台風が相次いで上陸するわけ
台風の上陸が止まらない。北上を続ける台風12号が上陸すれば、今年5個目となる。これは平年の約2倍、2004年以来12年ぶりの多さだ。台風が相次いで上陸する背景には、台風が発生する位置と高気圧の張り出しがある。
ひと月に4個上陸は過去最多
世界で発生する熱帯低気圧の中で最も多いのが台風です。一年間に約26個発生し、そのうちの2個から3個が日本に上陸します。このグラフは一年間に上陸した台風の数を、1951年から2015年まで、まとめたものです。
一番多いのが3個、次いで2個です。これらで全体の半分を占め、比較的ばらつきが小さく、極端に多くなったり、少なくなったりすることはあまりありません。
ただ、今から12年前の2004年は台風が10個上陸し、けた外れの台風災害に日本列島が翻弄されました。
先月(8月)は台風が4個上陸し、今も台風12号が北上しています。台風12号が上陸すれば、今年5個目となり、2004年以来の多さです。9月も台風が上陸しやすい月であることを考えると背筋が寒くなります。
日本近海で台風が多発
なぜ、8月になって急に台風が上陸するようになったのでしょう。それには2つの見方があります。ひとつは台風の発生する場所です。
この図は雲の発生の多い、少ないを表した図です。専門的にいうと「外向き長波放射量平年偏差図」です。
寒色は雲の発生が多い場所、暖色は雲の発生が少ない場所です。左側が7月下旬、右側が8月下旬をみたもので、黒丸で囲った部分に注目してください。
7月下旬はオレンジ、8月下旬はブルーと色が変化しているのが分かります。つまり、7月は雲の発生が弱く、台風が少なかったものの、8月は一転して、雲の発生が多くなり、台風が多発しました。
とくに、8月は台風の発生場所が例年に比べて北へ偏り、日本近海だったため、影響が大きくなったと考えました。
台風を流す風「指向流」
二つ目の見方は亜熱帯高気圧の強さや位置です。台風はいうなれば、大気という名の大海原を進む帆を張った船のような存在です。
台風を流す風のことを「指向流」といい、日本列島に近づく台風は偏西風や亜熱帯高気圧の縁を流れる風に大きく影響を受けます。
8月は例年に比べ亜熱帯高気圧の中心が北へ偏り、日本列島への張り出しが弱くなりました。台風は高気圧を横切らないため、日本列島が高気圧に覆われると、台風は近づいてきません。
いつもと違う現象は複数の原因が重なって起きるものです。今年、台風の発生する位置が北へ偏っているのは上空の寒冷渦が影響しているとも考えられます。さらに大きく見れば、エルニーニョ現象が終息した後の大気や海洋の変化もあるでしょう。
台風の振る舞いから見える、大気や海洋の複雑な関係に興味はつきません。
【参考資料】
気象庁ホームページ:大気の循環・雪氷・海況
宮北吉美,2005:台風に関わる海の状況、ITCZ、昨年のコース等について,「台風」日本気象学会関西支部第27回夏季大学テキスト.