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ロシア軍が再び巡航ミサイルで大量攻撃、Kh-101(空中発射型)に加えてカリブル(艦船発射型)が増大

JSF軍事/生き物ライター
ウクライナ空軍司令部より2024年11月28日迎撃戦闘撃墜戦果

 11月28日にロシア軍がウクライナに対し大規模な長距離ドローン・ミサイル攻撃を実施、11月17日以来の亜音速巡航ミサイル(Kh-101およびカリブル)の大量攻撃となっています。なおKh-101の先代型であるKh-55巡航ミサイルの残骸も発見されており、まだ在庫があったことが判明しています。

2024年11月28日迎撃戦闘:ウクライナ空軍司令部

  • S-300地対空ミサイル×3飛来0撃墜
  • 巡航ミサイル×85飛来76撃墜
  • Kh-59/69空対地ミサイル×3飛来3撃墜
  • 敵性無人機×97飛来35撃墜62未到達

※巡航ミサイルの飛来数の内訳はKh-101(空中発射)×57飛来+カリブル(艦船発射)×28飛来。飛行速度が同じなので迎撃戦闘の混乱の中で撃墜数の内訳の判別が困難となり纏めて集計されている。

※S-300地対空ミサイルは対地攻撃運用でハルキウへの攻撃。Kh-59/69空対地ミサイルはオデーサへの攻撃。

※無人機の「未到達」は燃料切れで勝手に墜落した囮機であり、自爆機は全機撃墜で阻止率100%。

 11月28日の長距離ドローン・ミサイル攻撃は総合計で188飛来中、突破は12発のミサイルのみ(ドローンはゼロ)、迎撃率は94%となっています。ミサイルのみで計算すると迎撃率は87%です。ウクライナ防空部隊は十分な働きを続けており、11月17日や8月26日の巡航ミサイル大量攻撃時と同様の高い迎撃率を維持しています。ただし一部の突破で電力インフラへのダメージが着実に累積しています。

ロシア軍の巡航ミサイル(亜音速)の動向について

 2024年は巡航ミサイルの大規模攻撃が8月26日から11月17日までの3カ月弱の期間に間が空いており、発射を控える間に生産分を貯め込む備蓄期間だと見られます。昨年の2023年にも9月21日から12月8日までの2カ月半の空白期間があり、冬季インフラ攻撃に備えたものだと思われます。

 昨年2023年-2024年の冬季インフラ攻撃では貯め込んだ巡航ミサイルを12月29日と1月2日の2回に合計163発を発射した後は低調なものに終わっています。これに対し2024年は既に8月26日、11月17日、11月28日の3回で309発の巡航ミサイルの大規模発射を実行しています。本格的な冬が到来する直前ですが、既に昨年よりも大規模なミサイル攻撃が開始されたと見ていいでしょう。

 また重大な動きとして艦船発射型のカリブル巡航ミサイルが再び発射数を増やし始めました。ロシア海軍黒海艦隊の拠点だったクリミア半島のセヴァストポリ港がウクライナ軍によるストームシャドウ巡航ミサイルの攻撃で危険となり、ロシア本土側のノヴォロシスク港に避難してからはカリブル巡航ミサイルの大規模発射はほとんど途絶えていたのですが(時折、数発程度の発射があった程度)、黒海艦隊は疎開先のノヴォロシスク港でカリブル巡航ミサイルの運用態勢を立て直したものと見られます。

2024年巡航ミサイル大規模攻撃(2桁以上発射)

  • 11月28日:88飛来79撃墜 ※カリブル×28
  • 11月17日:106飛来90撃墜 ※カリブル×数不明、纏まった規模
  • 08月26日:115飛来99撃墜 ※カリブル×28
  • 07月08日:30飛来26撃墜 ※カリブル×14
  • 06月22日:14飛来11撃墜 ※カリブル×4
  • 06月14日:10飛来7撃墜
  • 06月01日:49飛来35撃墜 ※カリブル×10
  • 05月30日:11飛来7撃墜
  • 05月26日:12飛来12撃墜
  • 05月08日:52飛来39撃墜 ※カリブル×4
  • 04月27日:28飛来21撃墜 ※カリブル×8
  • 04月11日:20飛来16撃墜
  • 03月31日:14飛来9撃墜
  • 03月23日:29飛来18撃墜
  • 03月22日:40飛来35撃墜
  • 03月21日:29飛来29撃墜
  • 02月15日:14飛来10撃墜 ※カリブル×2
  • 02月07日:32飛来29撃墜 ※カリブル×3
  • 01月23日:15飛来15撃墜
  • 01月13日:12飛来7撃墜
  • 01月08日:24飛来18撃墜
  • 01月02日:73飛来62撃墜 ※カリブル×3
  • 12月29日:90飛来87撃墜 ※2023年
  • 12月08日:19飛来14撃墜 ※2023年

※巡航ミサイルのカウントはKh-101(空中発射)、カリブル(艦船発射)、イスカンデルK(地上発射)、Kh-69(空中発射)。

※主力はKh-101で次点がカリブル。他の種類の巡航ミサイルは1回の使用で数発ずつで大規模発射例がない。

※2024年現在の巡航ミサイルの主力はKh-101で、これは2023年から変わらず。2022年はカリブルの方がKh-101より発射数が多かった。

※Kh-55巡航ミサイルの残骸

※ウクライナ国家非常事態庁が回収したロシア軍のKh-55巡航ミサイルの残骸。既に後継機のKh-101に生産ラインは切り替わっており在庫はとっくに尽きたものと思われていたが、今でも時折残骸が見付かっており、まだ在庫に残っている模様。先月の10月18日にも回収されている。それより前の非常事態庁のKh-55発見報告例は2023年5月1日

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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