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ブロックバスター・トレードがもうすぐ成立するが、あのビッグ・ネームは主役ではなく、むしろお荷物!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
5年前の入団会見。左はGM、右は監督(いずれも当時)DEC12,2013(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 シアトル・マリナーズとニューヨーク・メッツの間で、ブロックバスター・トレードが成立するようだ。ケン・ローゼンタール(ジ・アスレティック)、ジェフ・パッサン(ヤフー・スポーツ)、ジョン・ヘイマン(ファンクレッド)をはじめ、多くの記者が報じている。どうやら、週明けに正式発表が行われるらしい。

 彼らの報道が正しければ、トレードの内容はこうだ。メッツはロビンソン・カノーエドウィン・ディアズに加え、2000万ドルを得る。マリナーズは交換に、ジェイ・ブルースアンソニー・スウォーザックジャーソン・バティスタジャレッド・ケレニックジャスティン・ダンの5人を獲得する。

筆者作成
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 このなかのビッグ・ネームは、間違いなくカノーだ。けれども、メッツがカノーを欲したわけではなく、マリナーズがディアズにくっつけて引き取らせたというのが正解だろう。

 トレードで動く7人中3人は、100万ドル以上の契約が残っている。ブルースは3年3900万ドル(2018~20年)のうち2年2800万ドル、スウォーザックは2年1400万ドル(2018~19年)のうち800万ドル、カノーは10年2億4000万ドル(2014~23年)の半分だ。マリナーズからメッツへ移る2000万ドルを含めると、メッツが負担する総額は、トレードの前後で3600万ドル→1億ドル、マリナーズは1億2000万ドル→5600万ドルとなる。

 それぞれの計算は、メッツが3600万ドル-2800万ドル-800万ドル+1億2000万ドル-2000万ドル=1億ドル、マリナーズは1億2000万ドル-1億2000万ドル+2800万ドル+800万ドル+2000万ドル=5600万ドルだ。

 3人と比べれば、他の4人の年俸は、ほとんど問題にならない。ディアズが年俸調停権を得るのは来シーズンのオフで、FAになるのは2022年のオフだ。バティスタは2021年のオフと2024年のオフ。ケレニックとダンは、まだメジャーデビューしていない。

 メッツからすると、新進気鋭のクローザーをこれから4年保有でき、ベテランの二塁手も、あと5年は無理としても、今後2年くらいは働ける見込みだ。それらに対し、1億ドル+α(ディアズの年俸)を払う。一方、マリナーズは、将来に向けて若い3人を手に入れ、カノーに支払うはずだった金額を半分以下に減らせる。ケレニックは今年のドラフト全体6位、ダンは2016年の全体19位だ。

 カノーは全球団に対するトレード拒否権を持っているが、これを破棄するようだ。再建モードのマリナーズに残るより、メッツでポストシーズンをめざす方がいいと判断したのだろう。また、ブルースの契約には5球団に対するトレード拒否権があり、その球団は毎年変更できる。前はマリナーズも含んでいたが、現在はボルティモア・オリオールズとともに外れていて、代わりにデトロイト・タイガースとマイアミ・マーリンズが加わっている。この変更は、ブルースには裏目に出た気がする。ちなみに、引き続きリストに載っている3球団は、オークランド・アスレティックス、タンパベイ・レイズ、トロント・ブルージェイズだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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