どうやって異色の大作RPGは完成したのか?生の開発資料が満載、全てわかる『MOTHER2のひみつ。』
岩田聡さんが参加するまでの『MOTHER2』開発の道のり
スーパーファミコン用ソフト『MOTHER2』発売30周年を記念した書籍「MOTHER2のひみつ。』が11月27日に発売されました。献本を頂いたので読んでみたところ、これまでの謎がすべて解ける「答え合わせの本」となっていました!
『MOTHER2』はファミコン用ソフト『MOTHER』のシリーズ第2作であり、前作と同じく糸井重里さんがゲームデザインとシナリオを手がけたゲームです。
いまだに『MOTHER2』が語り草となっているのは、開発開始から発売まで5年かかったことです。発売延期を何度も重ね、もう出ないのでは……と思われたところ、「5年目にして発売されたこと」が驚きでした。
それが完成に向かったきっかけが、開発4年目にして岩田聡・元任天堂社長の参加だったことは、岩田さんと糸井さんの対談でもたびたび語られてきました。
岩田さんの「いまあるものを活かしながら手直ししていく方法だと2年かかります。イチから作り直していいのであれば、半年でやります」との言葉は、あまりにも有名です。そのため、逆に「それまで4年間、何してたんだ?」というのが大いなる謎となっていました。
ゲーム発売3カ月前に改善項目が数十ページの衝撃!
この本に収録された『MOTHER2』開発資料の数々は、30年間倉庫の奥に眠っていたものです。今年夏に開催された「MOTHER2のひみつ。」展では、手書き資料や開発の記録が公開されていましたが、そこで展示しきれなかったものをできる限り詰め込みつつ、関わった人々の特別対談などを掲載しています。
一冊の本にまとめられて浮き彫りとなっているのは、『MOTHER2』が確かに糸井さんとスタッフが5年の歳月をかけて作り上げた、ということです。
たとえば開発スタートからそれなりに経った段階で、糸井さんから「マザー2をほんとうののものにするために」とのスタッフへのメッセージがあります。
「苦しみを基軸にしてゲームをつくらないでほしい」や、グラフィックにつき「一貫性は平気で無視するくらいの度胸がほしいのです」等は明らかに糸井節。それに続く手書きの資料も、懸命にネタ出ししているのは分かるものの、一向に「ゲーム開発資料」らしく見えてこない。
けれど、手書きメモやキャラクターデザイン、ドット絵の圧倒的な物量は「ずっと手を動かしていた」ことを物語っている。これほどの才能が集まりながら、全くゲームにまとまる様子がないのは、プロのゲーム開発者が読めば恐怖を覚えるのではないでしょうか。
それが「完成に向かうMOTHER2」以降では、一転してゲーム開発資料、ゲームの仕様書然としてくる。そこに岩田さんの名前がなくとも、明らかに開発が加速したと分かる転換ぶりが鳥肌モノです。同時に、岩田さんが「半年でやります」と言えたのも、それ以前に休みなく「手を動かしていた」からだと謎が解けるわけです。
また、最大の衝撃が「M2改善項目」という題された数十ページの文書です。実際に通しでプレイ可能になった『MOTHER2』の直すべき点をリストアップしたものですが、日付が1994年5月5日……発売日は8月末で、あと3ヶ月ですよ!
そんな前半のふんわりしつつも終わりのないネタ出しと、終盤でのギアチェンジの凄まじさがしっかり伝わる本書は、『MOTHER2』ファンもゲーム開発者も、おとなもこどもも、おねーさんも読んでおきたいところです。
(C)SHIGESATO ITOI / Nintendo (C)HOBONICHI