1兆円を突破したふるさと納税、制度の目的と活用方法を見直す時期か #専門家のまとめ
総務省は8月2日、ふるさと納税に関する現況調査結果を公表し、令和5年度の実績が約1兆1175億円とし、ふるさと納税の市場が1兆円台を突破したことが明らかになりました。
ふるさと納税を通じて地域自治体の中には数十億円ものお金が集まる一方、東京都など都市部では税金流出が加速し、都市部と地方における自治体間の溝が深まっています。また、総務省は来年度から仲介サイトにおけるポイント付与の禁止など、さらなる制度改正を試みています。
1兆円という節目を超えたふるさと納税の現状について、参考となる記事をまとめてみました。
ココがポイント
▼食品や日用品だけでなく、体験型商品などで高額商品も増加。多種多様なふるさと納税の商品造成が図られている
・2023年度「ふるさと納税」初の1兆円超 返礼品は「体験型」「代行」多種多様に【Nスタ解説】(TBS NEWS DIG)
▼世田谷区では100億円超と都市部の税流出が加速。一方、被災地支援など返礼品を求めない寄付も定着してきている
・ふるさと納税1兆円超 寄付通じた「支援」の動きも 返礼品ありきでない利用広がる(産経新聞)
▼東都の税金流出は約1,899億円、年々膨れ上がる都の税流出に対して小池都知事はふるさと納税を強く批判
・小池百合子知事、ふるさと納税批判「最初の理念からかけ離れている」 都民税流出額1899億円(日刊スポーツ)
▼仲介サイトのポイント付与禁止に楽天・三木谷社長が強い批判、反対署名集めを加速、ポイント禁止を契機に利用軽減を懸念
・三木谷氏「憤り」表明の楽天、ふるさと納税の「ポイント禁止」に改めて反対会見。185万超の反対署名を強調(BUSINESS INSIDER)
エキスパートの補足・見解
2008年の制度開始から16年、東日本大震災や新型コロナウイルス流行などを契機に、これまで右肩上がりで成長してきたふるさと納税。
ECサイトによる商品販売や税控除のためのワンストップサービスなど、制度そのものの利用を拡大するため「節税」「お得」「便利」といった利便性を謳いながら利用拡大を進めてきました。
一方、過熱する返礼品競争などを抑えるため総務省はその都度で制度の見直しを図ってきました。今回のポイント付与禁止もそうした制度改革の一環といえます。
そうした制度変更とは違った動きとして、被災地支援やNPOなどへの資金元としてふるさと納税が使われるなど、寄付者への直接的な返礼品目的とは違う新たな寄付の形も生まれようとしています。
1兆円という大台を1つの契機として、ふるさと納税の本来の趣旨でもある地方の活性に寄与する制度として、今一度制度のあり方や活用方法そのものを見直す時期にきているのではないでしょうか。