佐々木大地五段(24)3期連続で王位戦リーグ入り決定 予選決勝で渡辺明三冠(35)に勝利
1月7日。東京・将棋会館において王位戦予選2組決勝▲佐々木大地五段(24歳)-△渡辺明三冠(35歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は17時48分に終局。結果は75手で佐々木五段の勝ちとなりました。
佐々木五段は見事に大敵を降して予選突破。前々期、前期に続いて、3期連続での王位戦リーグ入りとなりました。
木村一基王位に挑戦するのは誰か?
1月6日。東京の鳩森八幡神社では将棋堂祈願祭、および将棋会館では指し初め式がおこなわれました。そのおめでたいムードの中、ニコニコ生放送では「新春祝賀会&木村一基王位祝勝会」という番組が放映されました。
これがとても新年らしいというか、木村王位の人柄が反映された愉快な企画でした。その中でゲストとして鈴木大介九段が登場しています。
鈴木九段は最近、麻雀最強戦で優勝したことでも話題になりました。
鈴木九段は1974年生まれの45歳で、木村王位の1歳下です。竜王戦と棋聖戦ではタイトル挑戦の経験はありますが、まだ獲得したことはありません。番組中、鈴木九段はこう発言していました。
鈴木「木村王位に触発されてがんばったら、麻雀のタイトルが取れて(笑)。ちなみに王位リーグも入りましたんで、今年は私が行きますよ!」
鈴木「何かの記事でナメちゃん(行方尚史九段)がね、『木村の次は俺だ』って書いてあったから(笑)。他にいるだろうと思って(笑)」
【参考記事】
将棋の行方八段、九段昇段「木村王位の最年長記録を抜く可能性がある棋士は自分だけだと思っている」(「スポーツ報知」2019年11月14日)
鈴木九段が史上最年長でのタイトル初獲得をかけて、その記録保持者である木村王位に挑戦すれば、大変な盛り上がりを見せることでしょう。
また一方で、王位戦史上最年少でリーグ入りを果たした藤井聡太七段が挑戦権を獲得すれば、それはもちろん王位戦史上最年少の挑戦者ということになります。
佐々木五段、堂々の完勝で3期連続リーグ入り
本局もまた、王位リーグ入りを争う重要な一番です。
渡辺明三冠は現在の8大タイトル戦のうち、5つを制しています。ただし他の3つについては、番勝負まで進んだことがありません。
1つは2017年度にタイトル戦に昇格した叡王戦。これは現在本戦トーナメントのベスト8まで勝ち進んでいます。ベスト4進出をかけた準々決勝は1月9日におこなわれます。その相手というのが広瀬章人八段。年末にはA級順位戦で対戦して、この先は王将戦七番勝負を戦う相手でもあります。勝ち進んでいる棋士はしょっちゅう当たるという一例でもあるでしょう。
もう1つは名人戦。1月4日と指し初め式前の異例の早い日程でおこなわれたA級7回戦では稲葉陽八段を相手に勝利を収めました。
名人挑戦権獲得の可能性は濃厚です。豊島将之名人(竜王)との七番勝負が実現すれば、まさに現代将棋界の頂上決戦となるでしょう。
渡辺三冠がまだ番勝負の登場していないもう1つのタイトル戦は王位戦です。現在絶好調の渡辺三冠は、来年度は一気にこの3つのタイトル戦に出場する可能性があったわけです。
佐々木大地五段は、棋王戦本戦で強豪を連破して挑戦者決定戦に進出。最後で惜しくも本田奎四段(新五段)に敗れたのが記憶に新しいところです。
新鋭にとって王位戦リーグ入りは大きな実績となりますが、佐々木五段は既に2回それを実現しています。前期は3勝2敗で惜しくも陥落となりましたが、最終5回戦で木村一基九段(後に挑戦、王位獲得)に唯一の土をつけています。もし今期も予選を勝ち抜けば、3期連続でのリーグ入りです。
渡辺三冠と佐々木五段はこれが初手合。ちなみに佐々木五段の師匠である深浦康市九段は渡辺三冠と32局対戦し、過去の対戦成績は深浦17勝、渡辺15勝と拮抗しています。
振り駒の結果、先手は佐々木五段。戦形は互いに飛車先の歩を伸ばして交換し合う相掛かりとなりました。
持ち時間は4時間。昼食休憩までに渡辺三冠が6分しか使わなかったのに対して、佐々木五段は2時間近くを使っていました。
昼食休憩後、渡辺三冠は飛車先の歩を交換した後に横歩を取って積極的に動いていきました。ただし若干無理気味だったのか、佐々木五段がうまくとがめて、リードを奪いました。
渡辺三冠は飛金交換の駒損から手をつなげようとします。対して佐々木五段は的確に指し回し、少しずつ差を広げていきました。
終盤、非勢の渡辺三冠は勝負手を繰り出して勝負と迫ります。しかし最後まで佐々木五段は正確に指し続けました。渡辺三冠が形を作ったのに対して、しゃれた手順で渡辺玉を詰め上げ、見事に大敵を降しました。このまま王位挑戦まで突き進んでも、もう誰も不思議とは思わないでしょう。
佐々木五段はこれで3期連続の王位戦リーグ入りです。今期成績は35勝15敗(0.700)。対局数、勝数でランキングトップに立っています。
一方の渡辺三冠は、このままどれだけのタイトルを制覇するのか、という勢いでしたが、王位戦に関してはここで敗退となりました。
今年度成績は29勝6敗(勝率0.829)。2位の藤井聡太七段(34勝10敗、勝率0.773)を引き離して依然勝率トップです。ただし中原誠16世名人が1967年度に達成した年間最高勝率(47勝8敗、0.855)の更新は、やはりなかなか容易ではなさそうです。
【追記】同日おこなわれた予選3組決勝▲広瀬章人八段-△阿部健治郎七段戦は、阿部七段の勝ちとなりました。