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「意識改革」につながる3つの質問テクニック

横山信弘経営コラムニスト

企業の現場に入ってコンサルティングしていると、よく「意識改革」という言葉を聞きます。「一人一人の意識改革が必要だ」「働き方の意識改革をしていこう」というような、スローガン的に使われることが多いでしょう。確かに、組織の中で上司と部下とが協力し合い、問題を解決したい、目標を達成させたい、とした場合に、お互いの「意識レベル」が合っていなければ、話が前に進みません。

それでは、部下の意識レベルを推し量る「3種類の質問」を紹介しましょう。質問に対する正しい答えが、どこの記憶装置の中に格納されているか、それがわかれば部下の「意識レベル」を推測することができます。

その記憶装置とは、「短期記憶」「長期記憶」「外部記憶」の3つです。「短期記憶」とは、いわゆる「ワーキングメモリ」のことです。情報を処理するために常に格納しておく作業記憶装置。「長期記憶」は、長い歳月をかけて蓄積してきた知識の図書館のようなもの。「外部記憶」とは、何らかのヒントを言われても思い出せず、人間の脳の外にある記憶装置。資料やシステムのデータベース上に存在します。

上司が、「目標達成に向けて、常に意識してやってるか?」と問い掛けられて、「はい、いつも意識しています」と応じる部下がいます。しかし、その「意識しているもの」がどのようなものであり、どの記憶装置に格納されているかによって結果はまるで異なってきます。

部下の「意識レベル」を調べる質問とは、以下の3つです。

● 漠然とした質問

● 具体的な指標を用いた質問

● 正しい答えを使った質問

最初に「漠然とした質問」を紹介します。

「今年の目標達成のために、いま意識していることは何だ?」

これが、漠然とした質問です。多義的ですので、質問されたほうは何を答えたらいいか迷うことでしょう。しかし、漠然とした質問にもかかわらず、具体的な行動指標まで答えることができたら、部下の「意識レベル」はかなり高いと言えます。

「今年の目標は売上2億4000万円です。この数字を達成させるためには、現在保有している見込み客7社を、最低でも20社にまで引き上げなければなりません。そのために私が常に意識していることは、月間新規のお客様に50社訪問し、最低でも10人のキーパーソンと接触を続けることです」

このような具体的な行動指標が、スムーズに出てくるということは、常に部下の「短期記憶」の中に格納されている証拠です。「ワーキングメモリ」に記憶されているため、日々、常に焦点を合わせて仕事をしていることになります。すぐに脳が処理できる場所にこれらの指標が入っているため、自発的に行動改善を繰り返し、目標を達成させる可能性は高まることでしょう。

「常に意識していること……と言われましても、いろいろありますが」

と答える部下は、上司の質問に何を答えていいのか理解できないレベルです。また、

「意識していることは、新規のお客様に対し、積極的にアプローチすることです」

……と、漠然とした答えをする部下も、上司が期待する「意識レベル」に達していないと言えるでしょう。「短期記憶」に入っていないから、上司の質問の意図を正しく脳が処理できないのです。このような部下には2つ目の「具体的な指標を使った質問」をすることになります。つまり正しい答えに導くためのヒントとなる「切り口」や「指標」を渡すのです。

「今年の売上目標を達成させるうえで、日々心掛けている行動指標を具体的に答えてほしいと聞いてるんだ」

この場合「売上」と「行動」という「切り口」を部下に渡しています。ここまで聞いて「ああ、そういうことですか」と部下が合点したら、脳の「長期記憶」の中にある証拠です。「短期記憶」の中にはまだ入っていないため、このような切り口を渡すと正確に答えられるでしょう。

それでも答えられない場合は、3つ目の「正しい答えを使った質問」をせざるを得ません。

「だから……。売上目標がいくらで、その売上を達成させるためには見込み客をどれぐらい常時保有していなければならないか、そして新規のお客様への月間の接触回数などを答えてほしかったんだ。君の場合は、売上目標が2億4000万で、常に保有すべき見込み客の数は20社だったはず――」

このように具体的な「答え」を明示されても意味がわからなければ、部下の脳の「長期記憶」にさえ入っていないということになります。したがって、このような返答になることでしょう。

「そうでしたっけ? ちょっと目標管理シートを見てきていいでしょうか? そもそも見込み客を常時どれぐらい保有していないといけないかなんて……。それは何のために必要なんですか?」

「おいおい。これは4ヶ月も前の会議で決めたことじゃないか」

「会議で決めましたっけ?」

「何を言ってるんだ。君の同僚はみんな意識して行動してるぞ」

「4ヶ月前の会議で、ですか……。ちょっと議事録を確認してみたいですね」

ここまで意識の低い部下は、なかなかいないと思いますが、いずれにしても部下の「意識レベル」を引き上げるのは上司の責任です。

前述した3種類の質問をし、部下の「意識レベル」の現状を正しく認識した後は、期待する「意識レベル」にアップするまで、繰り返し【意識させる】ことが重要です。「意識させる」ためには、何度も質問をすることです。答えを渡してはいけません。質問をして「外部記憶」から「長期記憶」へ転送させます。そして繰り返すことによって「長期記憶」から「短期記憶」へと徐々に移っていきます。

■「短期記憶に格納されている」 → 言われなくてもわかっている

■「長期記憶に格納されている」 → 言われたらわかる

■「外部記憶に格納されている」 → 言われてもわからない

と、覚えておきましょう。部下が口だけでなく、本当に「言われなくてもわかっている」状態になっていれば、上司はラクにマネジメントができるはずです。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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