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首位ベレーザの背中を捉えるのは、どのチームか。拮抗した試合で輝いた仙台と長野のチーム力(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
長野は6試合負けなしとなった(C)松原渓

5月27日(土)に行われたなでしこリーグ第10節、マイナビベガルタ仙台レディースとAC長野パルセイロ・レディースの一戦は、1-1のドローとなった。

首位ベレーザの背中を捉えるのは、どのチームか。拮抗した試合で輝いた仙台と長野のチーム力(1)

【逃げ切るためのしたたかさ】

試合終了間際の失点について、仙台は集中力の欠如を指摘する選手が多かったが、ボランチの佐々木繭は、「逃げ切り方の甘さ」に言及した。

「体力も消耗していましたし、逃げつつも得点は狙えるところで狙いたかったのですが、逃げ切るのなら、もっとしたたかに戦えるようにならないといけないと思います」(佐々木/仙台)

足下でつなげるところでも、あえて攻撃を放棄して、ボールを大きく蹴り出す。自陣のゴールからボールを遠ざけて時間をやり過ごすことを優先し、相手のコーナーフラッグ付近までボールを運び、ゴールに背を向けてひたすら身体を張って時間を稼ぐ。

そういう、「したたかな」時間の使い方を実践するのは、言うほど簡単ではない。

しかし、勝利のために手段をいとわない悪質なファウルと違い、時間稼ぎは、フェアプレーと矛盾する行為ではない。90分間で勝ちきるためのペース配分も大切だが、リードした際の終盤の試合の運び方については、男女のチームを問わず、世界中で監督や選手たちが日々、悩むことのひとつである。

一方、仙台がこの試合で先制した後に何度もみせたカウンター攻撃は迫力十分だった。しかし、その点についても、佐々木は課題を挙げた。

「これから暑くなる中で、つなぐ攻撃の質を上げていきたいです。ただつないでビルドアップしようという意識が出てきた分、開幕戦で長野と戦った時よりもカウンターの精度は落ちたと思います。(自分のポジションでもある)中盤で、後ろからボールを受けるのか、縦に(ロングボールを)入れた後のサポートに行くのかの判断で迷ってしまうところがあるので、その点はもっと共通理解を持って(ロングボールとつなぐ攻撃を)使い分けられるようになりたいです」(佐々木/仙台)

この後、リーグ戦は3ヶ月弱の中断期間に入り、来週からはなでしこリーグカップが始まる。

佐々木を始め、仙台の選手たちの視線の先にあるのは、リーグ戦とカップ戦の「優勝」だ。新体制1年目の仙台がその目標を達成するためには、1試合ごとの成長度合が問われている。

仙台は来週、6月4日(日)にアウェイの上野運動公園競技場で伊賀フットボールクラブくノ一と対戦する。

【”連敗しない”長野イズム】

長野が劇的なゴールを決めて試合を盛り上げるのは、今回が初めてではない。

昨年は、ゴールを獲られては取り返し、「得点も多い代わりに失点も多い」(本田監督/長野)

スリリングな試合展開が多かった。

しかし、今年の長野は、昨年に比べて明らかに進化している。それは失点の少なさ(昨シーズン、10節終了時の失点数は「20」だったのに対し、現在の失点数は「8」)にも表れているが、攻撃面でも顕著だ。「ボールを奪ったらとにかく縦」だった昨年に比べ、横や斜めの選択肢が増え、攻撃の幅が広がった。本田監督は、攻撃面の進化について次のように話した。

「去年は、ディフェンスの選手たちが怖くて前に蹴ってしまっていたんです。(センターバックの)木下も坂本も、来たボールを跳ね返すのが精一杯だったんです。ただ、(今シーズンは)そこで止めることができたり、隣につなぐことができています。そこからサイドバックに入れたり、木下から齊藤、齊藤から國澤に入れられるので。去年に比べると、坂本と木下のボールをつなぐ力が上がったことが大きいと思います」(本田監督/長野)

ただ、進化の中で、昨年と変わらないことがある。それは、「最後まで諦めずに攻め続ける」というメンタリティである。

この試合に引き分けたことで、長野は6試合負けなしとなった。昨シーズンから連敗は一度もなく、「選手たちがネガティブになっていないのはいいですね」と、本田監督は言う。

負けている状況でも追いつき、勝てると信じられるメンタリティがあり、負けてもポジティブに切り替えて敗戦を引きずらない。それは、長野のサッカーが観客を惹きつける要因の一つかもしれない。

この試合は、ドイツ女子1部リーグの1.FFCフランクフルトに期限付き移籍することが決まっている横山にとって、移籍前のリーグ最終戦(6月24日のカップ戦が、国内出場の最終戦)となった。

横山が抜けた後の得点パターンをどのように再構築するかは、長野にとって喫緊の課題であり、引き続き注目したい。

長野は来週、カップ戦の試合がなく、次の試合は6月10日(土)にアウェイのフクダ電子アリーナでジェフユナイテッド市原・千葉レディースと対戦する。

そして、6月上旬には、国際Aマッチデーを利用して、なでしこジャパンが欧州遠征を行う。

6月9日(金)にオランダ女子代表戦、13日(火)にベルギー女子代表戦が予定されており、遠征に参加するメンバーは5月29日(月)に発表される。

試合詳細

なでしこリーグ(1部)他会場の結果・日程 

なでしこリーグ(1部)順位

(3)【監督・選手コメント】に続く

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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