探査機ボイジャーが太陽系の果てで聞いた「音」がヤバイ
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「ボイジャーが聞いた太陽系の果ての音」というテーマで記事をお送りしていきます。
太陽圏を超えたボイジャー
今から40年以上前の1977年に、太陽系の地球より外側にある惑星や、太陽系の外側の領域の探査を目的とした探査機ボイジャー1号と2号が打ち上げられました。
2021年現在、ボイジャー1号は太陽や地球から約150au、2号は約125auの位置にあります!
ちなみに1au=地球と太陽の距離≒1.5億です。海王星までの距離は30au程度なので、非常に遠い世界です。
ここまで太陽から離れると、私たちの住む地球近傍の環境とは全く異なる環境になっていると考えられています。
太陽系の主である太陽は、太陽風と呼ばれる超高温のガスを超高速で常に放ち続けています。
太陽風は非常に高温であるために熱運動によって原子核と電子が電離してしまい、ガスがプラズマの状態になっています。
この太陽風は平均450/s、温度100万という状態で地球を通過し、地球の磁気圏と衝突することで極地で見れる美しいオーロラの原因ともなっています!
ですがそんな太陽風でも太陽から離れるにつれて減速し、最終的に太陽から約100auほど離れた所まで届くと、太陽と別の恒星間にある星間物質と混ざりあうと考えられています。
最終的に太陽風のプラズマと星間物質が混ざり合う境界面をヘリオポーズと呼び、このヘリオポーズの内側の太陽風が届く領域を「太陽圏(ヘリオスフィア)」と呼んでいます。
一説によると、太陽圏は綺麗な球状ではなく、太陽の天の川銀河中心部に対する公転方向とは逆方向に長く伸びた構造をしていると考えられています。
ボイジャー探査機はあまりに遠くまで離れて行ったため、1号は2012年8月に、2号は2018年11月にそれぞれ太陽圏を脱出し、星間空間に到達したと考えられています!
ボイジャーが聞いた「音」
ボイジャーが到達した星間空間には、星間物質と呼ばれる非常に低密度なガスや塵が存在していると考えられています。
そんな星間物質は全く穏やかに存在しているわけではなく、太陽の活動や天の川銀河の自転、他の星の超新星など様々な要因によって、まるで地球の海の波のように、何光年にも及ぶ穏やかで巨大な衝撃波を生み出していると考えられています。
そしてこの衝撃波は、周囲にある電子を振動させることで、「音」を立てるそうです。この音は電子の密集度が高いほど高い音になるので、逆に言えばこの音の高さが分かれば、その場所の電子や物質の密度が理解できることになります。
星間物質の正確な密度を知ることができれば、太陽圏の形状や、星々の形成方法、さらには天の川銀河における太陽系の位置など、様々な角度からのより詳細な情報を知ることができると期待されています。
そしてボイジャー1号は、太陽圏を脱出した3か月後の2012年11月に、史上初めて星間空間に響く「音」を観測することに成功しています!
さらにその半年後の2013年5月には、より大きく、高い音を検出することができています。このことから、ボイジャー1号が太陽圏の果てから離れるほど星間物質の密度が急激に高まっていることが推定できるわけですね。
より継続的な音を観測!?
先ほどのような突発的な音は基本的に太陽の活動によるもので、年間に1度程度の頻度でしか観測されません。そのためこの音のみを頼りにしていると、星間物質の密度分布は一部の場所でしかわからないことになります。
ボイジャー1号が通過する場所の連続的な密度分布を理解するために、研究チームは太陽の活動に関係ない、継続的な音を測定しようと試みました。
その結果、先ほどの音よりも弱いものの、継続的な信号を捉えることに成功したと、今年2021年の3月に発表がありました!
この信号によると、ボイジャー1号の周囲の電子密度は2013年に上昇し始め、2015年の半ばには約40倍の密度になり、現在も上昇後の水準で継続しているとのことです。
今回の計測によって、これまでにない連続的な星間物質の密度分布のデータを得ることができました。
これは未知に包まれた星間空間の理解を深める大発見であると言えそうです!
ボイジャーは2機とも電池の出力が弱まってきており、2025年を目処に2機とも活動を停止する見込みです。最後の時まで、私たちはその勇姿に注目し続けましょう!