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せんべいの、耳?国内最古の南部せんべい店「川越せんべい店」さんの手間暇かかった大人気ローカルおやつ

柳谷ナオ和菓子ソムリエ・ライター

老舗というブランドに胡坐をかかず、そして良いものは良いもののまま装いをその時代にあわせて変化させていくというお店が好きです。

日本最古の南部せんべい店、惹かれます
日本最古の南部せんべい店、惹かれます

その中のひとつが、私の地元である青森県にて1871年創業の南部せんべい店「川越せんべい」さん。隣家の火災や材料のトラブルなど幾多の困難を乗り越えてきた青森県上北郡を代表する老舗。そして、何百年という間青森県の郷土の味として食べられてきた南部せんべいの専門店なのですが、じつはおせんべいの縁である「みみ」も立派な郷土食なんです。

SEMBEの耳(うすごま)
SEMBEの耳(うすごま)

今回は川越せんべいさんの「SEMBEのみみ」をご紹介。

一般的な南部せんべいとは異なり、ひとつひとつの厚みや焼き色が違うのでその食感も風味も実に表情豊か。

それぞれが一期一会の食感
それぞれが一期一会の食感

太いものは、奥歯にぐっと力を込めてガリンと豪快な音を立てて。その音も醍醐味の一つ。完全にクリスピーとは言えない、若干歯に吸いつくような質感を伴いながらも、じゃりんじゃりん、かりんかりん。という独特な食感と、小麦粉や瀬戸内海の海水を使用した塩のまろやかな塩気を楽しみ、時折姿を現す黒胡麻の薫り高さに「おっ」と眉を上げて。

しゃりしゃり派?かりかり派?
しゃりしゃり派?かりかり派?

細くこんがりと色づいた健やかな小麦色の部分は、非常に軽やかでクリスピーかつ、焦げ目ならではの美味しい香ばしさを顕著に堪能することができます。小さなお子様や歯が弱いという方は、こちらの方が食べやすいかと。

南部せんべいの耳は、青森県をはじめ地元の方のおやつとしてもお土産としてもファンが多いため、あえて南部せんべいのみみだけを作っていらっしゃるところもあります。

たっぷり空気を含ませるように手ごねなさっている証の空洞
たっぷり空気を含ませるように手ごねなさっている証の空洞

しかし、川越せんべいさんの場合はあえてみみだけを作らないため、ストレートに生成りの南部せんべいの味わいを体感することができるというのも人気のひとつ。

それもこれも、力強く手ごねされた生地と非常に大きな石窯による遠赤外線、そしてタイミングを見極める職人さんの経験と技があるからこそ。

お皿にうつしても、いつの間にか食べきってしまいそう…
お皿にうつしても、いつの間にか食べきってしまいそう…

また、川越せんべいさんではその時の製造量などにより、袋詰めされるみみの種類が異なるとのこと。今回は手軽な毎日のおやつとしてよく食べられている、うすごまというやや薄手のお煎餅の耳でした。ホームページの商品欄と見比べながら召し上がるのもなかなか楽しいひとときになるのでおすすめです。

イラストの模様が違うのは、その時によってみみの種類が異なというのも理由のひとつかと
イラストの模様が違うのは、その時によってみみの種類が異なというのも理由のひとつかと

ひと手間もふた手間もかけた「SEMBEのみみ」。南部せんべいをはじめとする商品を紡いできた歴史のみならず、食材の生産者の方やその土地を敬う川越せんべいさんの強かな信念をしっかり噛みしめながら、これからも郷土の味が繋がっていくといいなと思うおやつの時間でした。

そういえば幼少期、大きくてりっぱなみみを母や祖母から与えられ「歯を悪くするといけないから、ゆっくり食べてね」といわれたのを思い出しました。今度は私が伝える番。

最後までご覧いただきありがとうございました。

柳谷ナオ

<川越せんべい>
公式サイト(外部リンク)
青森県上北郡おいらせ町下明堂30-11
0178-52-2878
9時~17時(土曜 ~16時)
定休日 日曜・月曜

和菓子ソムリエ・ライター

■年間400種を優に超える和菓子を頂く和菓子ソムリエ&ライター。美味しさだけではなく、職人さんやお店、その土地の魅力をいかに伝えるかに重きを置いて執筆中! ■製菓衛生士免許所持・製造・販売・百貨店勤務経験有 ■和菓子・お取り寄せ・お土産・アンテナショップ・都内物産展&催事・和菓子とお酒&珈琲&ノンアルコールとのペアリングなどの執筆や取材、監修を得意としています。

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