらゆる部分が良くなり、商品としての鮮度はしっかりと維持されたと感じる。確かにCX-3史上、もっとも大規模な改良だった。しかしながら、この3年の間に登場した新モデルやライバルも進化はしているわけで、それらの中で見れば、大幅にインパクトがあるわけではないのも事実だ。

 細かな改良を真摯に続けるからこそのマツダ・ブランドの価値が高まっていくことは間違いないが、今回の改良はどこか、微に入り細に入りに過ぎたように個人的には感じられて、どこかモヤモヤとしたものを感じたのだった。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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