【NFL】プレーオフ・ディビジョナルラウンド・プレビューNFC編
NFL Playoffs Preview NFC Divisional Round
Text&Photos by Kiyoshi Mio
★サンフランシスコ・49ナーズ(NFC西地区優勝、第1シード、13勝3敗)対ミネソタ・バイキングス(NFC北地区2位ワイルドカード、第6シード、10勝6敗)★
現地時間1月11日(土)午後13:35キックオフ
日本時間1月12日(日)朝6:15から日テレG+で生中継
日本時間1月13日(月)深夜0:40からNHK BS1で放送
名門球団、サンフランシスコ・49ナーズがプレーオフに帰って来た。
2012年シーズンにスーパーボウル出場を果たし、翌13年シーズンもカンファレンス決勝戦まで勝ち進んだが、14年シーズンを8勝8敗の五分で終えると、15年シーズンからは大きく負け越して低迷。昨季も4勝12敗だったが、今季は13勝3敗でNFCの第1シードを獲得した。
2017年シーズン途中にニューイングランド・ペイトリオッツからトレードで獲得したQB(クオーターバック)ジミー・ガロポロは移籍後は5勝0敗と負け知らず。NFLでの先発経験が僅か7試合にもかかわらず、そのオフに5年総額1億3750万ドル(約151億2500万円)でナイナーズと契約を延長。年平均だと2750万ドル(約30億2500万円)となり、デトロイト・ライオンズのマシュー・スタンフォードの2700万ドル(約29億7000万円)を抜いて、リーグ最高年俸選手となった。
昨季はシーズン3試合目に左膝前十字靭帯を損傷してシーズン終了。高年俸を与えたことを疑問視もされたが、今季は自らの力でナイナーズ首脳陣の判断が正しかったことを証明してみせた。今季のガロポロのパッサー・レイティングは102.0で、1950年以降のナイナーズのQBとしてはジョー・モンタナとスティーブ・ヤングしか達成していないパッサー・レイティング100超えを果たした。
ガロポロのメインターゲットはリーグ3年目のTE(タイトエンド)ジョージ・キトル。193センチ、113キロの恵まれた身体を生かして、パスキャッチを量産。過去3シーズンで合計2945捕球ヤードを記録して、マイク・ディトカ(2774捕球ヤード)が持っていたTEのNFL入りからの3年間でのレシービングヤード記録を塗り替えた。
ナイナーズの本当の強さは、NFC1位の144.1ヤードを記録したラン攻撃にある。エースRB(ランニングバック)は不在だが、ラヒーム・モスタート(772ヤード)、マット・ブリーダ(623ヤード)、テビン・コールマン(544ヤード)と500ヤード以上を稼いだ選手を3人も抱える。この3人がヤードを稼げるのもFB(フルバック)カイル・ユーズチェックがいてこそ。今季はラッシングが3回、計7ヤードとボールを持って走ることはないが、後ろを走るRBのブロッカー役として走路を切り開く。
ナイナーズはディフェンスもトップレベルで試合平均281.8ヤードはNFCトップ。とくにパス攻撃に強く、試合平均169.2ヤードはリーグ1位と鉄壁守備陣を配する。9.0サックを記録したルーキーDE(ディフェンシブエンド)ニック・ボサは強力ラッシュで相手QBに襲いかかる。バイキングスのOL(オフェンシブライン)は身体能力の高いエッジを苦手としているので、バイキングス戦ではボサが大暴れするかもしれない。レギュラーシーズン12週目以降は故障で欠場を続けていたDEディー・フォードも復帰予定で、ボサの反対側からもQBを襲っていく。
先週末のワイルドカード戦でニューオーリンズ・セインツを延長で撃破したバイキングスだが、今週末はさらに険しい道が待っている。
バイキングスはサンフランシスコでの試合で過去10試合中1度しか勝利を手にできていない。それに加えて、第6シードのチームは8試合連続でディビジョナル・シリーズで負けている。
今週末もRBダルビン・クックが頼みだが、QBカーク・カズンズの貢献も必要不可欠。
2018年のオフにバイキングスへFA移籍したカズンズはガロポロの年平均2750万ドル(約30億2500万円)を塗り替える3年総額8400万ドル(約92億4000万円)、年平均で2800万ドル(約30億8000万円)でNFLの最高年俸記録を更新。プレーオフで未勝利だったガロポロとカズンズの高額契約がQBの市場価値を押し上げ、その後に実績があるQBたちが再契約を結んだ際には3000万ドル(約33億円)以上の年俸を手にする時代に突入した。
カズンズのメインターゲットであるWR(ワイドレシーバー)のステフォン・ディグスは体調不良で、アダム・シーレンも足首の故障で、今週の練習を休んでいるが、彼らが本調子でプレーできないようだとカズンズは苦しくなる。2012年にカズンズがワシントン・レッドスキンズに入団したときのOC(オフェンシブ・コーディネーター)が現ナイナーズ監督のカイル・シャナハンで、シャナハンはカズンズの癖や弱点を熟知している。
バイキングスの助監督兼オフェンシブ・アドバイザーを務めるゲリー・キュービアックは、1994年シーズンにナイナーズのQBコーチとして、スーパーボウル優勝に貢献。そのときのOCはカイル・シャナハンの父親のマイク・シャナハンで、1995年シーズンにマイク・シャナハンがデンバー・ブロンコズの監督に就任すると、キュービアックもマイク・シャナハンに付いていき、OCとしてブロンコズをスーパーボウル2連覇に導いた。2006年にヒューストン・テキサンズの監督に就任した際には、カイル・シャナハンをWRコーチとして雇い、カイル・シャナハンはNFL最年少のポジション・コーチとなった。QBコーチ、OCと昇進を続け、カイル・シャナハンにとってキュービアックは兄のような存在。ナイナーズ、バイキングスの両チームとも短いパスを多用する「ウエストコースト・オフェンス」のチームで、強力なランニングゲームも兼ね備えている。最近のNFLではFBを置かずにWR3人使うプレーが多いが、ナイナーズとバイキングスはNFLの中でもFBを起用するプレーが多いチームである。ナイナーズのユーズチェックはラッシュする機会こそ少ないが、レシーバーとしての能力は高い。
似通ったオフェンス・システムを使う2チームだが、49ナーズの方がより攻撃の質は高く、守備も良い。ナイナーズ有利の声が高いが、バイキングスは先週も圧倒的に不利と言われた下馬評を覆してきた。
★グリーンベイ・パッカーズ(NFC北地区優勝、第2シード、13勝3敗)対シアトル・シーホークス(NFC西地区2位ワイルドカード、第5シード、11勝5敗)★
現地時間1月12日(日)午後17:40キックオフ
日本時間1月13日(月)朝8:40から日テレG+で生中継
日本時間1月16日(木)深夜1:10からNHK BS1で放送
8チームが残っている今季のプレーオフの中でスーパーボウル制覇の実績を誇るQBは、パッカーズのアーロン・ロジャースとシーホークスのラッセル・ウィルソンの2人だけ。ウィルソンはリーグ最高年俸の3500万ドル(約38億5000万円)を得て、ロジャースもリーグ3位の3350万ドル(約36億8500万円)を稼ぐエリートQBだ。2014年シーズンのNFC決勝戦で両者が戦ったときには、ウィルソン率いるシーホークスが16点差を追いつき延長パッカーズを突き放してスーパーボウル出場を決めた。
そのときはシーホークスの本拠地であるセンチュリー・リンク・フィールドでの試合だったが、今回ホームフィールド・アドバンテージを持っているのはパッカーズ。今季のパッカーズはホームで7勝1敗と敵を寄せ付けない強さを誇るが、シーホークスもアウェイでは8勝1敗で、先週のワイルドカードもアウェイでの戦いを制しているので、ホームフィールド・アドバンテージはそれほど大きくならないかもしれない。
ウィルソンは先週のイーグルス戦で325ヤードを投げただけでなく、チーム最多となる45ヤードを走る大活躍で勝利を引き寄せた。レギュラーシーズンではNFC2位となる試合平均137.5ヤードを記録したシーホークスだが、RBにけが人が相次ぎ先週のフィラデルフィア・イーグルス戦では64ヤード止まり。パッカーズのディフェンスはNFL23位の試合平均120.1ラッシングヤードを許し、ラン攻撃には弱いだけに、シーホークスがランニングゲームをどう立て直すかが鍵となる。イーグルス戦では7ヤードと振るわなかったマーション・リンチだが、タッチダウン(TD)をあげたランでは往年の激しさも感じられ、パッカーズ戦では大暴れしてもらいたい。ランに弱いパッカーズ守備陣だが、QBのランに対してだけは強く今季のQBラッシングヤードはリーグで3番目に少ない。イーグルス戦でパス7回キャッチで160ヤードを稼いだWRのDK・メットカルフがラン攻撃の負担を軽減したいが、パッカーズ守備陣はパスに対しては強く相手チームのパス成功率はリーグで3番目に低い。短いパスを封じる一方で、長いパスには脆さも見せるので、ウィルソンはメットカルフとタイラー・ロケットへのロングパスを狙っていく。
パッカーズのLB(ラインバッカー)ザダリアス・スミスはリーグ6位の13.5サック、プレストン・スミスも8位の12.0サックとリーグ屈指のLBコンビを結成。ウィルソンがロングパスを狙う隙をついてQBサックを量産したい。パッカーズ守備陣の柱が2人のスミスならば、攻撃は2人のアーロンが中心となる。RBアーロン・ジョーンズは1084ヤードを走っただけでなく、パスキャッチでも474ヤードと存在感を見せた。シーホークスの守備陣は平均ラッシングヤードがリーグ29位の4.9ヤードを許しているので、QBアーロン・ロジャースよりもジョーンズの活躍が勝利への近道となるかもしれない。今季のロジャースはTDが26に対して、インターセプトは僅かに4つとミスがとても少なくって堅実。シーホークスの守備陣はリーグ5位タイの16インターセプトを記録しているが、ロジャースのパスを奪うのは簡単ではない。今季のパッカーズ攻撃陣は例年のような怖さを感じさせないが、その理由の1つがサードダウンの成功率の低さ。36.0%はリーグ23位と苦しんでおり、シーホークス守備陣はここを守りきれば勝機が出てくる。
先週のワイルドカード4試合全てがディフェンシブな展開となったが、この試合はオフェンス主体の点取合戦となるかもしれない。