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子どもが発熱したときの対応と感染対策 新型コロナの可能性を踏まえて

高山義浩沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科
(写真:ロイター/アフロ)

現在、全国ほとんどの地域で新型コロナウイルスが流行しています。とくに、現在流行しているデルタ株は、子どもへの感染性も高まっており、周囲への感染力も増していることから、子どもたち相互で感染が拡がり始めています。

夏休み中であっても、学習塾や学童クラブでの集団感染が発生しており、間もなく二学期が始まることから、今後は学校内での感染が増えてくる可能性があります。そうすると、家庭内でお子さんだけが感染しているという状況も想定しなければなりません。

ここでは、お子さんに発熱や咳などの症状を認めるときの対応、家庭内での感染予防について、質問にお答えする形式でお話しします。

―― 子どもが発熱したとき、受診して検査を受けさせるべきですか?

お子さんに発熱や咳などの症状を認めるとき、受診させるべきか悩まれると思います。受診先が見つからなかったり、見つかっても検査結果が出るまでに時間がかかったりすることも考えられます。必ずしも受診しなければならないわけではありませんが、周囲への感染予防を心がけていただく必要があります。

とくに、流行地への旅行後、感染者との接触が明らかな場合、家庭内に高齢者など重症化リスクのある方がいらっしゃる場合、すでに家庭内に複数の発症者がいる場合などは、早めに検査を受けられることをお勧めします。

受診するのが難しいときには、市中にあるPCR検査所を利用することもできます。一般に唾液の提出なので、既定の検体採取のカップを入手できれば、お子さん自身が検査所を訪れる必要はありません。また、郵送で受け付けているところもあります。

―― 抗原定性検査で、感染しているかどうかを判断できますか?

ドラッグストアなどで販売されている抗原定性検査キットを使ってみるという方法もあります。鼻から1~2センチぐらい奥に入れて検体を採取するもので、(お子さんの協力さえ得られれば)一般の方でも安全に実施することができます。

唾液検体によるPCR検査と鼻腔検体による抗原定性検査(アボット社)を行ったところ、陽性一致率は56.2%であったとの研究があります(Sood N, Shetgiri R, et al. PLoS One.2021. DOI:10.1371/journal.)。症状のない小児の陽性一致率 51.1%に対して、症状のある小児 64.4%であり、抗原定性検査は感染力のある小児の早期発見には有用だが、PCR法と比すれば検出漏れは多いとしています。

すなわち、抗原定性検査キットにより、お子さんが感染しているかどうかの判定をするには限界がありますが、症状のあるお子さんに実施することで、感染性があるかどうかの目安を得ることはできます。

ただし、製品ごとにばらつきがあるため、診断に代わるものではないことをご留意ください。陽性の結果が出たときは、そのことを連絡したうえで、医療機関を受診するようにしてください。

―― 検査結果が陰性であれば、学校や塾に通わせることができますか?

PCR検査や抗原定性検査の結果が陰性であったとしても、感染が否定されるわけではありません。感染者との接触があったなど、とくに新型コロナウイルスに感染したと考えられるときは、症状を認めた日をゼロ日目として10日が経過し、かつ、解熱剤を使わずに24時間が経過するまでは、学校や塾、クラブ活動などを休ませるようにしてください。

一方、感染者との接触も明らかでなく、検査でも陰性であった場合には、必ずしも厳格に10日間を休ませる必要はありません。ただし、症状を認めなくなって24時間が経過するまでは、できるだけ外出を控えるようにしてください。

ところで、沖縄県で臨床をしていると、検査結果が出る前や、陰性の結果が出たあとに、学校を休ませて祖父母に預けているケースを多く経験します。ワクチンを接種していても感染することがありますし、高齢者では重症化する恐れもあります。

発熱や咳などの症状のあるお子さんを祖父母や持病のある方に預けないようにしてください。感染が明らかになってから慌てても遅いです。こうして重症化する高齢者が少なくありません。

―― 子どもの検査結果が陽性だった場合には、入院して隔離になるのですか?

自治体によって方針が異なりますが、ご自宅での療養継続となることが多いと思います。呼吸が不安定であったり、嘔吐や下痢などで十分な水分摂取ができていないときは、保健所や診断した医師の判断により入院となります。

また、高齢者や持病がある方など、重症化リスクのある同居者がいらっしゃる場合には、宿泊施設での療養をお勧めすることがあります。希望される場合には、健康観察の担当者に伝えてみてください。ただし、入院ではないので、ご両親のどちらかに付き添いをお願いすることになります。

―― 感染した子どもを自宅で見守るとき、どのような症状に注意すべきですか?

一般的には、新型コロナウイルスの子どもにおける病原性は明らかに低く、これまで国内で死亡例は出ていません。ただし、新型コロナウイルスに限らないことですが、乳幼児は感染症に弱く、乳児では重症化することがあります。

自宅で療養しているお子さんの状態を、ご家庭で定期的に観察してください。高い熱が出ているだけで慌てる必要はありませんが、食べられない、寝られない、遊べないなど、いつもと様子が違って心配な場合には、かかりつけの医師など医療機関に相談してください。

―― 緊急に受診させなければならないこともあると思います。どのように判断したら良いのでしょうか?

とくに、以下のような症状を認めるときは、なるべく早く医療機関を受診するようにしてください。

□ 手足を突っ張る、眼が上を向くなど、けいれんの症状がある。

□ ぼんやりして視線が合わないなど、意識障害の症状がある

□ 顔色が悪い(土気色)、唇が紫色をしている(チアノーゼ)。

□ 呼吸が早く、息苦しそうにしている。ゼーゼーしている。

□ 半日以上おしっこが出ていない。嘔吐や下痢が続いている。

なお、夜間・休日で受診すべきか判断に迷ったときは、子ども医療電話相談事業(♯8000)に電話することで、小児科医師や看護師に相談することもできます。

―― 子どもを自宅療養させるとき、どのように感染予防を行ったらよいですか?

まず、お子さんが療養する部屋を決めてください。子ども部屋があるなら、引き続きそこで療養させても良いですが、独立したトイレがあるなど療養に適した部屋があるなら、そこに移しても構いません。できるだけ自室から出ないようにしていただくのが一番の感染対策となります。

部屋を出ざるをえないときは、まず、アルコールで手指を消毒させます。そして、できるだけマスクを着用させてください。部屋の外では、あちこちを触らせないことも大切です。可能なら、本人が通ったあとの場所は、部屋全体の空気が入れ替わるぐらい換気をしましょう。

―― 食事は、どのようにすればよいですか?

できるだけ、ひとりで食べさせてください。ただ、小学校の低学年以下であれば、ご両親の付き添いが必要でしょう。窓を開けて部屋の換気をしながら、サージカルマスクを着用して介助してください。なお、本人が箸やスプーンを差し入れた食事には、他の家族が口にしないように注意しましょう。

子ども部屋ではなく、キッチン近くで食べさせるしかないときは、まず、他の家族が食事を終わらせて、キッチンから退室させましょう。そして、換気扇を回したり、窓を開けたりと換気を行いながら、サージカルマスクを着用した方が介助しましょう。

なお、介助する方の感染が確認されているのであれば、このような感染者同士の感染予防は不要です。マスクもいりません。相互にウイルスが行き来することで状態が悪化することはありません。ただし、他のご家族に感染していない方がいる場合には、室内にエアロゾルを飛散させないよう、できるだけマスクを着用しておく方が安全です。

―― トイレやお風呂は、どのようにすればよいですか?

トイレなど共用する場所では、感染したお子さんが使用したあとに、手で触った可能性がある場所をアルコールで消毒してください。一方、床の消毒は不要です。足跡から感染することは、ほとんど考えられません。

入浴の順序は最後となるようにします。浴室消毒は、お子さんの使用直後にするよりは、そのまま放置しておいて翌日にする方がウイルス量が減っているので安全です。浴室内はアルコールで拭くよりは、洗剤を使って流してしまう方が簡便だと思います。つまり、通常の清掃で構いません。念のため、清掃する方はマスクを着用してください。

―― 衣類などリネン類からの感染予防はどうすれば良いですか?

タオルやシーツ、衣類については、ビニール袋に入れて3日経過するまで、お子さんの部屋に置いておきます。これだけ放置すれば、おおむねウイルスの活性は失われています。さらに、通常の洗剤で洗濯すれば感染性は失われるので、使用後の衣類などを消毒する必要はありません。

―― ここまでの対策を徹底すれば、家庭内での感染が予防できますか?

お子さんが自立して隔離を保てるならば、ここまでの対策を徹底することで予防できる可能性は十分にあります。しかし、感染した小さなお子さんを密着してケアしながら、ご両親が自らを守っていくことには限界があります。

また、新型コロナウイルスの周囲への感染は、44%が発症前に起きているとの報告もあります(Xi He, et al. Nat Med.2020, 26, 5, 672–675. doi: 10.1038/s41591-020-0869-5)。つまり、症状に気づいてから対策をしても、すでに感染している可能性があります。

感染対策の多くがそうなのですが、完璧なものではありません。いくつもの対策を積み重ねながら、リスクを減らしていく感覚が必要です。とくに、お子さんの感染に気づく前からできる予防対策として、大人たちがワクチンを接種しておくことが大切です。

―― 子どもに新型コロナウイルスのワクチンを接種すべきでしょうか?

デルタ株への置き換わりとともに、子ども同士の感染が生じやすくなったとはいえ、多くの場合、周囲の大人たちが子どもへの感染経路となっています。子どもを守るためには、まず、同居する家族、学校や塾の先生、保育従事者など、周囲の大人たちから積極的にワクチンを接種いただくことが重要です。

12歳以上であれば、ワクチンを接種することができます。ただし、子どもは感染しても多くが軽症であり、副反応のリスクに比して、ワクチン接種により得られる恩恵は大人と比べると少ないです。

国外での報告では、ワクチン接種後の発熱や接種部位の疼痛などの副反応の出現頻度が、子どもでは比較的高いことが報告されています(Frenck Jr RW, et al.N Engl J Med. 2021 in press. doi: 10.1056/NEJMoa2107456.)。本人が十分に理解しないままに接種して、副反応を経験させないことが重要です。

もちろん、基礎疾患のあるお子さんなどワクチンが必要な方もいますし、重要なイベントを控えているなど、希望があれば接種できるようにしておくことは必要です。

沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科

地域医療から国際保健、臨床から行政まで、まとまりなく活動。行政では、厚生労働省においてパンデミック対策や地域医療構想の策定支援に従事してきたほか、現在は規制改革推進会議(内閣府)の専門委員として制度改革に取り組んでいる。臨床では、沖縄県立中部病院において感染症診療に従事。また、同院に地域ケア科を立ち上げ、主として急性期や終末期の在宅医療に取り組んでいる。著書に『アジアスケッチ 目撃される文明・宗教・民族』(白馬社、2001年)、『地域医療と暮らしのゆくえ 超高齢社会をともに生きる』(医学書院、2016年)、『高齢者の暮らしを守る 在宅・感染症診療』(日本医事新報社、2020年)など。

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