道路占有許可の基準緩和は、賑わいを取り戻す契機となるか【#コロナとどう暮らす】
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除されて一ヶ月が過ぎ、街中はマスクをしながらもショッピングやお出かけをする人たちが増えてきた。
とはいえ、外出自粛を経て、多くの人たちが飲食店や人混みの多いところへ足を運ぶことを躊躇してしまう。特に、飲食店は休業要請による経営悪化、屋内における客席数の制限など感染予防対策による対応コストも重なり、経営状況をより逼迫してしまう状況が続いている。
こうした現状に対して国土交通省は、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける飲食店等を支援する緊急措置として、沿道飲食店等の路上利用の占用許可基準を11月30日まで緩和すると6月5日に発表した。
道路占有許可の基準緩和でテラス席など路上活用が容易に
道路占有許可基準が緩和されたことで、テラス席やテイクアウト営業のための仮設施設の設置が可能となり、占有料も施設付近を清掃することで免除される。これにより、屋内営業の密集や密接を避け、店舗内の風通しを良くして換気を促し、テラス席等で客席数を確保し、テイクアウト営業の促進を促すことができる。また、路面店事業者のみならず、合意が得られれば2階以上ある店舗や地下店舗、沿道以外の店舗も対象となる。もちろん、一般の人たちの通行の妨げになってはならず、歩道においては交通量が多い場所は3.5m以上、その他の場所は2m以上の歩行空間を確保する必要がある。
これまで、道路を活用した取り組みはオープンカフェなどの飲食店の屋外営業やマーケットといった収益活動と、歩行者天国やお祭りなどの非収益活動に分けられ、こうした地域活動の実施の際には道路が公共の財産であることを踏まえ、道路上に物品などを設置することで交通の妨げになることから、「公共性・公益性の配慮」「地域における合意形成」などを留意するとされている。基本的に、道路空間における収益活動は原則禁止とされており、オープンカフェなどの取り組みも、まちづくり団体やエリアマネジメント団体がまちづくりの目的のために特例的に認められてきたといった経緯もある。
こうした背景から、道路占用許可について社会実験などを導入し、賑わい創出やまちづくりに寄与する活動の一環として都市政策やまちづくり関係者らが要望や意見を出していた取り組みなだけに、今回、感染予防対策における緊急対応とはいえ、一時的に占有許可基準が緩和したことに関係者らからは喜びの声が上がっていた。
道路占有許可の申請に際して、一部店舗の利益誘導につながり公共性や公益性の配慮の観点から個別飲食店による申請はできない。道路占有許可の申請は、道路占有主体として自治体やまちづくり協議会や都市再生法人といった民間団体、商店街振興組合などの民間事業者団体、商工会議所といった中小企業支援団体などによる一括申請となる。
(道路占有許可の基準緩和や申請に関する詳細はソトノバ編集長・泉山氏のnoteを参照いただきたい)
すでに全国各地で実施例が生まれている
6月5日の発表から約3週間弱が経過した現在、47都道府県・20政令指定都市を対象に6月19日の時点での対応状況の調査によると、約半数の自治体で実施済、約4割の自治体で6月19日以降実施予定だということがわかった。これまでに、各地で地域の賑わい創出などからオープンカフェや道路占有許可における特例措置や社会実験が行われてきたことを踏まえ、こうした道路利用の実績や経験のある地域を皮切りに、各地で路上活用の広がりがでてくるだろう。また、これをきっかけに地域への賑わい創出を作り出す一手にしたいと考える自治体や民間団体も多いかもしれない。
あくまで緊急措置として11月30日までの緩和となっているものの、12月以降は11月末までの新型コロナウイルスの状況や緩和による実績や取り組みによる変化や状況を鑑みながら、今後の道路利用のあり方を検討していくという。今回の緊急措置を、ただの一過性で終わらせることなく、どう次の地域の賑わいにつなげていくか。また、道路占有許可の基準緩和を元に戻すのではなくゆるやかに常態化させるためにも、多くの実例や目に見えた効果を生み出す必要がある。
自治体と民間団体との密な連携が今後の鍵
そのためには、特に自治体と民間団体との連携が益々求められてくることは言うまでもない。地域経済における今回の新型コロナウイルスの影響は著しく、特に観光業や飲食店は大きな打撃を受けている。ここ数年のインバウンド促進も相まって、観光客誘致に力を入れていた地域は、地域経済の再構築が迫られているはずだ。また、商店街においては商店街組合への加入率の低下などが問題視されるなか、商店街という連合体だからこそ生み出せる「横の百貨店」の価値を改めて見直すなかから、組合の組織構成や新陳代謝などを図るきっかけになるはずだ。飲食店や個々の店舗においても、個店のみならず地域の事業者と連携しながら、まちぐるみ、地域ぐるみでの展開をする、点から面への連帯が、結果として面から点への波及や誘客へとつながっていく。
新型コロナウイルスをきっかけに地域住民が居心地よく過ごしやすいまちづくりを促し、足下の経済を活発化させることに注力する流れも一方である。ひいては、地域住民らの地域への愛着や地域コミュニティへの参画などをもとに、市民参加や社会包摂の高い地域へとシフトしていく流れもある。まちづくり協議会など民間団体は、こうした地域の実情や課題を吸い上げ、地域課題に即した提案を自治体に行い、自治体も民間団体と連携を図りながら、時には政策や条例など総合的な取り組みや枠組みを柔軟に作り上げていくなど、それぞれの役割に合わせた行動が求められる。
新たな地域の賑わい創出のきっかけに
国交省も、当初から「賑わいのある道路空間」の さらなる普及に向けて2020年道交法改定で歩行者利便増進道路の指定制度の創設等を設置し、地域を豊かにする歩行者中心の道路空間の構築に向けて動き出している。また、2020年の都市再生特別措置法改正による「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の促進とともに「ウォーカブル推進都市」を公募している動きとも連動している。
路面店など地域の一階店舗はある意味で地域の顔とも言える。路面の賑わいがあるかないかで、路上の楽しみ方は変わってくる。海外に目を向けると、多くのテラス席の賑わいやマーケットが所狭しと広がり、道を歩くだけでも満喫できる経験をした人も多いはずだ。
地域の賑わいを取り戻し、新しい取り組みをうまく受け入れながら、世代を超えて賑わいのある地域を取り戻すために舵を切っていくべきだ。