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ニューノーマル時代の営業、不可欠となったマーケティング志向

横山信弘経営コラムニスト
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

■求められるマーケティング志向

営業職が関わる領域が、近年大きく広がっている。時代の変化とともに「売る」だけでなく「売れる」を強く意識する営業が増えているのだ。今ある商品を、今ある売り方で売ればいい。――そんな時代では、なくなりつつある。

理由は2つある。

・顧客の価値観

・顧客の購買プロセス

が多様化しているからだ。

大量生産大量販売の時代は終わった。お客様に合わせた商品づくりやプロモーションが求められるようになった。

■「売れる」のか「売る」のか

2021年の4月から毎週金曜日の朝、マーケティングコンサルタントの理央周さんと『「売る」VS「売れる」徹底討論!』という番組をクラブハウスで続けている。毎回、営業もしくはマーケティングの第一人者をゲストに迎え、1時間近くディスカッションする。

もちろん企業が売上をアップするのに「売る」も「売れる」も重要な要素だ。だから番組内では必ず「売るも売れるも大事ですよね」という話に落ち着く。

しかし半年以上この番組を続けてきて気付いたことがある。それはマーケティングのプロはもちろんのこと、営業の第一人者もまた「マーケティング」に関する造詣が深いことだ。「売る」技術を磨くだけでなく、売れる商品、売れる価格、売れるプロモーションとは何か。常に考えていないと、これからの時代の営業はやっていけない。営業の第一人者たちは、そう口をそろえる。

このように、近年の営業には「マーケティング志向」も備わってなければならないのだ。

■「売れる」とはどういうことか?

ベストセラー『なぜか売れるの公式』の著者でもある理央周さんは、「売れるの公式は3つのステップしかない」と訴える。その3つとは以下の通りだ。

1)何を

2)誰に

3)どのように

いわゆる「製品戦略」「ターゲット戦略」「プロモーション戦略」の3つである。

かつての営業は、最初の2つ「何を」「誰に」は決まっていて、あとは「売り方」だけを考えればよかった。とくに法人営業はそうだ。「売り方」が間違っていなければ、売れないのは商品やお客様のせいにできた。しかし今は違う。

お客様を探すのも営業であるし、そのお客様に何を売るかを考えるのも営業の役割になってきた。売るものは営業自身が創造し、しかも購買プロセスはお客様ごとに変わる。コミュニケーションのあり方も、その都度変えていかなければならない。

■事業開発のマーケティング志向

『スタートアップ営業ラジオ』という人気ラジオ番組のパーソナリティ(Voicy)、ジェイさんも「マーケティング志向」は不可欠だと言う。スタートアップの事業開発を担う場合はもちろん、一般の営業も同じだとのこと。

「以前は高付加価値だった商材でも、コモディティ化が進むと市場価値が低下していきます。それでは競争力で勝てない。だから、何を売るのかもお客様と一緒に考えていく」

「営業がお客様と話していくなかで、お客様もまだ気付いていないニーズ、問題点を発見する。そのプロセスが重要だと思います」

事業開発セールスを自称するジェイさんらしいコメントだ。

「マーケティング志向が欠けた営業は、デジタルシフトの流れの中で存在感を失うことでしょう」

「真のマーケティング志向を身につけるには、やはり経営者目線が必要です。ミニCEO的な目線も備える必要があると思っています」

とも付け加える。経営者ほど視座を高めないとマーケティング志向は手に入らない。新規事業の開発や、新規顧客開拓を担う営業なら、とくにその視点は大事であろう。

■マーケティング感覚が失われる要因

顧客購買プロセスの変化に伴い、営業の分業体制を敷く組織も増えている。しかし、その影響でマーケティング感覚、顧客視点が失われるケースもあるという。そう警鐘を鳴らすのがソフトブレーンサービスの社長、野部剛さんだ。

「分業が進んだことによって、マーケティング感覚、顧客視点が欠けている営業が増えていると思います」

「ホットリードがこないのは、マーケティング担当やインサイドセールスのせいにしたり。以前よりも営業自身にマーケティング感覚を理解させる必要があります」

と語る。

以前は、担当するエリアや業界によって、

・営業第一課

・営業第二課

・営業第三課

などと、営業組織は”縦”に分かれていた。いわゆる「縦割り組織」である。しかし今は、縦割り組織をデータで横串し、

・マーケティング

・インサイドセールス

・フィールドセールス

・カスタマーサクセス

このように、”横”に分業させるケースが増えている。だからフィールドセールスは野球でたとえると、まるで「中継ぎ投手」「リリーフピッチャー」のようにも見えてしまう。もちろん重要な役割に違いないが、

「先発ピッチャーが試合を作ってくれなかったのが問題だ」

と、言いたくなる気持ちもわかる。だからこそ野部さんは危機感を覚えるという。

「実際にお客様と商談をする営業が、マーケティング感覚や顧客視点を失うのは問題です」

そこでマーケティング志向を身につけるには、以下3つのトレーニングを推奨するという。

1)顧客リストを自分で作る

2)セールスレターやメルマガなど、コンテンツも自分で作る

3)テレアポも自分でやる

まさに、「何を」「誰に」「どのように」を営業自身が考え、実践し、結果を出す。日ごろからのその積み重ねで、相手に合わせた言葉の選択(ワーディング)、情報感度、細かい気配りが磨かれる。そしてマーケティング志向も身についていくそうだ。

引き合い対応がメインの「待ちのスタイル」の営業にとっては、耳の痛い話だろう。マーケティングは会社がやるもの。寄ってきた魚を釣るのが自分たちの仕事。そう受け止めている営業には酷な話だ。

自分で釣り場もエサも探し、釣る魚によって道具も変えなければならない。そうしないと売れるものも売れない時代になってきたのだ。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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