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レジ袋有料化がより環境負荷を高めている可能性も

安藤光展サステナビリティ・コンサルタント
(写真:アフロ)

■レジ袋有料化スタートから1ヶ月

7月1日から「レジ袋有料化」が始まり、1ヶ月がたちました。7月上旬は、その是非や意味・意義が問われる報道も多くありましたが、7月下旬にはだいぶ馴染み報道はひと段落したところです。

日本に住むほぼすべての人が影響を受けるルールのため、関心が高いのかメディア報道でも6月くらいからよくシェアされたのを見聞きして、私もエコバッグを当初から持ち歩くようになりました。

すでに色々な意見がありますが、私を含めて気になる人が多そうな話題の一つに「レジ袋有料化は本当に環境のためになるのか」です。

そこで本記事では、様々な側面からレジ袋有料化とその影響についてデータを、個人と企業の社会的責任の課題としてまとめます。

■プラスチックごみ問題への対応

そもそも、なぜレジ袋が有料になったのかご存知でしょうか。もともと、プラスチックごみ問題が社会課題とされており、その対応策の一つとしてレジ袋有料化が法制化されました。経産省によれば「啓蒙・啓発」が目的だそうです。

プラスチックは、非常に便利な素材です。成形しやすく、軽くて丈夫で密閉性も高いため、製品の軽量化や食品ロスの削減など、あらゆる分野で私たちの生活に貢献しています。一方で、廃棄物・資源制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化などの課題もあります。私たちは、プラスチックの過剰な使用を抑制し、賢く利用していく必要があります。

このような状況を踏まえ、令和2年7月1日より、全国でプラスチック製買物袋の有料化を行うこととなりました。これは、普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています。

プラスチックごみ問題については、私も「スターバックスの顧客は2種類いる--それは消費者と環境だ」でも解説していますが、海洋汚染の問題として語られることが多くありました。ちなみに、環境省によれば、レジ袋は1年間に約300億枚がごみになっていると同時に、容器包装全体の量では容積で家庭ごみの6割を超えているとしています。すごい数です。有料化によっていくらかが減るだけでも効果がありそうです。

■エコバッグは本当に使われているのか

さて、レジ袋有料化にともない、実際にはみなさんはどう対応しているのでしょうか。Yahoo!ニュースの独自調査「みんなの意見」によれば、『レジ袋有料化、あなたの買い物のスタイルは?』という調査で、「エコバッグを使う:58.1%」と半数以上が有料のレジ袋を使わず持参したエコバッグを使うとしています。次点は「有料レジ袋を使う:24.8%」であり、一定の割合の方がまだレジ袋を使っています。まだルール化されたばかりというのもあり数字に納得感があります。

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別の調査も見てみましょう。調査途中ではありますが、みんなの意見で『プラスチックごみ削減、取り組んでいる?』というアンケートを実施しました。こちらはレジ袋だけではなく、プラスチックごみ全般の質問ですが、「買い物でエコバッグを利用する:62.2%」「特に気を付けていない:21.8%」(≒レジ袋を使う層)が2トップです。前述の調査と割合がほぼ同じという興味深い結果になりました。

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もう一つの調査も。博報堂キャリジョ研によれば、エコバッグの場所別利用率は「スーパー:71.3%」「ドラッグストア:45.0%」「コンビニ:38.1%」となっています。

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これらの数値から推測すると、5〜6割の人たちは意識的にエコバッグを使うようになっており、2〜3割の人たちは特に意識しないで買い物をしている、ということでしょうか。

ただ、世界(特にヨーロッパ)ではすでに禁止もしくは数年以内に禁止になる国や地域がいくつもあります。日本でも、市町村レベルでは、レジ袋提供禁止の条例が成立しています。つまり、今後数年以内に、日本でも全体ではないものの、複数の禁止地域がでてくるでしょう。それまでに、この割合がどう変化するかは注目であります。まぁ法律になれば対応せざるを得ないのですが。

■エコバッグは本当にエコなのか

エコバッグの持参率が100%近くになればプラスチックごみ問題は解決だ!と思いたいところですが、プラスチックごみ問題はそこだけではありません。エコバッグ自体の問題もあるのです。当然、プラスチックだろうが紙だろうがごみが減るのは良いことです。その施策の一つとして、今回のレジ袋有料化になったわけですが、問題はこの施策が本当に“エコ”に貢献しているのかどうか。

CSR(企業の社会的責任)・サステナビリティ界隈で話題になった話に『エコバッグやマイカップは本当に環境に優しいのか? 「エコ」な行動に隠された6つの真実』というものがあります。買い物にエコバッグを持参したりすることを環境負荷軽減のために実践している人は多いですが、やり方を間違えると逆効果になることもある、という話です。この記事では、

英国環境庁が2011年に発表したライフサイクル・アセスメント報告書によると、「地球温暖化の可能性」を使い捨てレジ袋よりも少なくするには、コットンのバッグを131回使う必要があるという。しかもこれは、レジ袋を再利用しないという前提での数字だ。

というデータが紹介されており、100回以上使えば環境負荷の“元が取れる”ということです。エコバッグ自体を作る環境コストもあるため、トータルで環境負荷を減らすにはこれくらいになってしまうのだと。ちなみに、ウィズコロナ時代では、エコバッグを衛生的に保つ必要があり、洗浄の環境負荷を考えると、モノによっては200回以上の利用がないと、エコバッグ持参のほうが環境負荷が高いという状況もありそうです。

家に使っていない(今後も多分使われない)エコバッグがあるというあなた、レジ袋をもらうもらわないという話もありますが、それ以外にも生活環境内の総合的な環境コストを考える必要がありそうですよ。

他には、ゴミ清掃芸人の滝沢秀一さんの記事では以下のように解説されています。

有料化すれば確かに減りますよね。僕だって買うとなるとためらいます。そしてマイバッグの持参が推奨されてますよね。でも本当のエコを突き詰めて考えると、実は紙袋もエコバッグも使い続けることがとても大事になってきて、紙袋なら約11回、布のエコバッグだと約840回、オーガニックコットンのバッグだと約2400回使わないと、レジ袋よりエコだとは言えないという研究結果もあるのです。

エビデンスが見つけられませんでしたが、サプライチェーン全体の流れを考えれば、確かにこれくらいにはなりそうです。エコバッグを継続して使うことができれば、環境に良いことは間違いないので、可能な限り対応したいところです。

■企業の社会的責任は?

とはいえ、レジ袋の問題は消費者だけの問題ではなく配布する企業の責任もあります。世界のCSR評価では、サプライチェーン全体の環境負荷の数値改善が求められていますし、企業は顧客に環境コストを押し付ければよいというわけではありません。また上場企業であれば、ESG投資(企業の環境側面等を重視する投資)の文脈からも環境対策強化が求められており、企業側の責任もどんどん大きくなっています。

また“大きなお世話”的な動きも今後予想されます。エコバッグの需要が高くなると、企業のノベルティで配られたり、製造するアパレル企業なども増えます。それらの企業が、仮に環境負荷の低いエコバッグ製造をしたとしても、大量に消費者が買って、その結果使われずクローゼットにしまわれたら、それも良いこととは言えません。つまり、ニーズがあるから作って売ればいい、という考えだけの企業にも環境破壊の一端があるのだということです。

■ぜひあなたの行動を

レジ袋有料化から1ヶ月。世間では半数以上の方がエコバッグを使い始めて(元々の人も含む)いますし、この記事を読んでいただいているあなたにも、エコバッグをぜひ継続的に使っていただきたいです。

ただし、エコバッグ自体の環境負荷も考えると、単なるプラスチックごみ問題というわけではなく、より広範囲な環境問題に、自身の生活が関わっていると理解していただけると思います。物事の表面的(一部分)な部分だけをみるのではなく、トータルで考えていきましょうと。

個人の、意識が変われば行動が変わり、行動が変われば結果が変わり、結果が変われば社会も変わる。そんなお話でした。まずは、エコバッグを持っていない人は、1枚買いにいきましょう。オシャレなエコバッグ見つけたからといって大量には買わないでくださいね!

サステナビリティ・コンサルタント

サステナビリティ経営の専門家。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版)ほか多数。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションとし、上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。1981年長野県中野市生まれ。

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