Yahoo!ニュース

PS5 Pro、海外でも「高すぎる」とのツッコミ。しかしゲームマニアは値段を気にせず買うとの見方も

多根清史アニメライター/ゲームライター
Image:PlayStation Japan/YouTube

先週初め、いよいよPlayStation 5の強化モデル「PS5 Pro」の予約が始まりました。日本での価格は11万9980円(税込)、米国価格は699ドルです。1ドル=155円レートであり、国内ユーザーに対して冷たい設定であることは以前もお伝えした通り

では海外では安いと言われているかといえば、高すぎる!の大合唱であり、PS3の発表当時を思い出している人もいました

大手テックメディアThe Vergeの編集者も「米国でも英国でもまだ完売してない。700ドルという価格は、このゲーム機が年末商戦期でも簡単に手に入ることを意味するようだ」と述べています

純粋に同じだけの性能を持つゲーミングPCと比べれば、PS5 Proはそう高くはないとの声もあります。それでも割高の印象を与えてしまうのは、もっぱらディスクドライブと縦置きスタンドが別売りという事情が大きそうです。

そこを直球にツッコんでいるのが、海外ゲームメディアIGNです

SIEの青木俊雅氏は、PS5 Proは「プレイヤーに並外れた価値を与えるためのフルパッケージのようなもの」と回答。本体の強化はいわずもがな、内蔵SSDは2倍の2TBに増やし、無線はWi-Fi 7に高速化し、欠けてるものは何もないということでしょう。

さらに外付けドライブと縦置きスタンドについては「プレイヤーに選択肢を与える」とのこと。「我々が提供している価値提案のバランスが重要」と付け加えています。

要は「ぜんぶ入りならもっと高くなってたよ」「ドライブやスタンドがなくても遊べますよね」と仄めかしているようです。一応は頷ける話ですね、もしも外付けドライブがソニーストアでも注文できないほど酷い品薄じゃなければですが

PS5 Proは「4Kテレビで高画質&60fpsプレイをしたい」コアゲーマー向け製品

Image:Digital Foundry
Image:Digital Foundry

PS5 Proとは、いったい誰に向けた製品なのか。

いみじくも青木氏が「私たちがターゲットにしているのは、もっとも熱心なプレイヤー(the most engaged players that we're targeting)」と述べていたように、優れたゲーム体験のためなら余分なお金を支払うことを躊躇わないコアゲーマーでしょう。

この取材が面白いのは、青木氏がターゲット層をかなり具体的に絞り込んでいることです。

「PS5 Proは8Kゲームに対応していますが、それを強調したいわけではない」「8Kテレビをお持ちの方はごく一部」としつつ「4Kテレビ所有者が高レベルのビジュアル忠実度、かつ60fpsプレイする主流のユースケース」に重きを置いているとのこと。

ほぼ対応コンテンツがないのに8Kテレビを買ってる大金持ちではなく、今どき50インチでも5万円~10万円の4Kテレビ(120Hz対応のゲーミングモニターではなく)を持ちながら、少しでもリッチなゲーム体験をしたい人向けだと率直に語っていると言えます。最高級のビデオカードや8Kテレビの前では、約12万円ごときは誤差ですしね。

では、実際にPS5 Proを買ってみて、どれほどのゲームで恩恵が受けられるのか。

ソニーによれば、本体の発売時には「ファーストパーティとサードパーティを含めて40から50タイトルほどの対応をトラッキング」しているとのこと

東京ゲームショウに出展しただけでも『グランツーリスモ7』や『Marvel's Spider-Man 2』などPlayStationタイトルはもちろん、『ホグワーツ・レガシー』など重めのサードタイトルでも表現力アップが確認されており、まずまずの状況です。

その中でも『FINAL FANTASY VII REBIRTH」が日本でも海外でも「最もグラフィックスの向上が感じられた」、裏返せば元のPS5でのパフォーマンスモードが「非常に残念な画質」だったと言われており、他にも画質的な残念タイトルの敗者復活戦が期待できそうではあります。

また匿名のゲーム開発者は、平均1440pの解像度ならPS5 Proへの最適化なしでも平均100fps以上で動き、超解像技術(内部的に粗く描いて負荷を下げ、AIにより高解像度にする)のPSSRを使えば1440p/1600pで120fpsで動かせると「確信」しているとのこと。さらに4k/60fpsも十分に達成できるとの見通しを述べていました

ここまでをまとめると、ゲーム開発者がPS5 Proへの最適化、つまりPSSRやレイトレーシングなど専用機能をガンガン活用していけばグラフィックが飛躍的に向上する可能性があり、特に何も手を加えなくてもPS5ではカクついていた箇所が滑らかになるかもしれないわけです。そこに数万円分の価値を見いだせる人は「買い」でしょう。

逆にいえば、いま現在のPS5ゲームがすごくきれい、どこがカクついているのか分からないと大らかな感性であれば、通常のPS5で十分ということでしょう。

PS4 ProはPS4通常モデルと1万円ほどしか違わず、さほど高くありませんでしたが、累計販売台数は1450万台といわれています。これはPS4シリーズ全体の約12%ほどです。

そしてデータ調査会社Ampere Analysisのアナリストも、PS5 Proは2024年内に約130万台、2029年までに約1300万台が売れると見積もっていますいつの時代も家庭用ゲーム機のマニアは1300~1400万人いて、価格は気にせずに買う人は買うよ、ということですね。

アニメライター/ゲームライター

京都大学法学部大学院修士課程卒。著書に『宇宙政治の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。現在はGadget GateやGet Navi Web、TechnoEdgeで記事を執筆中。

多根清史の最近の記事