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新リーグへは25チームが参加。振り分けは? ホームスタジアムは?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ワールドカップ直後のTL。満員のスタジアム再現なるか(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 2022年1月の発足を目指すラグビーの新リーグについて7月1日、同リーグの法人準備室室長を務める谷口真由美・日本ラグビーフットボール協会(日本協会)理事が会見。6月26日に締め切られた参入申請に25チームの応募があったことなどを伝えた。

 会見は約1時間、オンラインで実施し、25チームの内訳や今後の審査の流れ、想定される3部制(ディビジョン)のリーグ構成について説明。来年1~5月にある現行の国内トップリーグ(TL)が終わり次第、参入希望クラブの各ディビジョンへの振り分けがなされる見込みだ。

 新リーグの発足について議論が進みだしたのはラグビーワールドカップ日本大会(W杯)が開催される前の2019年夏。清宮克幸・日本協会副会長が2021年秋からのプロリーグ発足を目指すとし、W杯開催会場をホームグラウンドとした「オリジン12」なるチーム群を主体に加盟チームの法人化を求めた。

 しかし、既存のTLに加盟する企業クラブなどから慎重な議論が求められるなどし、新リーグの準備室は完全プロ化を前提としない参入要件を改めて策定。一方でホームチームによる試合興行、地域密着などを義務付け、競争性を保って財務の可視化を図るためか選手のサラリーキャップ制度を設定するとしている。

 以下、共同会見時の一問一答(編集箇所あり)。

「まず先週6月26日の金曜、新リーグ参入申込書の締め切り日となっていましたが、リーグの新たな改革発展について議論を重ねてきていた25のチームさん全てに参入申込書を出していただきました。

 参入申込書はどういうものかについてもお聞きになりたいと思いますが、目玉となるのはチームの皆さんにホストスタジアム、ホストエリアを持ってくださいというお話です。

 新型コロナウイルス(新型コロナ)の(感染が広まる)なかで社会的に様々な制約がある、こういう状況下で新しいことを始めることがどんなに困難かは我々もわかっていて、こんな時期にお願いをして…という状況だったのですが、各チーム様、多大なるご尽力をしていただき、(参入申込書が)整ったというところです。

 今回、緊急事態宣言が解除されてから1か月後という締め切りを設定させていただいた背景があります。

 そもそもホストエリアを持つには様々な自治体と協議し、協定を結ばなければいけない。そんななか(新型コロナ禍によりチーム側と自治体側が)直接お目にかかれていなかったり、最後の判子だけもらえていなかったりする状況があったとしても、『それはそれとして出してください。お話はできているという状況は伺っています』として、全25チームさんの書類が揃っている状況です。

 そもそも4月末と設定していた参入申込書の締め切りが新型コロナの影響によって約2か月、遅れました。これは審査にも影響が出ます。こちらも同じように、2か月の遅れが出ると認識しています。

 ディビジョンは3ディビジョン制にしますが、今年の年末までにはディビジョン1~3にそれぞれ何チームずつ入るかをお知らせできると思います。

 各ディビジョンにどのチームが入るかは、次のトップリーグのシーズン(2021年1~5月の予定)が終わり次第発表できるタイミングが来ると認識しています。

 今年1月末の段階では2021年秋に開幕するとお話ししてきましたが、(オリンピック東京大会延期の影響なども鑑みて)2022年1月開幕を目指しています。これも社会的事情、特に新型コロナの影響で色んな動きがあった時、何らかの変更が生じる可能性はあるかもしれません。ただし、2022年1月開幕に向け、鋭意動いています」

――「審査」はどう進むか。ディビジョンの振り分けはどう判断するか。

「今回、新リーグになって何が変わるか。事業性です。チームの皆さんが事業をする。(参入申込書の)書面には『ファンクラブをこう拡大する』ということも書かれているんですが、それはこの新型コロナ禍のなかで実現可能性があるのかどうか。また、スタジアムの確保についても本当に確保できるかを見させていただきたいと思います。

 皆様には釈迦に説法ですが、ファンの目線で考えた時、ミスマッチが起きないようには考えたい。拮抗した試合、毎回、毎回、観ていてどっちが勝つんだ、という試合を観たいし、そういう試合が組めるディビジョン(分け)にしたい。

(参入までの)間口は広く取ってはいます。一方で、興行性を見た時、ラグビーのワールドカップの熱が中断しているんですが、それをもう一回…と思えば、興行としても楽しい、ファンの人もスタジアムに行きたいとますます思ってもらえるようなチームさんを(上位ディビジョンに)選びたい。それをするには強化も大事ですが、事業がきちんとできていないとなかなか難しいところもあると思います。そこも含め、(ディビジョンの振り分けをおこなう)審査委員会の皆様に判断していだだきたいです」

――「審査委員会」の顔触れなどについて。

「これを言ってしまうと(審査の)客観性、公平性に問題が出てきます。チームさん側にも審査委員会が何人でどんな人たちかはお伝えしませんと話しています。審査終了後に、チームの皆様にはお伝えしようとは考えていますが。

 

 現在、色々と本当に皆さまの取材力が凄いので、私が意図しないところできっちりと情報が出ていくんです。それはすごく怖いので、審査に関わるお話に関しましては申し上げられないということでご理解いただければ幸いです」

――「審査」に2021年のTLの結果はどれくらい重視されるのか。

「今回、書面を出してもらった意義を考えた時、(TLの)結果が重視されるのならそもそも書面が要らなかったんじゃないかという話になりかねませんし、我々はそういう風にしたいわけではない。今後は(新リーグの参入要件が)Jリーグのライセンス制度みたいになるとも思いますが、リーグの意図、日本ラグビーの発展のために頑張ってくれる、かつ強いチームさんでディビジョン1を構成したいことが意図にあります。

 ライセンス制度(の策定)については、今後Jリーグさんに倣っていきたいと思います。書面で提出されたことを実現できたか、財務状況も見て行く予定です。コンペティティブなものをご提供できるよう、チームの皆様へも『ここの部分は何とかならないか』というようなことがあれば、リーグとしてもお伝えしなければならないと思います。

(TLの結果の)全てを加味するわけではないですが、加味する意図はあります。詳細は審査の具体的な中身に関わるため、客観性、公平性の担保のためこれ以上のご返事は差し控えたいですが、(成績が審査に多少は関わると)チームの皆さんにはすでにお伝えしました」

――新型コロナ禍にあって、リーグの公平性が担保できないなか2021年のTLがおこなわれた場合にも、それがディビジョン分けに反映されるのか。

「順位がつけられない状態、試合数が全く違う状況の場合は全くフェアではないので、(ディビジョンの振り分けに)考慮しませんとお話ししているところです」

――どのチームがどのディビジョンの「ライセンス」を得られたかを公表する予定は。

「公表はしません。チームさんにお伝えするかどうか(は未定)。審査委員会の進度、状況にもよる」

――参入申込書を出したチームがリーグ全体から振り落とされる可能性はあるか。必ずいずれかのディビジョンに加われるのか。

「リーグから外れていただくことは想定していません。将来的に100チーム以上になった時にはリーグの構成を考えなくてはいけないでしょうが、いまのところはその想定はしていません」

――今年冬の時点では、ディビジョン1へ加われるのは「10プラスマイナス2チーム」とされていたが。

「それで行けたらいいとは思っていますが、ミスマッチがあってはよろしくない。当初そのように想定し入っていただきたいと思っていましたが…。これ以上は審査に関わる話だと思うので、当時の想定と変わるかもしれません、と、お伝えしておきます」

――申し込んだ「25チーム」について。

「現在のTLの16チーム、下部のトップチャレンジの8チーム、地域リーグに降格された中国電力さんです。中国電力さんは改革の議論があった時に、その輪にいらっしゃいました」

――上記以外の新規参入チームについては。

「新規参入のチームさんも募集することにしています。

 新型コロナがなかったら、(現時点で)新規参入のチームさんのことも含めてお話しできればと考えていたのですが、まず、いまいらっしゃる25チームさんとちゃんと向き合わなくてはという状況に至った。

 また、新規参入のチームにはこれまでの議論に入っていなかったり、これまでの経緯がお分かりでなかったりするなか、参入申し込みのシートと審査を(既存のチームと)同じにしては、そちらの方が不公平だと私は思ったのです。新規参入のチームのなかには母体のあるチームさんもあれば、いまからチームを作ろうというチームさんもあると思うんです。そこで既存のチームさんと同じ条件で話すのは厳しい状況になる。

 新規参入のチームさんに関しましては、年内にご説明会をしようと思っています。詳しく、丁寧に必要な要件などをお伝えしたいと思っています。新規参入のチームさんには、開幕2年目以降のシーズンにご参加していただけるようにしたいと思っています。

(新規参入を希望する団体の)問い合わせの数も差し控えていただきたい。というのは、もしかすると、記念受験というか、とりあえず聞いてみる…という方もいらっしゃるのかなというの(感触)がありまして。こちらでも説明会をいつするとも言っておらず、どんな背景の方がお問い合わせされているのかも把握しきれていないところがあります。

 私としては、できればたくさんのチームさんに新規参入していただき、加盟金を少しでも払ってもらえれば嬉しいなと、本当に思っていて。…また、たくさんのチームがあることで、日本中のたくさんの子どもたちに色んな地域でラグビーをしてもらえるようにしたい。いま(競技の盛んな地域は)太平洋ベルト地帯みたいなところに固まっている。もっとたくさんのエリアで楽しんでもらって、中学校の壁、高校の壁――ラグビースクールに通う子どもの次のステージがない状態――がないように、近くでかっこいいトップの選手をすぐに見られるような状況を作りたい。1チームでも多くの方にご参加いただきたいと思っています」

――新リーグのレギュレーション、規約、規定について。

「ご参加の意思を表明していただいているチームさんとも小委員会を開き、ルールや制度について話し合っています。最終的には新リーグ法人が日本協会から出る(独立する)ことを想定して動いています。別法人できっちりと規約、規定を整備していくことになる。現段階では準備室で整備しています。どの段階で公表するか、具体的にはお伝えできる状況になっていません」

――各ディビジョンの試合数やシーズンの長さなどは、チームの数が決まってから決めるイメージか。

「仰る通りの形で決めていこうと思っています。我々としては、どういうチームさんがどんな感じで(申込書の中身について)出してこられるかを見てから判断したいというところがあって、いまはまだ何戦するかも考えていない、と、ご返答させていただきたいです」

――リーグの採算性と収益性について。

「新型コロナの状況で色んなところで経済的に厳しい状況になっている。

 チームの皆様にもどうやって事業されるかを(申込書に)書いていただいていまして。それを拝見しますと、それぞれ大きなものを打ち出しているわけではなく、『現状できることを、もう少し頑張ってみよう』としているというのが私の雑感です。

 これはリーグ本体も同じ。Jリーグさんの開幕時のような宴の後という感じでもなく、Bリーグさんがやられているように大きなスポンサーさんがついてもらえる経済状態かというと非常に難しいと思っております。

 どうすればこの時代に収益を上げられるか。色んなチームさんのお知恵をいただきながらやっていきたい。チームさんにも欠けることなく続けていただきたいと思っています。

 できれば次のシーズン(2021年のTLなどのことか)で、どう集客をされるか、どうファンサービスを運営するかといったところを見られたらいいなと思います。今回、色んな競技でリモートマッチが提案されたなか、チケット売り上げの実数を何で測るかという話もある、いまの時代に即した判断ができるよう、チームの皆様と情報共有しながらやっていきたいと思います。メディアの皆様もいいアイデアがあれば教えていただけますと幸いです」

――チケットの価格設定は。

「チケット価格はホストゲームをされるチームさんが決めます。我々もワールドカップを経験し、色んなシート、券種があることへの理解は深まっていると思います。チームさんもこれらを参考にされて設定していくのだと思っています」

――ホストスタジアムの確保も参入要件になっているが、現時点では全チームがホストスタジアムを確保できそうか。

「とりわけ都市圏のチームは、ホストスタジアムの確保が難しい状況になっています。これは当初からわかっていた話です。Jリーグさんとも色々と御相談させていただいて、自治体の皆様へもチームの皆様がかなりの働きかけをしていただいている。どのようにホストスタジアムを確保するか、Jリーグさんの例を参考にしながらやっていこうとは話しています。そうはいっても、日本のなかにはラグビーのできるスタジアムがそんなにあるわけではないという認識がある。これは、リーグとしての課題感でもあります」

――秩父宮の活用について。

「とりわけ関東近郊、東京近郊にスタジアムがないなか、秩父宮をどう考えるかは非常に大きな論点にはなる。ただ、秩父宮をどこかのチームさんのホームスタジアムにする場合は、もう『(秩父宮をホームスタジアムにできるチームを)くじ引きで決めるのか?』という話になると思うんです。ましてや秩父宮では小学校、中学校、高校、大学の試合もある。どこかのチームが本拠地にしてしまうのはラグビー界にとってよいことではない。トップチームの皆様には、『秩父宮を使わざるを得ない状況があるのも理解できるが、それを前提にするのはなしにしてください』と話しています」

――ホームタウンについて。Jリーグができた時、地域性の偏りをなくす動きがあったが。

「こういう新型コロナの状況がなければ、チームさんにも積極的に別の地域に…とも申し上げられたかもしれませんが、いまはチームの維持が大変な状況。日本中にどうチームが散らばるかについては、時間をかけて解決していけたらと考えています」

――海外リーグ、テストマッチシーズンとの日程の重なりはあるか。

「新リーグには日本代表と共存共栄という目的がある。代表の活動時期を考慮したシーズン設定は今後もありうると思います。現状では2022年1月開幕を目指すが、国際カレンダーがドーンと変わった時にどうするか、10年後にどうするか、というところはわからないところではあります。いま何を見ているかと言えば、日本代表の時期をきっちりと見てゆく、というところではあります」

――サラリーキャップ、外国人枠の設定について。

「チームの皆様と構成する小委員会で、数字を出した議論もしている。ただ今回、(参入するチームに)企業のなかに事業体を残し、正社員選手に在籍していただくことをお認めした観点から、サラリーキャップを作る時にも色んな調整が必要になってきます。なので、正社員選手を何人抱えている場合は(人件費が)どれくらいになるか、などを具体的に詰めている。詰めなきゃいけない場合がたくさんあり、検討しているというお答えになります。

 外国籍選手については、どうすれば一番すっきりするのかを考えなきゃいけない。非常にセンシティブな問題を含んでいますが、枠の話をする際は日本代表がどうすれば強くなるかに視点を置かなくてはいけません。そこだけはぶれずにチームの皆さんと小委員会で議論をしていただいて、お話しできる状況でお話しできればと思います」

――新リーグ2年目以降も1月開幕の予定か。

「いまのところ1月開幕を目指して動いています。あまり1月、9月、1月、9月となる(開幕時期が変わる)のはよくない。国際カレンダー、新型コロナの状況で1月に開幕できなくなる場合もありえますが、いまのところ開幕時期は揃えていけたらと想定しています」

――新型コロナ対策のプロジェクトチームは作っていないのか。

「毎週、チームの皆様と私たちと、TL部の皆様と、新型コロナ対策会議をやっております。練習再開の状況、どんな風にジムを使いだしたかなどの情報を共有しています。それぞれの知見が違うのですごく参考になって『じゃあ、その方法をウチも採り入れてみます』といった形になっています。練習再開のガイドラインについては、ワールドラグビーから降りてきたもの、日本協会が策定したものもある。それも共有しながら、チームの皆さんがどう困難を乗り越えようとしているかへも目線を合わせています」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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