前田健太が暴投で与えた1点は、相手のリードを広げたのみならずリーグ優勝の行方を左右するかも。なぜなら
ロサンゼルス・ドジャースの3勝2敗で迎えたナ・リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第6戦は、ミルウォーキー・ブルワーズが7対2で勝利を収め、決着は第7戦に持ち越された。
前田健太は3点ビハインド(2対5)の7回裏から登板し、ワイルドピッチ(暴投)によって1点を失った。前田がこの回を無失点に抑えていても、試合はブルワーズが勝っていた可能性が高い。ただ、この1点は大きな意味を持つ。
3点差のままであれば、クレイグ・カウンセル監督は、8回表あるいは9回表からジョシュ・ヘイダーを起用していただろう。けれども、カウンセル監督は8回表のマウンドにコルビン・バーンズを送り、(8回裏にもう1点を追加したこともあって)最後まで投げさせた。
強力なブルペンのなかでも、ヘイダーの存在は際立っている。レギュラーシーズンの55登板は、81.1イニングを投げて防御率2.43、奪三振率15.82(143奪三振)。ポストシーズンに入ってからは、6登板で7.0イニングを投げて失点はなく、対戦した打者25人の約半分、12人から三振を奪っている。このシリーズでは3試合に登板し、第1戦は5回表から7回表までの3イニングを封じた。ほぼ三冠王のクリスチャン・イェリッチが不振に陥っていることを踏まえると、現時点ではブルワーズのベスト・プレーヤーかもしれない。
第5戦と第6戦に登板しなかったヘイダーは、中3日で第7戦に臨む。再び、3イニングを投げることもできる。
ただ、ブルワーズのリードを4点に広げたワイルドピッチの責任は、前田よりも、捕手のヤズマニ・グランダルにあった気がする。バウンドした球を、捕球できなかったにしても前に弾いていれば、三塁走者のヘスス・アギラーは本塁突入をとどまっていただろう。アギラーの足は速くなく――遅いと言った方が正確か――メジャーリーグのキャリアを通して、盗塁を試みたことすら一度もない。
グランダルはキャッチングに難があり、ここ5シーズンのうち、リーグ最多のパスボール(捕逸)が3度(最多タイを含む)。このスパンのパスボール55度は、両リーグで最も多い。先日、「捕手の厄日!? 1イニングに、パスボール、打撃妨害、エラーを記録。昨年の同じ日も、今年とは違う捕手が」でも書いたとおり、このシリーズではそれが顕著に出ていて、第1戦のパスボール2度に続き、第3戦にも記録している。
そもそも、その前にグランダルが正しい判断をしていれば、ワイルドピッチが起きた時の状況は、2死二、三塁ではなく2死一、二塁だったはずだ。二塁打と敬遠四球、三振で1死一、二塁となった後、続く打者の打球は力なく三塁側に転がり、駆け寄って拾った前田が一塁へ送球した。この時、一塁へ投げるように指示したのはグランダルだ。前田は走者に背を向けていた。ただ、二塁にいたアギラーは、足の遅さに加えてスタートもよくなく、三塁へ投げていれば、アウトのタイミングだった。一、二塁なら、ワイルドピッチでもパスボールでも、ホームインされることはまずない。
ドジャースとしては、早めにリードを奪い、ヘイダーの(効果的な)出番を作らないことが、第7戦の鍵になりそうだ。ドジャースはシリーズ3試合で先制点を挙げているが、いずれも1点に過ぎず、追いつかれるか逆転されている。
なお、第7戦はドジャースも、ヘイダーに勝るとも劣らぬ投手をブルペンに待機させる。ヘイダーと同じ左腕のクレイトン・カーショウだ。第5戦に先発したカーショウは7イニングを投げていて、第7戦に登板した場合、ヘイダーよりも短い中2日となる。だが、昨年のワールドシリーズ第7戦では、中2日でリリーフとして登板し、4イニングを無失点に抑えた。