青森県のローカル私鉄・弘南鉄道大鰐線 令和9(2027)年度末で運行休止を表明、事実上の廃止か
青森県の私鉄・弘南鉄道は11月27日、大幅な赤字の続く大鰐線について、令和9(2027)年度末で運行休止とする意向を表明した。弘前市や大鰐町など沿線自治体もこれに同意しており、今後協議のうえで休止時期を決定するという。
弘南鉄道は弘南線と大鰐線、二つの路線を運行しているが、沿線の過疎化や車社会の進展により経営状況が厳しく、平成25(2013)年6月には「大鰐線を平成29(2017)年3月で廃止する」との方針を示していた。この廃止方針は翌月に白紙撤回されたものの、厳しい状況は変わらず、沿線自治体との間では存廃を巡る協議が繰り返されてきた。
大鰐線はJR大鰐温泉駅に隣接する大鰐駅と、弘前市中心部の中央弘前駅を結ぶ13.9キロの路線だ。元は弘前電気鉄道という別の私鉄だったが、開業以来赤字で、弘南鉄道への移管によって一度は廃止の危機を回避したものの、相変わらず赤字が続いている。沿線には学校が多く、沿線人口もそこまで少ないわけではないが、全線に渡ってJR奥羽本線と並走しており、運賃・所要時間ともにJRに軍配が上がる。
大鰐線はJRよりも短い駅間距離を活かし、JRが拾いきれない小さな需要を拾う地域密着型の路線として営業を続けてきたものの、過疎化等により利用者数は減少。平成2(1990)年度に2,969人/日だった輸送密度は、令和2(2020)年度には390人/日と、同年度がコロナ禍の影響を受けていることを差し引いても絶望的なまでの減少だ。こうした利用者数の減少に伴い列車の減便も行われており、減便による利便性の低下がさらなる利用減を招くという負のスパイラルに陥ってしまっている。
また、設備の老朽化から脱線事故も2度起きており、もはや安全運行に欠かせない設備の更新すら難しいほど追い詰められている状況だ。弘南鉄道は長らく、弘南線の黒字で大鰐線を補う形を取ってきたが、近年は弘南線も赤字であり、このままでは比較的利用者の多い弘南線も共倒れしかねない。
大鰐線の存廃を巡っては、今年6月、バス運転士不足によりバス転換が難しいことから弘前市長が存続に前向きな姿勢を示したが、運転士が不足しているのは鉄道も同じで、鉄道の場合はさらに保線作業員の確保も問題となってくる。今回の休止という決断はこうした事情も踏まえたものだろう。
「廃止」ではなく「休止」としたのが気になるところだが、利用者数の減少を理由に一度休止された路線が復活する例は少なく、実質的には廃止と同義であろう。むしろ、手続きの都合から一旦休止として、後に正式に廃止というケースが多く、大鰐線の場合もこれである可能性が高い。
輸送密度が約400人/日という数字は、JRのローカル線の二桁に比べれば多いものの、経営基盤の小さい私鉄が独力で運行を続けていくにはかなり厳しい数字だ。沿線自治体が出資して存続という可能性もありえたであろうが、弘南線ですら赤字で設備も充分に更新できていない現状を考えれば、弘南線を残すために泣く泣く大鰐線を切り捨てるという選択も仕方のないことなのかもしれない。
11年前に廃止の話が出て以来、なんとか生き延びてきた大鰐線だが、ついにその命脈が尽きようとしている。魅力あふれる弘前の町を彩ってきた路線が失われるのはあまりに惜しいが、弘南線には大鰐線の分も存続してもらいたいものだ。