益虫テントウは可愛い殺し屋④=アカホシテントウ
4~5月頃、梅の木の小枝に不気味なトゲトゲの物体がびっしりと張り付いているのをよく目にする。しかし、見た目だけで「害虫が大発生」と思い込み、この物体を削ぎ落したりしてはならない。この物体は、梅の木の守り神「アカホシテントウ」の幼虫や蛹の集団なのだ。
梅の木の幹に、虫の卵のような茶色の小さな玉が大量に張り付いていることもある。この玉は梅の害虫のタマカタカイガラムシだ。玉状になるのはメスの成虫で、オスの成虫は翅のあるアブラムシのような姿だ。タマカタカイガラムシが大量発生すると、梅の木が枯死することもあるという。アカホシテントウは、このタマカタカイガラムシを食べまくる。
特にアカホシテントウの幼虫の食欲はすさまじく、タマカタカイガラムシのメス成虫に次々に襲いかかり、固そうな外殻を食い破って丸い穴を開け、中身を食べてしまう。
アカホシテントウのトゲだらけの幼虫の姿は、いかにも有能なハンター、殺し屋にふさわしい。しかし、その恐ろしげな姿のせいで、害虫だと誤解されて駆除されることもあるかもしれない。益虫か害虫かは、見た目の印象とは逆のことも多いので注意しよう(益虫は肉食なので、たいてい見た目が悪い)。
5月末から6月初めに羽化するアカホシテントウの成虫には、ちょっと不思議な美しさがある。このテントウの赤い紋は、輪郭が次第にぼやけてくる微妙なグラデーションになっており、赤い木の実をガラスの中に閉じ込めたような透明感がある。羽化後間もない時期の成虫は、梅の葉裏で集団を作ることがあり、透き通った赤い紋が列を成すと実に美しい。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)