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ハリケーン・ヘクター、日付変更線を越え「台風16号」になる可能性

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
NASAの衛星画像(8日)に筆者加筆

※追記(14日):13日中国南部で台風16号が発生し、14日未明に日付変更線を越えたハリケーン・ヘクターは台風17号となりました。

日付変更線は日を隔てるだけではなく、「台風」と「ハリケーン」を分ける境界線でもあります。現在中部太平洋に発生しているハリケーン・ヘクターも、来週には日付変更線を越え、台風へと変わる可能性が出ています。

「ハリケーン・ヘクター」から「台風16号」の可能性

中部太平洋ハリケーンセンターの予想進路図に筆者加筆
中部太平洋ハリケーンセンターの予想進路図に筆者加筆

上の図は、中部太平洋ハリケーンセンターが発表したヘクターの予想進路図です。今後やや北寄りに進みながらも、日本時間14日(火)には日付変更線(東経180度)をまたぐ予想となっています。

日付変更線を越えると、それまで「ハリケーン」と呼ばれていたものが「台風」と呼ばれるようになります。こうした擾乱を「越境台風」といいます。

なぜ名称が変わるのかというと、海域ごとに予報や分析を担当する管轄機関が異なるためです。東経180度より西の北太平洋上では「台風」、東では「ハリケーン」と呼ばれています。 (※台風は最大風速が秒速17メートル以上、ハリケーンは33メートル以上の熱帯低気圧をさします)

越境台風の例

1994年ジョンの経路図 (出典元:wikipedia)
1994年ジョンの経路図 (出典元:wikipedia)

同じように日付変更線を渡ったハリケーンには、以下のようなものがあります。

2015年ハリケーン・ハロラ(台風12号)、2014年ジェネビーブ(13号)、2006年ローク(12号)、1997年オリーバ(19号)や、1994年ジョン(20号)などです。特にハロラとオリーバは、越境後に日本に上陸した非常に珍しい台風となりました。

このように越境台風は、過去に少なからず発生していますが、通常のハリケーンは日付変更線を渡る前に北寄りに進むために、冷たい海上で衰弱してしまうことの方が多いようです。

ヘクターは今年最長寿

8日のヘクターの衛星画像 (出典元:NOAA)
8日のヘクターの衛星画像 (出典元:NOAA)

ヘクターは、同心円状のきれいな雲の形と大きめの目が特徴的です。このような形状のハリケーンは「環状ハリケーン」と呼ばれ、多くの場合長寿で、なかなか衰退しないことが多いのです。

実際ヘクターは、8月1日に東部太平洋上でトロピカルストーム(風速17メートル以上)へと発達してから、すでに12日以上が経過しています。通常の寿命は5~6日程度ですから、すでに2倍も長く存在していることになるのです。

これまでの世界の最長寿記録1994年のジョン(台風20号)で、30日間も勢力を保ち続けました。

ヘクターはジョンと似た経路をたどっていることから、今後何日間海上を漂い続けるのか気になるところです。

NOAAの資料をもとに筆者作成
NOAAの資料をもとに筆者作成
NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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