国内需要で勝負してきた日系企業のグローバル課題は、優秀な外国人材を中間管理職にアサインする組織づくり
豊富な日本国内の需要に向けた商品づくり、サービスレベル向上を強みとして、多くの日本企業はまさに「内需型」で成長してきました。
しかし、これから30年間、日本を含めた世界の人口構造は変化し、日本の内需型ビジネスは転換期を迎えるでしょう。日本は世界で一番早く「労働力の高齢化」「若手人材の不足」を経験する国だからです。
きめ細かいニーズを満たす仕様やサービスによって、顧客との中長期的な信頼関係を構築しながら発展してきたビジネスモデルは、コアとなる労働力が不足してくる時代に、日本人だけでは担い手がいなくなり、限界にくる可能性があります。
ところで、転換期を迎えた内需型産業が今、成長維持のために注目してきた市場が東南アジアを主とした新興国です。
国内小売業No.1の営業収益を誇るイオングループが、日本本社と中国本社とアセアン本社の三本社体制でビジネスを拡大しているのは代表例でしょう。これが最近5年間ぐらいの「グローバル人材育成」の課題でした。
しかし、これからの「グローバル人材育成」の課題は変わってきます。日本人がグローバルにでていくのではなく、日本国内又は本社にグローバルを理解できる人材が足りなくなってくる、さらには、経営を支える優秀なマネジメント層がいなくなってくるという課題です。つまり、国内に日本人以外の優秀な人を取り入れていかなければならないという課題です。しかし、国内(本社)がこれを受け入れる土壌を持っているでしょうか?
内需型企業が海外に活路を見いだす際に、最重要な課題がこれら、国内(本社)のマネジメント人材の意識変革です。
このことが多くの企業で問題視されはじめることでしょう。グローバルな経営課題や事業推進への理解の薄い本社の中間管理職層が、世界での勝負に水を差すケースが増えてくるでしょう。
いまこそ、日本の内需型ビジネスに慣れきってしまった管理職に、人種や宗教、生活習慣や行動特性の違うお客さまや従業員たちとビジネスを円滑に実施できるように、時間がかかる意識変革を進めなければなりません。しかし、これら内需型企業では、内部で人材を育成する人材マネジメントを主流としてきたため、外部からマネジメント候補を採用して、即戦力として活用することが苦手です。
その結果、マネジメント人材の不足。特に、中間管理職の不足が、新興国マーケットで活躍する企業のビジネス拡大のボトルネックになります。「本社を無視して活動した方が効果がでる」というのが新興国マーケットで勝負する優秀な駐在員の代表的な声です。しかし、本社の理解がなければ大きなお金を動かすこともできず、組織としての強みも生かすことができないため、だましだまし活動しているというのが実態でしょう。
いま日本企業に必要なグローバル人材課題は、これら本社の中間管理職層の育成です。
多数派を占める日本人管理職の意識変革をしつつ、今後のマーケットで迫力あるビジネスを展開できる外国人材を管理職登用できるレベルまで組織力を高めることが重要です。
これらの課題解決のための処方箋は3つあります。
第1に、管理職手前の若手社員のうちに、コア人材には良質なグローバルビジネス体験をさせること。
第2に、現地採用を含めた外国人材が、本社でキャリアデザインできるキャリアパスを提示してあげること。
そして第3に、なによりも内なる国際化、つまり、本社機能(人材)のグローバル対応力の強化が重要です。
第1の若手人材には、新興国マーケットでリアルなビジネスを早いうちに経験させる異動や海外出張の機会を創ることが重要です。
しかし、内需型企業ではなかなか良質な経験ができる業務を創りだすことができません。
そこで、敢えて教育研修として実践的なグローバルビジネスの疑似体験をさせるという企業も増えてきています。
第2の本社以外の外国人材へのキャリアパス提示のためには、管理職以上の人事制度を統一していくことが有効です。
グローバルローテーションができる仕組みを導入することを検討したいものです。
第3の本社機能(人材)のグローバル対応力を高めるという課題は、一番やっかいで本質的な問題です。
内需型の日本企業では、本社機能を担う人材に良質な海外体験をさせることが難しいというが実態です。
特に、管理部門の人材には、早い段階から海外でのビジネス体験を敢えてさせるという計画的な人材育成が、将来の内需型企業の発展の基盤づくりに重要になってくるでしょう。
東京に本社があるとなかなか気づけない課題だと思います。本社機能の移転も含めた今後の企業成長シナリオを経営者は描き、それらを支える人材を早い段階から先見性のある人事部門が育成する。ここに日系企業成長のポイントがあると思っています。