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今春あちこちで騒動になったミツバチ大集団はどこへ消えたのか

天野和利時事通信社・昆虫記者
引っ越しの途中、街中で休憩していたニホンミツバチの集団。すごく小さい集団です。

 ミツバチは、春に新女王が誕生すると、古い女王が巣内の働き蜂の半分ほどを引き連れて引っ越しをするという。この行動は「分蜂(ぶんぽう)」と呼ばれるが、その際にできる巨大なミツバチ集団も、分蜂と呼ばれることがある。

 集団の規模は何千匹にもなることが多く、引っ越しの途中休憩の際に、街中の目立つ場所にこの集団が出現するとローカルニュースなどで取り上げられ、ネット上で大騒ぎになったりする。

 養蜂で活躍するミツバチの大半はセイヨウミツバチで、しっかり管理されている群れの場合、人工的に分蜂が進められるので、街中にセイヨウミツバチの分蜂が出現することは少ないようだ。

 ただ、最近は都心のビルの屋上や学校などで養蜂が行われることも多いので、セイヨウミツバチの集団が話題になるケースも増えつつあるのかもしれない。

 一方、主に自然界で生活しているニホンミツバチ(セイヨウミツバチに比べ小型で黒っぽい)は、元の巣が人里に近い場合、街中で分蜂の際の大集団を形成することが時々ある。

 こうした街中の大集団は、しばらくすると姿を消し、新しい安住の地(大木の洞など)に落ち着くという。

 しかし、自然界で目にするミツバチの巣は、ほとんどがニホンミツバチのものであり、昆虫記者はこれまで、セイヨウミツバチのものを見かけたことはない。それはなぜなのか。

この木の洞からミツバチがブンブン飛び出してきた。
この木の洞からミツバチがブンブン飛び出してきた。

今年横浜市で見つけたミツバチ(恐らくニホンミツバチ)の巣。勇気を出して巣に大接近(うそです。望遠レンズで恐る恐る遠くから撮っています)。
今年横浜市で見つけたミツバチ(恐らくニホンミツバチ)の巣。勇気を出して巣に大接近(うそです。望遠レンズで恐る恐る遠くから撮っています)。

 実はセイヨウミツバチは人の手を借りずに野生で生き延びることが極めて難しいのだ。ミツバチの最大の敵はスズメバチだと言われるが、外来のセイヨウミツバチは悲しいことに、日本のスズメバチに対抗する有力な手段を持たない。

 これに対し、ニホンミツバチは侵入してきたスズメバチを集団で包み込み、筋肉を震わせることで集団(蜂球という)の中の温度を50度近くまで上げ、スズメバチを熱中症のようにして殺すことができるという。

 ニホンミツバチの巣は、都会の公園にもある。昆虫記者は、墨田区の公園や、文京区本郷の東大の敷地内で巣を見つけたこともある。分蜂を是非見たいという人(あまりいないと思うが)は、春にそんな巣の近くを探してみるといいかもしれない。

(写真は特記しない限り筆者=昆虫記者=撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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