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2024年2月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポート

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
画像は筆者作成

2024年1月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポートに引き続き、世論調査会社グリーン・シップの「GS選挙調査センター」が全国規模で毎日実施している情勢調査のデータ提供を受け、その他の調査機関の数字なども加味した内閣支持率や政党支持率の分析をお送りします。

国会審議の影響を受け、内閣支持率は2月に下落へ

内閣支持率(2023年1月〜)、週次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用
内閣支持率(2023年1月〜)、週次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用

内閣支持率は年末で底を打ちいったん持ち直していましたが、2月、支持率は再度下落基調となりました。予算審議が本格化するなかで、衆議院予算委員会などでの政治とカネの問題の追及が続いたことに加え、子ども・子育て支援金における国民負担の問題などのトピックが注目されたことなどが、影響をしたとみられています。政治倫理審査会の開催における岸田首相自らが出席する判断など、首相がリーダーシップを発揮しようとしたタイミングは複数ありましたが、いずれも国会審議における日程闘争には影響を与えたものの内閣支持率の改善にまで繋がったとは言えない状況です。昨年末の底にまで届いていませんが、内閣支持率の調査において「わからない」と答えている人が少なくなる(内閣が長ければ、内閣に対する評価はいずれ定まってくるので、時間の経過とともに「わからない」が減ることは一般的)なか、不支持が高止まりする流れとなっており、この状況を打破する動きは見えません。

令和6年度予算の審議は、舞台を参議院に移して行われますが、衆議院と違い時間的な制約がそこまでない参議院予算委員会では更に政治とカネの問題の追及が進む可能性もあります。衆議院の政治倫理審査会では新たなトピックは生まれずやや空振りな感じが否めませんでしたが、参議院側で新たなトピックが生まれるかどうか、政治倫理審査会において多くの議員が出席した場合に答弁が安定するかどうかなどが3月の支持率に影響を与える要素と言えます。

予算委員会での追及姿勢などで立憲民主党の支持率が上昇

政党支持率(2023年1月〜)、週次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用
政党支持率(2023年1月〜)、週次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用

立憲民主党の支持率が上昇しています。若い世代にも満遍なくリーチしているグリーン・シップ社の世論調査では、40〜50代が回答のボリュームゾーンとなっていることから、この世代を支持層とする日本維新の会の支持がやや高めに出る傾向がありました。昨年春には日本維新の会と立憲民主党とは支持率におよそ2倍の差がありましたが、日本維新の会は支持をやや減らしつつあるのに対し、立憲民主党は昨年秋の臨時国会以降支持を増やすことに成功し、2月18日の週には、日本維新の会11.6%に対し、立憲民主党11.2%と、ほぼ横一線まで並びました。こちらも3月の参議院予算委員会の舞台で立憲民主党の追及姿勢がどれぐらい高まるかによっては、3月中の「逆転」もありえるでしょう。

維新の支持率が何故下がっているのか

「近畿ブロック」における政党支持率(2023年1月〜)、週次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用
「近畿ブロック」における政党支持率(2023年1月〜)、週次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用

日本維新の会は強い支持基盤のある近畿ブロックを中心に支持率の下落がみられます。これが大阪万博に関連する支持減であれば、今後の通常国会において、大阪万博の開催是非などの議論が、日本維新の会の支持率を大きく左右することになるとみられます。また、全国に擁立した候補予定者の動きも不十分との声が党内執行部では聞こえており、次期衆議院議員選挙も大阪を中心に和歌山、奈良、兵庫で一定の票を確保するところまでは間違いないとみられますが、年初の京都市長選挙では候補者の推薦撤回を強いられたこともあり、それ以上の躍進ができるかどうかは不透明な状況です。

一方、日本維新の会は前回の衆議院議員総選挙でも選挙期間中に大幅に票の上積みを実現したように、無党派層をターゲットにして選挙ムードの高まりを受けて浮揚する戦略を採っているものとみられます。現に昨年の統一地方選挙では、統一地方選挙の時期に合わせた空中戦などのキャンペーンを行った結果、大きく支持率を上昇させました。これまでの勝ちパターンを踏襲して浮動票狙いの戦略を前提にしているのであれば、最終盤の伸びしろを考慮する必要があり、現時点での下落基調は(選挙前の)調整段階とみることもできます。

3月の内閣支持率・政党支持率の展望

国会議事堂
国会議事堂写真:イメージマート

ここまで述べた通り、3月は予算審議の舞台が参議院に移ります。参議院の予算審議は持ち時間のカウントが片道方式(答弁の時間は含まれず、議員の質問の時間のみカウントされる方式)ですから、衆議院予算委員会で整理されたここまでのトピックに関して、より踏み込んだ質問がされると考えられます。また、立憲民主党は参議院にも多くの論客がいることや、野党会派の持ち時間配分などから、立憲民主党の支持率は更に上がるとみられます。

また、衆議院補欠選挙(4月16日告示予定)の執行が確定する3月16日以降は、国政補欠選挙に関連する報道も多くなるとみられます。国政補欠選挙に関する情勢については別の記事で解説しますが、島根1区では与野党対決、長崎3区では自民党が不出馬の場合に、国政では初となる「立憲 対 維新」の構図となる見込みで、国政3補選で勝ち星先行(野党の2勝1敗 or 3勝0敗)となれば、内閣支持率・政党支持率ともに岸田政権はいよいよ瀬戸際に追い込まれることとなります。

選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。日本選挙学会会員。

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