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クリンスマン韓国代表監督 解任へ 大韓サッカー協会強化委員会「勤務態度」などで不信任案

(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

韓国代表ユルゲン・クリンスマン監督更迭への流れが決定的となった。

15日16時20分、大韓サッカー協会(KFA)のファンボ・グァン技術本部委員長による記者対応で発表されたもの。この日の11時から同協会は戦力強化委員会を実施。そこで出た結果は「クリンスマン監督不信任」だった。

ファンボ技術委員長が明らかにした主な不信任理由は次のとおりだった。

「積極的に多様な選手を起用しようという考えがなかった」

「先のアジアカップ準決勝でヨルダンとの対戦は2度めだったにもかかわらず戦術的準備が不足」

「代表チームは試合内容や競技内容でファンに議論されるべきなのに、監督の勤務態度(本人住居のある米国での滞在期間が長い)が問題される状況が続くべきではない」

「選手のマネジメント能力不足」

技術強化委員会には監督人事の決定権がなく、この日の会議の決定は大韓サッカー協会チョン・モンギュ会長に報告され、最終的な決定が下される。現地メディア「スポータルコリア」は「更迭は不可避」などと報じている。

90年イタリアW杯でのクリンスマン氏
90年イタリアW杯でのクリンスマン氏写真:アフロ

現役時代、ドイツ代表FWとして1990年イタリアW杯優勝などの実績を有するクリンスマン監督は、指導者としてはドイツ代表監督(2004年~06年)、バイエルン・ミュンヘン(08~09年)、アメリカ代表(2011年~16年)、ヘルタ・ベルリン(2019~2020年)を経た後、2023年3月から韓国代表を率いていた。

写真:ロイター/アフロ

同国監督としては、17試合で8勝6分3敗、総得点は35総失点は16という結果だった。

2023年3月24日 コロンビア 2:2

2023年3月28日 ウルグアイ  1:2

2023年6月16日 ペルー 2:2

2023年6月20日 エルサルバドル 1:1

2023年9月8日 ウェールズ 0:0

2023年9月13日 サウジアラビア 1:0

2023年10月13日 チュニジア 4:0

2023年10月17日 ベトナム 6:0

2023年11月16日 シンガポール(5:0

2023年11月21日 中国 3:0

2024年1月6日 イラク 1:0

初陣コロンビア戦にて。勝てない時期が続いた
初陣コロンビア戦にて。勝てない時期が続いた写真:ロイター/アフロ

―2023 AFCアジアカップカタール―

グループステージ(E組)

2024年1月15日 バーレーン 3:1

2024年1月20日 ヨルダン 2:2

2024年1月25日 マレーシア3:3

ノックアウトステージ(16強)

2024年1月31日 サウジアラビア 1:1(PK戦 2-4)

ノックアウトステージ(8強)

2024年2月3日 オーストラリア 1:2

ノックアウトステージ(4強)

2024年2月7日 ヨルダン 0:2

常に「戦術不在」を批判され続けた。本人はブラジルW杯でアメリカをベスト16に導いたが、その際にも「戦術練習がほとんどない」という評判が上がり、これが韓国にも伝わっていた。

それゆえか、就任後初勝利まで6試合を要した。

この過程で、就任第4戦でエルサルバドルに引き分けた段階(2023年6月)で、不安の声が大きくなった。なにせ同じ月のAマッチウィークで日本が6-0で勝利した相手だったからだ。

エルサルバドル戦の後日、本人から異例の記者会見開催の申し出があり「攻撃的サッカーを好む。これが定着するまでは少々時間がかかる」といった発言があった。

その後アジアカップではベスト16、8の対戦で劇的な勝利を挙げたものの、続く準決勝ヨルダン戦で0-2の敗北。結局はアジアカップベスト4での敗退が引き金となった。同大会では5人の選手に一度も出場機会が与えられず。これも批判の対象となっていた。

アジアカップ準決勝後にソン・フンミンを慰めるクリンスマン氏
アジアカップ準決勝後にソン・フンミンを慰めるクリンスマン氏写真:ロイター/アフロ

また、「本人が韓国に滞在しない」点がその批判に火を注ぐかたちとなった。国籍を有するアメリカの自宅への滞在時間が長く、会見をリモートで行うことも。これには「韓国で暮らさない限り、韓国サッカーの状況が分かるわけがない」といった意見が挙がっていた。

のみならず代表メンバー発表がプレスリリースのみで終わり、監督からの説明がないということも幾度かあった。今回のアジアカップ終了後も、一度韓国に寄った後、2日で米国行き。大韓サッカー協会の大会総括の会議に参加しない点が報じられていた。

また、この日の決定(事実上の解任)に向けたムードの高揚は日本とは大きく違うものだった。サッカー記者出身で、テレビ中継時に試合解説を行うなど影響力のあるYouTuberたちが各自のチャンネルで批判運動を展開。また最大手ポータルサイト「NAVER」もテキスト記事と同等に動画投稿のコンテンツをスポーツページの上位に配置しているため、この影響力が非常に高い。元々批判的姿勢にあったネット媒体やネットユーザーたちも時を同じくして声を大きくしていった。「解任時の違約金はどうなるのか?」といった点も論じられていった。

さらにこれを既存メディアが“吸い上げ”、YouTuberたちがテレビ出演し、意見を主張。広く一般層にまで「解任論」が拡散していった。本来的には余計なことだが、保守与党の「国民の力」系で大邱市長を務めるホン・ジュンピョ氏(2017年大統領選候補)までもがクリンスマン監督の解任を主張するまでになった。

すべてインターネットが基盤。1996年頃から韓国でサポーター組織が立ち上がった時期も「PC通信」というネット掲示板のシステムが母体となり、活動が盛り上がった経緯がある。30年近く経った現在もこの影響から「オンライン」から熱くなっていった解任劇でもあった。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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