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トナカイさんへ伝える話(99)【平成の事件】横山ノック元府知事・強制わいせつ事件を振り返る(前編)

小川たまかライター
(写真:築田純/アフロスポーツ)

 今の若い人はもう、故・横山ノック元府知事による強制わいせつ事件を知らないかもしれない。そもそも横山ノックって誰?という10代20代は多いのではないか。

 一般に「横山ノック・セクハラ事件」などと言われるこの事件は、1999年4月に起こった。再選を目指す現職知事が、その選挙期間中にワゴン車(選挙カーの伴走車)の中で運動員の女子学生の下半身を執拗に触り、投票日の前々日にそれを記者会見で告発されるという前代未聞の衝撃的な事件だった。

 ノック知事は疑惑を否定、「共産党によるデッチ上げ」を唱え、すぐに女子学生を虚偽告訴で訴える。世論や報道も一時はそちらへ傾き、被害者である女子学生へのバッシングや二次加害は壮絶だった。

 しかしその後、女子学生が民事訴訟で勝訴、ノック知事は刑事事件でも起訴されて辞職。刑事裁判ではそれまで「まったくの事実無根」などと言い張っていた犯行を認める。事件から1年4カ月後に、執行猶予付きの有罪判決が下された。

 20年以上前の事件だが、この事件から学べることも多いのではないかと考え、当時の記録にあたってみたい。

 私がこの事件に関心を持った理由は次の3点。

●証拠が残りづらく立証が難しい性犯罪事件で、民事で勝訴、刑事事件でも有罪を勝ち取ることができた理由

●民事訴訟が異例とも言える短期間で終わったのはなぜか

●当時大阪で絶大な支持を集めていた知事を告発した女子学生を支援者はどう支えたのか

目次

【前編】

(1)投票日前々日の被害者記者会見

(2)絶大な支持の裏で、女子高生に激昂

(3)「真っ赤なウソ」と逆告訴

【後編】

(4)民事訴訟は「公務優先」で反論せず

(5)入院、起訴、辞職

(6)刑事事件で示唆された「余罪」と計画性

(7)2年後の手紙

(8)まとめ

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ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

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