中国で23歳女性がピンクに染めた髪を非難され自殺
中国で、23歳の女性が自ら命を絶つ悲劇が起きた。彼女はうつ病を患っていたが、その原因は、大学院の合格を病床の祖父に報告に行った際に、髪の毛をピンクに染めていたことだった。ネット上の心無い誹謗中傷が、前途有望な若い女性を死に追いやった。
大学院合格の喜びを祖父に伝え...
女性の名は鄭霊華さん。鄭さんの死が明らかになったのは、2月19日。彼女の友人による書き込みがきっかけとなり中国メディアが報じた。鄭さんは1月23日に死亡したという。
鄭さんが注目されたのは半年余り前の2022年7月。大学院の合格通知を持って病床の祖父に見せに行った際の写真がネットで話題になった。ピンク色に染めた長い髪の鄭さんが、優しい表情で、ベッドに横たわる祖父の顔を覗き込んでいる光景。祖父が合格通知を開いて鄭さんと一緒に見ている写真もあり、鄭さんは、「お爺ちゃんに見てもらいたくて大学院を目指した」と記していた。
ネット上で多くの感動を呼んだ。だが、好意的な反応だけではなかった。髪を染めていた鄭さんに対する非難や中傷が巻き起こった。「飲み屋の女のようだ」「夜の女」「不謹慎」「年寄りと若い女の恋愛」「アクセス稼ぎのためのでっち上げ」...。罵詈雑言は尽きなかった。
日本語の歌も...
鄭さんは自身のSNSで、祖父に毎日学校の送り迎えをしてもらったなどと明かしていた。幼くして母親を失った鄭さんにとって、なんでも世話を焼いてくれる祖父は母親代わりで、心の支えであったという。自分が大学院を目指したモチベーションの一つが祖父の存在で、「お爺ちゃんに大学院生になった自分を見てもらい、自慢に思って欲しかった」と明かしている。
鄭さんは、ネット暴力を受け始めてから、自身のSNSで“反撃”を続けた。教育大学を卒業した彼女は、大学院も教育系の華東師範大学に進み音楽を専攻、SNSでは見事なギターの弾き語りを何度も披露している。教育者としての資質を疑う、などといったネット民の中傷に反論するためだったのかもしれない。中には英語や日本語の歌さえあった。
どんな人も色で決めつけられるべきではない
鄭さんのSNSから察せられる人物像は、明るく闊達、開放的で才能溢れる女性だ。そんな彼女さえ、心が折れてしまい、うつ病を患った。
鄭さんは、ネット暴力を受け始めてからおよそ1か月後、こう記している。
「どんな人も色で決めつけられるべきではない。生きているうちに、私は赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の人生と髪の色を体験できる」
鄭さんには、結局、その思いを叶える機会は訪れなかった。
前途有望な若者の人生を台無しにし、夢を砕き、命さえ奪うネット暴力は何も中国に限ったことではない。鄭さんの無念さに一人でも多くの人に思いを馳せてもらいたいと考え、この事件を紹介した。