育児と介護が重なる「ダブルケア」は人生で2度やってくる!?
育児と介護が重なる「ダブルケア」。政府も調査を行うなど、社会問題として認識されています。そのダブルケアが、人によっては50代以降に再びやってくるかもしれません。
■「ダブルケア」とは?
一般に、ダブルケアというと、育児をしているママやパパが、親などの介護まで同時に担う状態をイメージするのではないでしょうか。晩婚・晩産化が進んだこともあり、育児期と親の要介護期が重なるケースも増えています。
『育児と介護のダブルケアの実態に関する調査(平成28年)』(内閣府)によると、「ふだん育児をしている」「ふだん介護をしている」の両方を選択した人(=ダブルケアを行っている人)は約25万人いて(女性約17万人、男性約8万人)、8割が30~40代です。ここでいう育児の対象は、乳児から未就学児までを指しています。
同データによると、育児を行っている人の約2.5%、介護を行っている人の約4.5%がダブルケア状態にあります。しかも、「有業」(パートなども含む)でダブルケアを行っている人が、女性で半数弱、男性で9割超います。
■もう1つの「ダブルケア」
一方で、私や同年代の相談者、友人など、周囲の人の間では、別の形のダブルケアも見られます。
親や義理の親、配偶者、シングルの兄弟姉妹の介護
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・同居や近居している孫の育児
・別居の娘の里帰り出産の産後ケア
私も先月、ダブルケアの現場を垣間見ました。
従姉は、寝たきりの伯母をプロの手を借りて在宅介護でほぼひとりで見ていたのですが、従姪が里帰り出産となったため、泊まり込みヘルプに行ったのです。出産やその前後で家を空ける間、伯母を見ているというのが私の役回りでした。
伯母は昨年夏に急に起き上がれなくなって、入退院ののち、自宅に戻っていました。入院中は認知症の症状が出ていましたが、退院後は落ち着いていました。体調がよいとテレビを楽しみ(聞いているだけですが)、私のこともわかっていました。
私が関われたのは、飲水や食事(ほとんど食べなかったのですが)、室温や湿度管理、体調の変化がないか定期的に声がけや様子を見る、といった程度です。食事の際にはベッドを20度に起こし、褥瘡予防の自動体位変換機能付きのベッドだったので、横になっているときは必ずそれを作動するなど、簡単なことだけでした。
それでも、ひとりで見ているときは「伯母の命を預かっている」ことに緊張し、何度も様子を見に部屋へ行きました。伯母はひ孫の誕生の翌日、亡くなりました。
■50代以降のダブルケアは男性も多い
3世代同居の家で孫やひ孫が生まれる、介護をしている家で娘が里帰り出産をする、といった例は周囲でも見られます。『育児と介護のダブルケアの実態に関する調査(平成28年)』(内閣府)でも、ダブルケアを行っている人のうち、「50歳以上」の割合は女性で約6.1%、男性で約15.3%です。50歳以降は、女性だけでなく、男性がダブルケアに携わるケースも少なくありません。
親や配偶者などの介護と孫の育児に追われるじいじ、ばあば。中には、30代、40代でダブルケアを経験した人が、再びダブルケアを経験するケースもあるようです。ひ孫の育児まで関われば、3度目、4度目のダブルケアもあるかもしれません。
ましてや、団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、病院不足、介護施設不足から、介護は在宅中心になると見込まれています。しかも、2025年は始まりにすぎず、その後、2040年頃まで高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)は右肩上がりに上がると予測されています。介護、そしてダブルケアに関わるケースは今後、もっと増えるかもしれません。
■50代の離職は貧困化に直結?
若い時期であれば、体力的には、ダブルケアをしながら働くことも可能かもしれませんが、50代以降だとなかなかきつくなります。そのため、ダブルケアの現場に直面して、仕事を辞めてしまう人もいることでしょう。
しかし、本来、50代、60代は老後資金を貯めるラストチャンスともいえる重要な時期でもあります。この時期に機会費用が発生する(得られたはずの収入が得られない)のは大きな損失でもあり、一歩間違えば貧困化へまっしぐら、ともなりかねません。
ダブルケアに限らず、想定外のリスクに備えるためにも、人生後半に向けて家計面で余力を残すことや、または、どのような状況になっても収入が得られる仕組みを準備しておくことも大事ですね。
【参照】『育児と介護のダブルケアの実態に関する調査(平成28年)』(内閣府)
【関連拙著】「親の入院・介護が必要になるときいちばん最初に読む本」