「文在寅候補が当選すれば、3千人が海外に集団亡命する」 脱北者団体が宣言
韓国の大統領選挙は明日(9日)が投票日だが、各陣営とも支持団体の取り込みに大わらわである。韓国にいる3万人に上る脱北者らもその対象となっており、3日には脱北者3千人が「野党候補の文在寅候補が当選すれば、海外に集団亡命する」との声明を出すなど、「反文在寅キャンペーン」を展開していることがわかった。
集団亡命を企図しているのは「脱北者集団亡命推進委員会」なる俄作り団体でこの日、中心メンバー20数人が出席して、緊急記者会見を開き、文候補に反対する声明文を発表した。
「亡命推進委員会」は文候補が「大統領に当選すれば、米国よりも真っ先に北朝鮮を訪問する」とか「偽の保守を松明で燃やしてしまう」と発言していること、また文陣営の李へチャン議員が「保守を壊滅する」と公言していることに危機感を覚え、「文候補を当選させてはならない」と決意したとのことだ。
同委員会の李ジュソン共同代表は記者会見で「韓国は脱北者らにとって生きる拠り所であり、運命を委ねたねぐらである」として「今回の大統領選挙は脱北者らが韓国の独立性と自らの未来について考える契機となっている」と述べたうえで「我々脱北者らが命を懸け、身もだえたどり着いたこの地で命を保ち続けることが難しい状況に置かれている」と脱北者らの心境を代弁した。
「私は脱北者の一人として、人権団体の代表として大統領になる人と彼の同調勢力の赤々と燃える目の光と言葉を聞くと身の毛がよだち、命が保障されないとの恐れから記者会見を開いた」と語る李代表は盧武鉉政権時代の2008年2月8日にゴムボートに乗った北朝鮮住民22人が韓国の海軍に救助されたのに直ぐに板門店を通じて北朝鮮に送り返されてしまったことを取り上げ、「この送還決定に当時、大統領秘書室長の文在寅候補が主導していた」と、反対の理由を語った。
こうした危惧から脱北者らは文候補が大統領に当選すれば、脱北者らの命は風前の灯火になるとの危機感から大挙米国やカナダ、欧州にこぞって亡命を申請するとしている。
文候補に反対するもう一つの理由としては、盧武鉉政権の時に国内に定着していた脱北者らに付与された住民登録番号が簡単に識別されることから中国で活動していた脱北者らが中国の公安当局や北朝鮮保衛部に逮捕されることになったと主張しているのがもう一人の共同代表である金テフィ氏の言い分で、盧武鉉政権のせいで2005年から2007年の2年間に約1千人の脱北者らが中国で行方不明になったと主張している。
金共同代表は「文候補が国家情報院を改革し、国家保安法を撤廃すれば、北朝鮮から脱北者らを除去するため暗殺チームが自由に出入りし、暗殺が公然と行われることになる」ことから脱北者らの命が脅かされているとさらなる反対理由を語っている。
「脱北者集団亡命推進委員会」は声明の最後で「命を懸けて、脱北してきた我々が自由大韓民国を捨てて、国を去ることがないよう助けてもらいたい」と訴えていた。
総選挙を含めこれまでは脱北者らは北朝鮮に融和的な野党よりも、強硬な保守候補を応援するのが常だが、今回はこうした大勢とは真逆に「無能の極致の保守政権の強硬一辺倒の安保政策がむしろ北朝鮮の核ミサイルの挑発を放置してきたことで国民を不安に陥れた」として、文候補を支持する脱北者もいる。
今回、文候補支持を表明したのは「脱北人団体総連合会」の韓チャンゴン会長と「統一を準備する脱北者協会」の全ジュミョン会長らで、約300人が「(文候補の)共に民主党は脱北者特別委員会を初めてつくったこと、文候補は特戦団(ブラックベレー)出身であり確固とした安保感を持っている」ことを理由に支持を表明している。
韓会長は2007年の大統領選挙の時はハンナラ党本部で保守の李明博候補を応援する支持宣言をしていたことで知られているが、今回は一転、左派の文候補支援に回っている。文候補を擁立している野党第1党の「共に民主党」陣営からも働きかけがあったものとみられる。