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クオリファイング・オファーを申し出られたFAの動向は、前田健太にも影響を及ぼす

宇根夏樹ベースボール・ライター
今年のポストシーズンで、ヒョンジン・リュは4試合に先発 Oct 24, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 11月2日、7人のFAがクオリファイング・オファー(QO)を申し出られた。今オフのQOは年俸1790万ドル。今シーズンの年俸上位125人の平均額だ。

筆者作成
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 ロサンゼルス・ドジャースは、ヤズマニ・グランダルヒョンジン・リュ(柳賢振)にQOを申し出た。ドジャースからは、彼ら以外にも、マニー・マチャドブライアン・ドージャーライアン・マドソンらもFAになったが、彼らはシーズン途中に移籍したため、QOの対象ではない。シアトル・マリナーズからFAになったネルソン・クルーズのように、過去にQOを申し出られたことのある選手も対象外だ。

 グランダルはQOを断るだろう。「前田健太が暴投で与えた1点は、相手のリードを広げたのみならずリーグ優勝の行方を左右するかも。なぜなら」でも書いたとおり、キャッチングには難があるものの、フレーミングはうまく、打席ではスイッチ・ヒッターとして、3年続けて20本以上のホームランを打っている。今オフのFA市場に出ているなかでは、トップクラスの捕手だ。また、今月で30歳の年齢は、FAとなった他の捕手よりも若い。例えば、ウィルソン・ラモスは31歳、ジョナサン・ルクロイマット・ウィータースマーティン・マルドナードの3人は32歳だ。ブライアン・マッキャンは来年2月に35歳を迎える。

 リュはQOを受け入れ、残留する可能性が高そうだ。今シーズンは防御率1.97を記録したが、89.1イニングを投げただけ。これまでも故障が多く、規定投球回をクリアしたのは、メジャーリーグ1年目の2013年しかない。しかも、今オフのFA市場には、リュよりも人気を博しそうな先発左腕が少なくない。間違いなくQOを断るであろうパトリック・コービンダラス・カイクルの他にも、J.A.ハップがいて、そこにポスティング移籍が濃厚な菊池雄星(埼玉西武ライオンズ)が加わる。

 前田健太にとって、グランダルの退団は――QOを断った後にドジャースと再契約することもあり得るが――マイナスにならないようにも思える。今シーズン、グランダルがマスクをかぶっていた時の防御率4.58だったが、オースティン・バーンズの時は2.31だった。

 ただ、グランダルとバッテリーを組んだのは78.2イニングで、バーンズは46.2イニングだ。サンプルが大きく違い、相性の良し悪しは判断しかねる。ちなみに、昨シーズンはグランダルと92.1イニングで防御率4.09、バーンズとは42.0イニングで防御率4.50だった。

 一方、リュが残留した場合、前田にとっては、ローテーション枠を争うライバルが増える。エースのクレイトン・カーショウは、残り2年6500万ドル(2019~20年)の契約を自ら破棄する権利を持っていたが、FAにはならず、ドジャースと3年9300万ドル(2019~21年)の延長契約を交わした。ウォーカー・ビューラーリッチ・ヒルのローテーション入りも、まず確実だろう。残るは2枠。リュがいなくても、候補は多い。前田、アレックス・ウッドフリオ・ウリーアスロス・ストリップリング。さらに、ケイレブ・ファーガソンデニス・サンタナといった若手も控える。

 なお、昨オフにQOを申し出られたFAは、9人ともそれを断った。彼らの動向については「クオリファイング・オファーの明暗。チームメイトだった2人は、一塁手が8年契約、三塁手はQOの半額未満」に書いた。今オフ、7人がQOを受け入れるか断るかを決めるデッドラインは、11月12日の東部時間午後5時だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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