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圧巻の勝利! テレンス・クロフォードがウエルター級4冠チャンプに

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Esther Lin/SHOWTIME

 28戦全勝22KOのWBA/WBC/IBFウエルター級王者、エロール・スペンス・ジュニアと、39戦全勝30KOのWBO同級チャンプ、テレンス・クロフォードとの4冠統一タイトルマッチは、第9ラウンド2分32秒、クロフォードがTKO勝利を飾った。クロフォードはスーパーライトに続き、2階級で4冠を達成した。

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 スコアシートを見ればお分かり頂けるだろうが、立ち上がりはスペンスが良く手を出してペースを握りかけた。だが、思い起こせばクロフォードの仕掛けた罠であり、敢えて攻撃させていたのだった。

 2回、3冠王者が出てくるところを待ち構えていたWBOチャンプは、左ストレートからの右で早くもダウンを奪う。その後も、ジャブで再三スペンスの腰を落とし、格の違いを見せつけた。

プロモーターからメディアに配布されたオフィシャルスコアシート
プロモーターからメディアに配布されたオフィシャルスコアシート

 試合前、筆者は2度にわたって世界ヘビー級王座に就いたティム・ヴィザスプーンに予想を訊ねている。ヴィザスプーンは、「当日、巧みなディフェンスを見せた方が勝つ」とだけ答えたが、クロフォードは見事にスペンスの攻撃を躱した。

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 7回にも2度ダウンを喫し、劣勢に立たされたスペンスだが、ダメージを蓄積させながらも手を休めず、敢えて述べるなら"男を見せた"。

 1万9990名で埋まったTモバイルアリーナは、両チャンピオンの攻防に酔いしれた。

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 勝者は語った。

 「かつて発言した通り、自分は世界王者になることだけを夢見てひたすら走ってきた。自分がその目標を追いかけ始めた折、誰も俺を信じなかった。でも、成功者になったよね。

 この試合を実現させてくれたスペンスと、彼の陣営に感謝する。スペンスがいたからこそ、4本のベルトを束ねられたんだ。外野から、ウエルター級では通じないだの、ああだこうだと言われたよ。でも、空を見上げ、神に祈りながらここまでやってきた。

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 スペンスは素晴らしい才能を持ち、鋭いジャブを身に付けている。それを警戒して、対策を立てた。しっかりとした強いジャブを打てるよう、練習を重ねたんだ。ジャブで勝つことが鍵だった。的確にヒットし、彼の動きを止められた。自分は勝負をモノにし、歴史を築いたね」

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 第2ラウンドのダウンについては「瞬間的な動きだった。俺の左が彼を捉え、エロールは次の右を予期していなかったのだろう。第7ラウンドの一つ目のダウンに関しては、彼は俺のアッパーが見えていなかった。喰らって平衡感覚を失った。同ラウンド2度目のダウンは、ダブルフックを耳に当てたんだ」と振り返った。

 最後のレフェリーの判断は「いいストップだった。何発かのハードショットを放つところだった。俺が卓越したフィニッシャーだってことは周知の事実だ。レフェリーはファイターを守るために、やるべきことをやったよね」と話した。

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 4冠ウエルター級王者は、勝利者インタビューを「様々な感情が入り混じって、今にも泣きそうだよ」と締め括り、スペンスとも抱擁を交わして人間性も覗かせた。

 今宵のラスベガスは、間違いなく1999年9月18日のWBC/IBF統一ウエルター級タイトルマッチ、オスカー・デラホーヤvs.フェリックス・トリニダードを凌ぐ内容だった。

撮影:筆者
撮影:筆者

 今回、筆者に与えられたのは、リングからかなり遠い天井桟敷だった。近くにいたファンが試合後に叫んだ「俺はシュガー・レイ・レナードもトーマス・ハーンズも現役時代の姿を見たことがない。でも、クロフォードは知ってるぜ!!」という一言が、今でも耳に残る。

 試合後の記者会見で、スペンスはスーパーウエルター級で再戦したいと述べ、アメリカメディアも大きな期待をかけているが、これだけくっきりと明暗が分かれた今、リターンマッチを話題とすることに、私は違和感を覚える。

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 ともあれ、パウンド・フォー・パウンドKINGは、クロフォードと井上尚弥が争うことになりそうだ。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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