「戦争反対」。勇気あるロシアのテレビ局員「兄弟殺しをやめろ」「プロパガンダを許した自分を恥じている」
「戦争反対。プロパガンダを信じないでください。あなたはここで騙されているのです」
事件が起こったのは、3月14日の夜。ロシア最強のテレビ局、ペルヴィー・カナル(Pervy Kanal)の、夕方のメインニュース番組「Vremia(時間)」でのことだった。
ソ連時代から、何百万人もの人が見ている番組だ。
有名な司会者であるエカテリーナ・アンドレーエワさんが話していると、彼女の後ろに「戦争反対(No War)」と書かれた看板を持った女性が現れて、何かを声に出して訴えた。「プロパガンダを信じないでください。あなたはここで騙されているのです」「ロシア人は戦争に反対です」。
ウクライナとロシアの国旗が描かれた看板には、このように書かれていた。
抗議者が「戦争反対」を唱えている間、司会者は平然と数秒間話し続け、その後、チャンネルは病院の報告を急ぎ伝え、生放送を終了させたという。フランス公共放送のサイトでAFP通信が伝えた。
抗議者の権利を守るNGOである「OVD-Info」は、この女性を同局の職員であるマリナ・オヴシアニコヴァ(Marina Ovsiannikova)さんと紹介し、彼女は逮捕され警察署に連行されたと述べた。
「事件」について、ペルヴィー・カナル局は、声明で「内部調査が実施されている」と述べた。タス通信によると、この若い女性は「ロシア軍使用の信用を失墜させた」罪で起訴される可能性があるという。
現在ロシアでは、最大15年の禁固刑の可能性がある。通りを歩いていても、警官に呼び止められて、携帯を見せなければならない風景は当たり前になっている。携帯のメッセージで反政府的なものがないか、チェックしているのだ。
NGOであるOVD-Infoが以前公開した録画ビデオ(上記)で、マリナ・オヴシアニコヴァさんは、父親がウクライナ人、母親がロシア人であると説明していた。
「残念ながら、私はここ数年ペルヴィー・カナル局の下で働き、クレムリンのためのプロパガンダを作ってきました。今ではとても恥ずかしいです」と言っている。「テレビで嘘を流すことを許したこと、ロシア国民を『ゾンビ化』させたことを恥じています」
ロシア当局は、ウクライナ侵攻に関するあらゆる情報を統制しようと、残っている独立系メディアのほとんどだけではなく、TwitterやFacebookなどの主要なソーシャルネットワークをブロックしている。
彼女は上記のビデオで、以下のように訴えている(全文)。
この戦争をとめられるのは、ロシア人しかいない。まだ間に合うだろうか。
彼女は「まだ和解ができる」と言っている。しかし、ウクライナ人がロシア人を許せるとは思えないし、決別の道が揺らぐことは決してないだろう。それでも首都キエフ(キーウ)が陥落する前なら、もしかしたら、まだ間に合うかもしれない。
ロシア軍は兵站(補給)に苦労しているというが、ここ数日はめっきり攻撃の度合いが落ちて鈍っている。戦争が二週間も続いている疲れはあるだろうが、疲れを吹き飛ばす気力がない、やる気がない、士気がないのではないか、とも思わせる。
彼女の勇気は素晴らしい。釈放されるように何とかできないものか。
デモや署名活動があれば協力したい。
あるいは、彼女の勇気を称えている投稿や、釈放を訴えている投稿に「いいね」を押すだけでも、支援になるのではないだろうか。