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金総書記が3年連続で「2月名節」宮殿参拝を欠席 父親の誕生日も建国記念日も党創建日も参拝しない不思義

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
後継者成り立ての頃の金正恩総書記と父・故金正日前総書記(右)(北朝鮮の画報から)

 昨日(2月16日)は金正恩(キム・ジョウン)総書記の父・金正日(キム・ジョンイル)前総書記の誕生日である。北朝鮮はこの日を「2月名節」又は「光明星節」と呼称し、国家を挙げて慶祝している。

 この日に労働党幹部らは死身が安置されている錦繍山宮殿を訪れ、弔意を表し、国民は「金正日銅像」に参拝、献花するのが北朝鮮の習わしである。

 今朝の朝鮮中央通信の報道によると金徳訓(キム・ドクフン)総理、趙甬元(チョ・ヨンウォン)党組織指導部部長、崔龍海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長、李炳哲(リ・ビョンチョル)党軍事委員会副委員長の4人の政治局常務委員を筆頭に党・軍幹部らが揃って宮殿に参拝していたが、唯一、肉親である金総書記だけが欠席していた。

 調べてみると、金総書記は急死した父から権力を継承し、最高指導者になった2012年から2021年までは父親の誕生日には必ず参拝していた。そのうち2回(2013年と2016年)は李雪主(リ・ソルジュ)夫人を連れ立っていた。しかし、連続10回の参拝を最後に2022年からは欠席が続いている。

 欠席理由は定かではない。外遊し、国内を留守にしていたわけでもないし、健康状態が優れなかったわけでもない。現に一昨年も、昨年も翌日の17日にはなんと、内閣と国防省職員による対抗試合を観戦していた。昨年のサッカー観戦には「ジュエ」と呼ばれている娘も一緒だった。

「太陽節」と称されている4月15日の祖父の金日成(キム・イルソン)主席の誕生日も昨年は欠席し、これまた2月に続き、愛娘を連れて、内閣と国防相職員の「太陽節」記念サッカー試合を観戦していた。仮に、今年も欠席となると、2年連続となる。

 先代への畏敬の尺度を図るには命日の「墓参り」をみれば、一目瞭然だが、度々父の命日(12月17日)の参拝を欠かしている。例えば、昨年は参拝していたが、一昨年の2022年は2017年に続き欠席していた。祖父の命日(7月8日)も2018年に1度サボったことがあった。

 北朝鮮の主な国家記念日には「光明星節」と「太陽節」以外にも9月9日の建国記念日と10月10日の労働党創建日があるが、2014年から過去10年間の金総書記の参拝をチェックしてみると、建国記念日に顔を出したのは建国70周年の2018年と2021年の2度だけで、後は全部欠席していた。また、労働党創建日の参拝も党創建70周年の2015年と2018年と2019年以外は姿を現していなかった。

 仮に、今年も建国記念日と党創建日に参拝しないとなると、建国記念日は父親の誕生日と同様に3年連続、党創建日は5年連続で欠席ということになる。

 三代目の金総書記が「共和国の民族歴史から『統一』、『和解』、『同族』という概念自体を完全に削除しなければならない」と述べ、南北融和の象徴であった開城工業団地や金剛山観光施設を解体するなど父親の業績を無効にする言動を続けているのは周知の事実である。

 こうした複雑な思いから参拝を躊躇っているのか、それとも今年40歳になったのを機に「自分の天下」、即ち「金正恩時代」を一層明白に印象付けるため意図して参拝をサボタージュしているのかどちらかである。どちらにしても、多忙が理由でないことだけは明らかだ。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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