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ぽっちゃり系の新星 ポーランド出身の人気者、アダム・コウナキは世界ヘビー級戦線にどう絡むか

杉浦大介スポーツライター
Photo By Stephanie Trapp/TGB Promotions

8月3日 ブルックリン バークレイズセンター

ヘビー級12回戦

アダム・コウナキ(ポーランド/30歳/20勝(15KO)無敗)

12回判定(118-110, 117-111, 117-111)

クリス・アレオーラ(アメリカ/38歳/38勝(33KO)6敗1分)

ヘビー級らしからぬ手数の打ち合い

 

 少々オーバーウェイトの2人のヘビー級ファイターは、フルラウンドにわたってほぼ休まずパンチを交換し続けた。

 CompuBoxの集計によると、手数は両者ともに合計1000発以上。スローになりがちな最重量級の攻防が好みではないファンでも、この日のコウナキ、アレオーラの頑張りには敬意を表してしかるべきではないか。特に引退をかけて今戦を迎えたアレオーラの終盤の奮闘のおかげで、試合は引き締まった。

 激しい戦いを明白に制し、無敗のコウナキはスタミナ、タフネスを証明した感がある。266パウンドで臨んだコウナキの緩めのボディは見栄えはせず、色白なこともあって、失礼ながらリングサイドからは巨大な豆腐が戦っているようにも見えた。しかし、手数の多さとインファイトのうまさは出色。フルラウンドにわたって同じペースでパンチを出し続けるだけに、実に厄介な選手ではあるのだろう。

 ここで歴戦の雄を下し、ポーランド人史上初の世界ヘビー級王者を目指す30歳はまた一歩前進。コウナキはいわゆる“スーパースター”候補ではないが、見た目以上に強く、現代の名脇役の一人になりそうな予感を感じさせ始めている。

ニューヨークエリアでは人気上昇中

 「このような試合をあと2戦こなし、来年中に(WBC世界ヘビー級王者)デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)に挑戦させたい」

 試合後の会見で、コウナキのマネージャーを務めるキース・コノリー氏はそう述べていた。実際にその興行力を考慮すれば、コウナキのタイトル挑戦は遠からずうちに実現する可能性が高い。

 バークレイズセンターでの初メインだったにもかかわらず、アレオーラ戦は8790人の観衆を動員。ポーランド系選手はアイリッシュ、プエルトリカンとならんで米東海岸では集客力が高く、この日も試合中にサッカーのように応援ソングが鳴り響いて良い雰囲気になった。

 特にコウナキはその攻撃的なスタイルもあって、ポーリッシュの新たな希望の星となりつつある。バークレイズセンターでワイルダー戦を組めば、同会場でのボクシング興行史上最大の観衆を集めるかもしれない。

 そんな背景を考えれば、ワイルダー戦は早めに組んだ方が得策のような気もしてくる。6月1日のアンソニー・ジョシュア(イギリス)対ルイス(アメリカ)戦の衝撃を振り返るまでもなく、一発のパンチですべてが変わるのがヘビー級の面白さであり怖さ。両雄のうちのどちらかが1敗すれば、黄金カード(注・あくまで興行面で)の輝きはシルバーかブロンズくらいにまで色褪せてしまう。

敏腕マネージャーはどう動くか

 もともとコウナキは今秋のワイルダー対ルイス・オルティス(キューバ)戦後にワイルダーに挑戦という流れのはずが、ワイルダーとタイソン・フューリー(イギリス)のリマッチが来春に内定となったためにプラン再考を余儀なくされたという経緯もある。

 アレオーラ戦でもアル・ヘイモンより200万ドルのファイトマネーが保証されたが、世界タイトル戦なら報酬はおそらくその倍以上。そんな状況下で、陣営は大勝負前のコウナキにどんな前哨戦を用意するか。

 危険自体は少なく、それでいて商品価値をさらに上げられるような対戦相手を見つけられるか。それとも早い段階でどこかに割り込み、同じPBC傘下のワイルダー、あるいはルイスへのタイトル挑戦をまとめてしまうか。

 ポーランド出身の新たな人気者の今度に注目が集まる。コウナキ本人の意思とともに、他にもダニー・ジェイコブス、マーカス・ブラウン(すべてアメリカ)、セルゲイ・デレヴャンチェンコ(ウクライナ)といった多くのクライアントを抱え、東海岸の敏腕と評価されるようになったコノリーの手腕からも目が離せない。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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