新型コロナ 自宅療養中の過ごし方、注意したい異変、問い合わせした方が良い症状の目安、同居者の感染対策
2021年8月現在、新型コロナウイルス感染症患者の爆発的な増加に伴い、感染者でも自宅療養となる方が増えています。
原則として、自宅療養になるのは重症化リスクの低い軽症者ですが、医療体制が逼迫している地域では中等症でも入院できずに自宅療養を余儀なくされるケースもあるようです。
また、デルタ株が拡大している現状では、重症化リスクのない人でも重症化することがあります。
自宅療養中、どういったポイントに注意すれば良いのでしょうか。
新型コロナの自宅療養者が激増している
現在、新型コロナの第5波を迎えている日本国内で、入院患者数が過去最高を記録していますが、自宅療養者も激増しています。
例えば、東京都では8/4時点で「自宅療養」および「入院・療養等調整中」の人が24000人を超えています。
全国でも45000人を超えており、1ヶ月前と比べて11倍となっているとのことです。
自宅療養者でも重症化することがある
すでに関東では9割、関西でも6割を占めるとされるデルタ型変異ウイルスは、重症化リスクが高くなると言われています。
従来の新型コロナウイルスと比べて、
カナダ:入院リスク2.2倍、ICU入室リスク3.87倍、死亡リスク2.37倍
シンガポール:酸素投与が必要、ICU入室、死亡のリスクが4.9倍
アルファ型と比べて、
イギリス:入院リスクが2.61倍
スコットランド:入院リスクが2.39倍
と報告されており、これまで重症化リスクが低かった世代も重症化する可能性があります。
特にワクチンを接種していない人はこれまで以上に警戒しなければなりません。
自宅療養する期間は?
新型コロナと診断され入院ではなく「自宅療養」となった場合も、人にうつす可能性があります。
具体的には発症3日前から発症5日後くらいまでは特に感染性が強く、軽症の方でも最大10日目まで人にうつす可能性があると言われています。
これを踏まえて自宅療養の期間は、
・発症から10日経過かつ症状軽快から72時間経過
となっており、最短で発症から10日間までは自宅療養となります。
この期間が過ぎ保健所の指示があるまでは人との接触を避けるため外出はしないようにしましょう。
自宅療養中の健康管理
新型コロナウイルス感染症の初期症状は風邪やインフルエンザと似ています。
典型的には、
・発熱
・咳
・だるさ
・食欲低下
・息切れ・息苦しさ
・痰
・筋肉痛
・嗅覚障害・味覚障害
などの症状の頻度が高いとされます。
こうした症状の有無について、1日2回はご自身で確認し、1日1回は保健所に連絡するようにしましょう。
診断時点では無症状であった人でも、経過中に発熱や咳などの症状が出現することがあります。
この場合、自宅療養期間は症状の出現時を起点として最短10日となります(ずっと無症状の場合は検査日を起点とします)ので、症状が出たことを必ず保健所に伝えるようにしましょう。
自宅療養中に注意したい異変、問い合わせした方が良い症状の目安
自宅療養中に新型コロナの病状が悪化することがあります。
特に注意すべきなのは、発症から約1週間前後です。
この時期に「息切れ・息苦しさ」が強くなると、新型コロナが悪化している可能性があります。
安静時には特に症状がなくても、体を動かしたあとに「息切れ・息苦しさ」が続く場合は、なるべく早く保健所にその旨を伝えるようにしましょう。
ただし、新型コロナの呼吸不全は「幸せな低酸素症"happy hypoxia"」と呼ばれるほど、体内の酸素が極度に低下していても自覚症状が強く現れないことがよくあります。
自験例でも、入院先が決まるまで自宅療養をしていた自覚症状のない方が、いざ入院してみると「重症」の基準を満たすほど体内の酸素が欠乏している状態だった、というような事例を複数経験しています。
自宅療養中の方の中から、こうした自覚症状に乏しい低酸素症の方を正しく適切なタイミングで見つけることは非常に難しいというのが正直なところです。
強いて言えば、パルスオキシメーターという血中の酸素濃度(酸素飽和度)を測定する医療機器は症状が乏しい低酸素症の方も早期に見つけることができると考えられます。
現在は多くの保健所が自宅療養となった際にパルスオキシメーターを貸し出してくれるようですので、こまめに測定して酸素飽和度の数値を確認するようにしましょう。
筆者も編集委員になっている厚生労働省「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」では、この酸素飽和度 96%未満を中等症Iと定義し原則入院としており、また93%以下を中等症IIと定義しており酸素投与が必要な状態としていますが、現在は医療体制の逼迫により、すぐには入院ができない状況です。
本来は酸素投与が必要なほど悪化した状態では、デキサメタゾンなどのステロイドを使用することでさらなる重症化を防げる可能性があります。入院ができない場合も、訪問診療などでこれらの薬剤を処方してもらえる可能性があります。
また、東京都は自宅療養者が在宅で酸素療法を行うための酸素濃縮装置を確保しているとのことです。
いずれにしても酸素濃度が低下した時点で保健所に連絡をするようにしましょう。
その他、稀ではありますが血栓塞栓症や不整脈など突然の体調不良も起こりえますので、「突然の強い胸痛や頭痛」「脈が飛ぶ」などの症状が出現した場合はすぐに保健所に連絡するようにしましょう。
なお、発熱や倦怠感、咳などの症状は軽症の人でも長く続くことがありますので、程度が変わらず続いているだけであれば新型コロナの自然の経過のことが多いです。
気になる症状があれば定期報告の際に保健所に報告・確認するようにしましょう。
同居者の過ごし方・居住環境の整え方
新型コロナは飛沫感染または接触感染によって広がりますが、特に3密(密閉・密集・密接)の環境で広がりやすいことが分かっています。
自宅は3密の環境になりやすい場であり、家庭内感染は最も多い感染ルートになっています。
家庭内で自宅療養者が出た場合に、同居者が新型コロナに感染せず安全に療養できるための工夫が必要です。
気をつけるべきポイントは、
・自宅療養者と同居者が接する時間をできる限り減らす
・家庭内の設備や物の、自宅療養者と同居者との共用を可能な限り避ける
・こまめな換気と手洗いを心がける
です。
新型コロナと診断され自宅療養となった方(自宅療養者)は、同居者との接触を避けるためにできるだけ個室で過ごすようにしましょう(どうしても個室が確保できない場合は、同じ部屋の中にいる家族はマスクを着用し、十分な換気を行うようにしましょう)。
自宅療養者の行動範囲は最小限とし、同居者が自宅療養者の個室に出入りする時には、マスクを着用し、自宅療養者と接する前後で手洗いを行うようにしましょう。
洗面所やトイレについても自宅療養者専用が望ましいですが、普通は無理だと思いますので、共用する場合は十分な清掃と換気を行うようにしましょう。入浴は家族の中で最後に行うのが望ましいでしょう。
自宅療養期間はリネン類(タオル、シーツなど)、食器、歯ブラシなどの身の回りのものも共用しないようにしましょう。 洗濯は自宅療養者と同居者のものを一緒に行っても問題ありません。
食事は自宅療養者と同居人とは別々の部屋でするようにしましょう。自宅療養者が使用した食器や箸、スプーンなどは通常の洗浄で問題ありません。食事で出たゴミは密封し捨てるようにしましょう。
同居者は、自宅療養者となった方の様子も定期的に確認するようにしましょう。
同居者の目から見て、自宅療養者に
・顔色が明らかに悪い
・横になれない、座らないと息ができない
・肩で息をしている、ぜーぜーしている
・ぼんやりしている(反応が乏しい)
などの症状がある場合には保健所に連絡するようにしましょう。
自宅療養者の安全を確保するためには
繰り返しになりますが、現在、地域によっては入院先が確保できず本来入院が必要な方でも自宅療養を余儀なくされています。
「保健所に連絡を取りたくても連絡が取れない」「救急車を呼んでも入院先が見つからない」という事例も増えており、残念ながら自宅療養中に症状が悪化し亡くなられる事例も発生しているようです。
自宅療養者の安全が確保されていない現状は大変危険な状態です。
医療従事者や保健所もこの状況を改善すべく努力しているところですが、本来入院が必要な方が自宅療養をしなくても済むようにするためには、現在の増えすぎている感染者を減らし、本来医療を提供されるべき人が適切に医療を受けられる環境にまで戻す必要があります。
そのためには、私たち一人ひとりが、
・できる限り外出を控え人との接触を減らす
・屋内ではマスクを装着する
・3密を避ける
・こまめに手洗いをする
といった基本的な感染対策の遵守を、一人ひとりが意識するようにしましょう。
これからお盆に旅行や帰省を検討されている方もいらっしゃるかと思いますが、まだワクチン接種が行き渡っておらず、危機的な流行状況である現状においては、中止することもご検討ください。
感染症は人から人へとうつっていきます。
自分自身の感染対策は、あなたの大事な人を守ることにも繋がります。
参考:国立感染症研究所 新型コロナウイルス感染症、自宅療養時の健康・感染管理 (2020年4月2日)