「iPhone 7」で巻き返し、アップルが久しぶりの強気な生産計画
米アップルは今年発売するスマートフォンの次期モデル「iPhone 7」(通称)について、同社製品の製造を手がけるサプライチェーン企業(部品の供給と製造のネットワーク)に、7200万〜7800万台を生産するよう依頼したという。
これは、台湾の経済日報(Economic Daily News)が最初に報じたものだが、その後複数の米メディアがこれを取り上げ、大きな話題となっている。
iPhoneを再び成長へ
これらの報道によると7200万〜7800万台は今年の年末までの生産台数。これはiPhoneの新モデルの初回生産台数として過去2年で最大。またアナリストの予測台数だった6500万台も上回っているという。
もしこの報道が正しければ、アップルは今年投入する新モデルでiPhoneを再び成長させることができると考えているのかもしれない。
同社が昨年9月下旬に発売した「iPhone 6s」「同6s Plus」は機能が前モデルと大きく変わらなかったためか、10〜12月期のiPhoneの販売台数は7478万台となり、1年前と比較し1%未満の微増にとどまった。
また今年1〜3月期の販売台数は5119万台で、同16%減少。これに伴いアップルの売上高は同13%減となり、その四半期売上高は13年ぶりに前年実績を下回った。
このことから、今後アップルがiPhoneの販売を再び活気付かせるためには、次期モデルに消費者を魅了するような目玉機能を搭載する必要があると指摘されている。
iPhone製造の発注先とは?
米バロンズなどの報道によると、iPhone 7の組み立て業務を主に請け負うのは従来どおり台湾の電子機器受託製造大手、ホンハイ(鴻海精密工業)。また台湾のペガトロン(和碩聯合科技)も一部組み立て業務を請け負い、全体の生産を補完するという。
そしてこの2社は今回、デュアルレンズカメラや本体部品などの製造も請け負う見通し。なおこのニュースを受け、ホンハイとペガトロンの株価はそれぞれ4.7%と10%上昇し、それ以外の台湾電子部品メーカー株もつられて上昇したとバロンズは伝えている。
iPhone、初の防水仕様か
iPhoneの次期モデルについては、これまでに様々な観測が出ている。例えば米シーネットや米9toMacなどによると、iPhone 7には4基のスピーカーや前述のデュアルレンズカメラなどが採用される見通し。
内部は、高性能な「A10」プロセッサーと3GBのメモリーを搭載し、ストレージ容量が256GBのモデルも用意されるという。さらにiPhoneは初めて防水設計が施される可能性もあると伝えられている。
その一方で本体は現行の6sシリーズとほぼ同じで、iPhoneがそのデザインを大きく変えるのは来年発売のモデルからだと見られている。
これは、アップルの新製品やその発売時期を当ててきた台湾KGI証券の著名アナリスト、ミン・チー・クオ氏が、今年4月に出した調査ノートで報告したものだ。
同氏によると、アップルが来年発売するiPhoneでは、その本体ケースに用いられる素材がすべてガラス素材になるようだ。
アップルが全面ガラス素材の「iPhone」を市場投入したい理由 (小久保重信) -Yahoo!ニュース個人
アップルは2012年に発売した「iPhone 5」から現行の「iPhone 6s」まで本体ケースにアルミニウムを採用してきた。そうした中、ライバルメーカーのスマートフォンも同様にアルミニウムを採用するようになってきた。
このためiPhoneはすでに他社製品と明確に差異化できる要素がなくなってきたという。そうした中、アップルはまったく新しいデザインで、競争力を高めようとしていると、クオ氏は報告している。
(JBpress:2016年5月25日号に掲載/原題「『iPhone 7』で巻き返し図るアップル、今年の初回生産台数は過去2年で最大の7800万台」)