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山本太郎リアル爆弾がついに炸裂!ただし、彼の世界認識は間違っている

山田順作家、ジャーナリスト
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

誰もがノーマークだった山本太郎議員の「リアル爆弾」がついに国会で炸裂した。19日の参院特別委員会で「永田町ではみんな知っているけど、わざわざ言わないことを質問していきたいと思います」と切り出し、一連の法案がすべてアメリカの対日要求であることを暴露してしまった。

安保法制はもちろん、原発再稼働、TPPまで、安倍内閣の政策はすべて「アーミテージ・ナイリポート」のフォトコピーであることは、永田町だけでなく、多くの日本人が知っている。ただし、大メディアがまったく触れないので、誰もが公(おおやけ)には口にしてこなかった。それを、山本議員は、国会の場でおそらく初めて口にしたのだ。

しかも、山本議員は日本がアメリカの属国であることを指摘したうえで、「いつまで没落間近の大国のコバンザメを続けるのですか?」「いつ植民地をやめるんですか?」とまで言い放った。もちろん、政府がこれに答えられるわけがない。なぜなら、答えは「イエス」以外にはないからだ。

この山本リアル爆弾は、じつは五輪エンブレムをデザインした佐野研二郎氏の「パクリ爆弾」以上の破壊力を持っている。佐野研二郎氏は東京オリンピックを「東京パクリンピック」に変えてしまったが、それはいまでも取り返しがつく、解決できる問題だ。

しかし、日本がアメリカの属国にすぎないということは、この先、何年たとうと解決できる問題ではない。

安保法制だけについてだけ言えば、自衛隊はそもそもアメリカ軍の補完軍である。自衛隊の兵器はほぼすべてアメリカ製である。たとえば戦闘機やミサイルシステムは、アメリカからシステムのソースコードをもらえなければ使い物にならない。だからもしアメリカと敵対関係になったときは、日本を守れない。さらに、現代では核兵器を持たななければ外交自主権がない。山本議員の指摘は正しいが、「いつまでコバンザメを続けるんですか?」という話ではない。

そこで、山本議員の指摘は正しいとしても、「没落間近の大国」という認識は完全に間違っていると言うほかない。なぜなら、アメリカはいまも世界最強の覇権国家であり、没落などしていないからだ。むしろ最近では、ドル高、原油安政策により、反米国家群を次々に窮地に追いやっている。ロシアはウクライナ問題で失敗し、いまや経済崩壊寸前だ。中国もまた経済崩壊寸前まできている。

資源高にあぐらをかいてきた反米ベネズエラも国家崩壊に瀕しているし、ブラジルも経済的に立ちいかなくなっている。キューバもイランも結局、アメリカの言うことを聞かざるをえない状況に陥っている。

つまり、現在もこの先も、日本にアメリカの属国をやめる選択はありえないのだ。

8月17日、4-6期のGDP速報値が発表され、年率マイナス1.6%と落ち込んでいることが明らかになった。これは、予想どおりとはいえ、アベノミクスがまったく機能していないことの現れだ。そして、今日、株価は2万円を大きく割り込んだ。もう安保法制などというくだらない審議を一刻も早く打ち切って、安倍内閣は経済に専心すべきだ。

私たちは現在、経済が衰退する斜陽の国に生きている。このことをはっきり自覚して、もういい加減、空理空論や希望的観測を捨て、本当の議論するべきときに来ている。大メディアも、日本が置かれている位置を認識し、「戦争をできる国にしていいのか」なんて情弱国民しか説得できない論理を捨てるべきだ。

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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