1号、2号をとばして令和3号の卵が発生か 日本の南海上は夏の気配
赤道付近の熱が極地方へ
太陽の光が斜めから入射する場合と、真上から入射する場合では、単位面積当たりの光の量が違います。高緯度の国では、太陽が斜めに当たり、時には全く当たらないこともあって気温が上がりません。>これに対し、赤道付近では太陽がほぼ真上から照り付けるため、強く暖められます。
このため、南北方向の気温差が大きくなる傾向があるのですが、南北方向に流れる大気の循環によって、熱が赤道付近から極地方へ運ばれ、極端な温度差にはなりません。
ただ、この南北方向に流れる大気の循環は、地球の自転の影響によって、複雑になります(図1)。
まず、赤道付近で上昇した空気は、ハドレー循環で中緯度に運ばれ、そこで下降することで熱を赤道付近から中緯度に運ばれます。
中緯度に運ばれた熱は、偏西風の蛇行という東西方向の波打つ流れによって、さらに中緯度から高緯度に運びます。
そして、高緯度から極地方へは極循環によって熱が運ばれます。
北半球、南半球も事情は同じです。
その結果、赤道付近では、北半球の中緯度で下降した空気が赤道付近の戻ろうとする北東貿易風と、南半球の中緯度で下降した空気が赤道付近の戻ろうとする南東貿易風がぶつかって熱帯収束帯と呼ばれる雲が多い場所ができます。
ここが、台風の卵の発生場所です。
熱帯収束帯
熱帯収束帯の位置は、いつも赤道上ではありません。
北半球は冬のときは、南半球に移動し、北半球が夏になると赤道より北に移動してきます。
そして、熱帯収束帯の雲の中から熱帯低気圧が発生し、台風に発達するものもあります。
今冬も、熱帯収束帯は南半球にありましたが、春になると赤道をこえて北半球に移動してきました。
雲が少なかった北半球の赤道域も雲が増え、現在は、熱帯収束帯上に3つの雲の塊があります(タイトル画像参照)。
現時点では、南シナ海にある雲の塊は循環がみられませんが、カロリン諸島にある雲の塊と、マーシャル諸島にある雲の塊は循環がみられ、ともに熱帯低気圧になっています(図2)。
この熱帯低気圧が最大風速が17.2メートル以上となって台風になるかどうか、台風になったとして小笠原諸島などに影響するかどうかは、まだまだ先の話であり、現時点ではわかりません。
日本列島は移動性高気圧に覆われ、しばらくは爽やかな春の晴天のところが多くなっていますが、日本の南海上はすでに夏の気配です。
令和3号
カロリン諸島にある熱帯低気圧か、マーシャル諸島にある熱帯低気圧が台風になれば、「令和元年の台風3号」となります。
令和元年に入って最初の台風ですが、1号、2号を飛ばして3号です。
気象庁では、平成31年4月19日に気象庁ホームページにおける元号表記についてという文書をだしています。
これによると、台風番号については、 5 月 1 日以降に発生した台風は「平成 31 年」からの続き番号とするとしています。
平成31年は、これまでに台風が2個発生しています。
このため、元号が令和に変わり、最初に発生した台風は「令和元年台風第3号」と命名され、「令和元年台風1号」と「令和元年台風2号」が欠番になります。
台風の種々の統計は、平成31年と令和元年を合わせて、「2019年の台風」として行われますので、元号変更による急減はありません。
台風の統計がはじまった昭和26年(1951年)からですので、元号が変わったのは、平成と令和の2回だけです。
ただ、平成が始まったのは平成元年(1989年)1月8日で、台風1号の発生は1月18日です。
したがって、昭和64年(1989年)の1週間の間には台風が発生しておらず、昭和64年(1989年)の台風発生数0個、平成元年(1989年)の台風発生数32個ということになります。
つまり、元号変更を挟んでということは、今回が初めてのことです。
タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100(一生付き合う自然現象を本格解説)、オーム社。
図2の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。