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ヤマト新クロネコマークの商標登録について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:商願2020-136724商標公開公報

「ヤマト、64年ぶりロゴマーク一新 柔和なクロネコに」というニュースがありました。

宅配便最大手ヤマトホールディングスは1日、1957年に制定以来、同社のシンボルとなってきた「クロネコ」マークを64年ぶりに一新すると発表した。

ということです(ヤマトホールディングスによるニュースリリース)。

新マークは親猫の足のデザインが2本になる等ややシンプルにはなっているもののそれほどイメージが変わるわけではありません(タイトル画像参照)。個人的にはモダンで良いデザインだと思います。同時に発表された「アドバンスマーク」(下図参照)に変更になるのかと勘違いして「前の方が良かった」と言ってる人もいるように思えますが、「アドバンスマーク」は宅配事業以外の新事業に使用するマークのようです。ヤマトのアイデンティティを明確にしつつ、宅配事業にとらわれないイメージを出しており、これまた良いデザインと個人的には思います。

出典:ヤマトホールディングス ニュースリリース
出典:ヤマトホールディングス ニュースリリース

さて、商売柄、商標登録がどうなっているか気になるところですが、タイトル画像で既に明らかなように、昨年の11月5日にアドバンスマーク等と共に既に出願されていました。まだ審査待ち状態です。

一般に、重要な商標を発表する時には、第三者による勝手出願を防ぐために、発表前に商標登録出願しておくことが鉄則です(出願の後先は時刻ではなく日付で判断されるので、前日までに出願しておく必要があります)。ここで、たとえば、ゲームのタイトルとか車のニューモデルのように発表前にネタバレしたくない商標については、あまり早く出願してしまうと、発表前に特許庁から出願が公開されてしまいますので、発表の数日前あたりに出願しておくことが適切です。今回のケースは、発表より大部前に出願公開されていましたが、その時は、単なるロゴのバリエーションで、まさか全面刷新とは思わず騒ぐ人がいなかったということなのでしょう。

余談ですが、ヤマトと商標と言えば「宅急便」がヤマト運輸の登録商標であることを、「魔女の宅急便」の作者が知らずにタイトルに使ってしまった話は有名と思います(一般名称は「宅配便」)。この件は、映画化の際にヤマト運輸が正式なスポンサー契約を締結するなどしてうまく丸く納めています(参照Wikipedia記事)。ヤマト側としては、強硬に商標権を主張しても世間の反感を買うだけですし、かと言って完全スルーすると商標の稀釈化(普通名称化)を助長してしまうことになるので、賢明なやり方だったと思います。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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