平昌に続いて人工降雪機による雪を使った北京オリンピックが開幕
北京オリンピックの開幕
第24回冬季オリンピックが、令和4年(2022年)2月2日から中国の北京市中心部と市郊外の延慶区、北京市に隣接する河北省張家口市(高速鉄道で約1時間)の計3地区で始まりました(2月20日までの19日間の日程)。
2月2日はカーリングとリュージュで、3日はアイスホッケー、アルペンスキー、スキージャンプ、フリースタイルスキーが加わります。
そして、4日には開会式が行われる予定です。
北京市の面積は、1万6000平方キロ以上と、東京都の約7.5倍(23区では約26倍)もあります。
東京都と長野県を合わせた面積より広く、これに埼玉県を加えた東京埼長県(仮称)なるものがあれば、北京市を上回ります(図1)。
冬季オリンピックは、第24回の北京まで、21都市で開催されています(3都市が2回開催)。
開催都市を緯度別に見ると、一番高緯度開催は第17回大会のリレハンメル(ノルウェー)の北緯61度、一番低緯度開催は第18回大会の長野の北緯37度です(表)。
北京は、長野、米・スコーバレー、韓国・平昌間に次ぐ緯度が低い都市です。
緯度が高い都市での冬のオリンピック開催であっても、地球温暖化の影響で、年によっては雪不足となります。
まして、低緯度の都市での冬のオリンピック開催は、いつも雪不足の心配がつきまとい、雪不足対策が大変になります。
雪の少ない年に開催となると、人工降雪機をフル稼働して氷の粒をばらまいたり、遠くの高山から雪を運んでこないと競技ができなくなるからです。
しかも、これは、気温が低いという条件付きです。
気温が高いと、人工降雪機で雪を作るそばから雪が溶けてゆき、ドライアイスと塩を混ぜるなどの対策も必要になってきます。
北京の気候
広大な北京市ですが、市の中心部の2月の平均気温は0.6度、月降水量は2.1ミリです(図2)。
大陸の中にありますので、海辺近くの都市より降水量が少なく、一番多い7月で170.6ミリです。
冬になると晴れた日が多くなって降水量は少なくなり、12月2.5ミリ、1月2.1ミリ、2月5.6ミリと、合計で10.2ミリしかありません(タイトル画像参照)。
ということは、降雪量は冬期間合わせて10センチ程度しかなく、20センチも積もれば「大雪」と呼ばれるそうです。
図3は冬季オリンピックが開催された長野・札幌と北京の気温と降水量の比較です。
11月から1月の北京の月平均気温は、札幌の月平均気温とほぼ同じですが、2月以降は、札幌や長野より急速に暖かくなってゆきます。
そして、月平均降水量は、どの月も、長野や札幌よりかなり少ない値です。
北京市付近は、中国中部の長江流域から用水路で水を引くほど水資源が貴重な地域ですが、2月までは気温が低いことを利用して、大量の水を使って人工雪を作っています。
韓国がオリンピック誘致をしていた平成23年(2011年)2月16日、国際オリンピック委員会の視察団が平昌を訪れていますが、この直前に記録的な大雪が降っています。
この豪雪の中、国際オリンピック委員会の視察団が訪問する競技場までの主要道路226キロメートルを、3日で除雪し、優秀な競技環境をアピールしています。
しかし、開催が決まってからの近年は、雪が少なすぎる年が続いており、平成30年(2018)年のオリンピックのときも人工降雪機が大活躍をしました。
平昌は人工降雪機を使わなくて良い年もありますが、北京はどの年も雪はあまり降らないことから、最初から人工降雪機の使用を考えている大会です。
「自然雪より雪質は良い」という関係者もいますが、多くの選手の練習は自然雪の多い場所で行われています。
人工降雪機の雪という、慣れていない雪での競技となることで、番狂わせがあるかもしれません。
あるいは、人工降雪機による均質な雪の状態から、極限の記録がでるかもしれません。
タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。
図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図2の出典:気象庁ホームページ。
図3の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。
表の出典:インターネット公開資料をもとに筆者作成。