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スターバックスの顧客は2種類いる--それは消費者と環境だ

安藤光展サステナビリティ・コンサルタント
(写真:アフロ)

■企業の顧客は消費者だけではない

コーヒーチェーンのスターバックスコーヒージャパン(以下、スターバックス)が今週、スターバックス国内店舗での紙ストロー提供を開始するという発表をしました。スターバックスは、2018年7月、2020年末までに全世界のスターバックスにおいて使い捨てのプラスチック製のストローを全廃することを発表しており、様々な素材を用いた検証の結果プラスチックストローから紙製のストローへの切り替えを決定し2020年1月より段階的に導入するとのことです。

世界中で問題になっている「プラスチックごみ問題」への対応があるからであり、日本の飲食店チェーンの多くもこの問題に対応しようとしています。しかし先日一部で話題になってしまったのですが、マクドナルドが2018年に導入した紙ストローは「100%リサイクル可能」とされていたのに、実際はリサイクルができず廃棄していたという問題がありました。商品開発を含めて、実は去年から問題だらけだったプラスチックごみ問題ですが、スターバックスは条件をクリアし、前倒しで展開するようです。

プラスチックならダメで紙資源なら使い捨てOKというわけではないですが、世界中で問題になっているのは「使い捨てプラスチックごみ」であり、その課題に対してのアプローチになっています。これらの取り組みを含めて、スターバックスのサステナビリティ(CSR、企業の社会的責任)と、世間の意識調査の紹介をしながら、顧客が消費者だけではなく環境も含むのかを説明します。

■スターバックスの取り組み

スターバックスが今年4月に「Social Impact」というサステナビリティに関するウェブページをローンチしました。日本語での情報開示は少なかったのですがだいぶ積極的になりました。いわゆる外資系は日本語にローカライズした情報が少ないので、日本語母語話者としてはありがたいですね。

ちなみに「エシカル」というワードは見聞きしたことがありますでしょうか。エシカルとは倫理的であることを指しますが、日本でいう道徳観とは少し異なり最近浸透してきた考え方です。

たとえば、神奈川県の調査によれば、エシカル消費(倫理的な買物)のことを「知らなかった」と回答した人が54.5%、「知っていた(意味も理解している)」は16.3%にとどまったとしています。あまり知られていませんが、どの調査をみても一般が対象であれば2割前後の認知だと思います。

他には、博報堂の調査によれば、今後の購買意向では「環境・社会に悪影響を与える商品・企業」に対する不買や、「環境・社会に配慮した商品」に対する購入意向が約7~8割にのぼり、現在の購買実態と比較すると「環境・社会に配慮した商品」に対する購買意向は実態よりかなり高く、これからの生活者の購買行動における判断基準となることが予想される、とまとめています。つまり、消費者はエシカル的な概念をより重要視するようになった、もしくはなんとなくエシカルを考慮するライトな層も増えているよ、ということです。

消費者の一定数はエシカルな消費活動をしている傾向があり、企業もサステナビリティやエシカルなど、社会によりポジティブな影響をおよぼしている企業の商品・サービスが選ばれやすいということもあるでしょう。これらの背景を考えるとスターバックスもそうですが、BtoC企業は特にこういった取り組みが重要になってくるでしょう。

こうなると、企業にとっては顧客は消費者だけではなく、環境・社会も顧客(=超重要なステークホルダー)という立ち位置になるとも言えるのではないでしょうか。

■スターバックスのサステナビリティ評価

では、スターバックスの環境活動を一般消費者はどのように評価しているのでしょうか。たとえば「環境ブランド調査2019」では前年の27位から7位にランクアップしたそうです。この調査はCSR/ESG調査の専門家ではなく、一般消費者によるアンケートなので、企業ブランドとしてレベルが確実に上がっている様子が見受けられます。

他の調査も見てみましょう。ジャストシステムの調査によれば、社会貢献で思い浮かぶ企業というランキングで、スターバックスは30位です。30位とはいえ他の有名企業をおさえての30位なので、社会貢献の認知度としては相当高い部類です。今回紹介した紙ストロー導入などは特にイメージ戦略としてよかったのかもしれません。

■イメージは大事

前述したとおり、スターバックスは一般消費者の中でも社会に貢献する企業として認知されてきているようです。そして、今回はスターバックスを例にしましたが、これはどのBtoC企業でも取り組むべき話です。社会やステークホルダーに配慮できている企業は、当然しない企業よりも一定の評価を受けることができます。アパレルや外資系などではよく言われるようになったサステナビリティも、ステークホルダー・ファーストというか、社会を含めたステークホルダーを重視した戦略をとることで、環境にも消費者にも配慮された事業展開ができると。

スターバックスも世界では色々な取り組みをしていましたが、日本法人でも積極的に活動を行うようになってきており、ユーザーの一人として嬉しく思います。仕事柄、CSR/サステナビリティ推進に積極的ではない企業の商品・サービスが利用しにくいもので。というわけで、1月以降にお時間があったら紙ストローを体験してみてください。(ちなみにこの記事はスターバックスで一部執筆しました!)

サステナビリティ・コンサルタント

サステナビリティ経営の専門家。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会/代表理事。法政大学イノベーション・マネジメント研究センター/客員研究員。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』『創発型責任経営』ほか多数。国内上場企業を中心に15年以上サステナビリティ経営支援を行い、またテレビ、新聞、週刊誌、ニュースメディア等でも解説を多数担当。

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